※この作品はR-18です。

【GODEATER】 龍治 -A Ghost of Hero-   作:あとろふ

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第十九回

永音さん、応答お願いします。

応答はない。

こちら管制室、洲より永音さんへ、応答願います。聞こえますか。

言葉は落ちること無く、宇宙空間に放り出され、僕から遠ざかるように感じた。その無に焦燥し、本当に僕は言葉を発したのか確かめたくなる。痺れるような痒みを訴える歯の隙ーーー痺れる痒みこそが声によって揺れる音波の波形、その証拠さえ疑うような気分になる。それを僕の”迷い”と見て、諌めるように歯を食い縛った。

出撃したのは確かにカシラだけだったはず、永音さんはアナグラの部隊には所属していないし、単騎で出張れる実力はない、記録にも永音さんが出撃した形跡はないーーーいや僕がおかしいのか?本当は永音さんも龍治さんと一緒に居たっけ。ーーーあれ?龍治さんは負傷しているんだよな・・・?そうだ、それで正虎の兄貴に連絡した・・・したか?

極度の焦燥感に僕の意識が混濁し始める。流れる時間の感覚が失われて、何秒?何分?もしかして、数日経ったのかもしれない。溜息のような沈んだ声が僕を連れ戻した。

「なに? どうしたの、洲くん」

言葉はちゃんと落ちた、落ちた音に距離感が、意識が蘇る。僕は冷静だった。

「龍治さんが大型種との交戦中に負傷しました、これ以上の継戦は不可能と思われます。アラガミの反応が近く、救護班を向かわせることが出来ません。支援を要請したいのですが、アナグラで出撃できる人間は永音さんだけです、お願いできませんか。」

永音さんの驚き焦る声が僕の言葉に重なったのを慥かに聞きました。しかし、言葉を発し終えた僕に帰ってきた永音さんの返答には既に熱を感じなかった。何かを諦めたような、そんな声だった。

「私が行ってどうするの?私はアラガミにとどめを刺せない。私が一人で、誰かを護ることなんてーーー知ってるんでしょ。私が一人で出て行って、それがどうなったか。・・・また、同じことをしろって言うの?私にーーー」

永音さんはその時、彼女が龍治さんのもとに来る理由となった日のことを思い出して居たのでしょう。この要請は、塞がりかけた彼女の傷に楔を打つことと同義、それでも僕は、卑怯なこの僕は、彼女がそれを聞いて行かずにいられないことを何処かで知っていた気がします。

「30分後には援軍が到着します、永音さんが来るより前、龍治さんの相棒だった、頼れる人です。それまでの時間稼ぎだけで良いんです、アナグラからヘリを飛ばせば10分もかかりません。お願い出来ませんか。」

永音さんはやはり沈んだままで

「時間稼ぎだけでいいなら、洲くんが行けばいいでしょ。洲くんの腕輪・・・神機使いだったんでしょ?」

と言った。鉾先が僕に向けられ、その鉾が今度は僕の傷を抉じ開ける。そうだ、その通りだーーー僕が「行けない」理由、管制室が手詰まり?そんなのは自分を守る口実に過ぎなかった。僕の神機はまだ他の神機使いに適合せず、アナグラの保管室に置かれている。それでも僕には何も出来ないーーー僕も彼女もおんなじ所に縫い付けられている、つま先に釘を打たれて踵を上げられないんだ。何を今まで正義ぶっていたんだろう、自分を守るために。ーーー彼女に苦を強いるくらいなら、僕が行けば・・・。

そんな思いは、僕の中で口実を囁く、臆病で狡猾な悪魔にかき消された。

『オペレーターを一人削るよりも、彼女を行かせたほうが合理的だ。それに、龍治さんには彼女の支えが必要だ。』

僕はそれに屈した。僕の口を乗取った悪魔が得意に嘯く。

「龍治さんを助けられるのは貴女だけなんです、僕が行ってもあの人は助けられない。」

「それもどうせ嘘なんでしょ。あの人も、アンタも。ずっと私を騙してた癖に。私は誰にも要らないんでしょ?もうこんな私のことなんて放っておいてよ・・・。」

「放っておけませんよ、頭には貴女しか居ない、だからこそ貴女にだけは嘘を通し続けた、見放されたくなかったのは頭も一緒です。援軍が到着するまでの時間稼ぎでいい、あの人を助けてーーーいえ、あの人と居てやってくれませんか。」

もう、どこまでが口実でどこからが本心かは分からなかった。曖昧で濁りきって、淀んでしまったーーーそんな自分に呆れさえしてしまいました。

「何なんだよアンタらは・・・」

沈んだ声は少しずつ怒りを帯びてきたように聞こえ、そして遂には永音さんの怒鳴るような声がそんな僕を責め立てた。

「何なんだよもう鬱陶しいな! 分かったよ行きゃ良いんでしょ!! そんな事言ったら私が行かずに居られないって分かってるくせに!!」

すぐにひときわ荒れた「やってやるよ!!」という怒号とともに何かを打ち付ける音が聴こえて、足音が遠ざかっていった。どうしましたか、等と声をかけても返事がない。無線機を投げ付けたんでしょう。

永音さんの声が聞こえなくなった静寂から逃げるように無線のチャンネルを変え、ヘリの発進準備を要請しました。

ーーーまたやってしまった。僕は慌ただしい管制室で一人になって、龍治さんの付近の反応をぼんやりと眺めていた。

横から、アナグラのオペレーター、竹田ヒバリの声が聴こえる。何を考えてるんですか、危険すぎますーーー分かっている、でももう全てがどうだって良い、僕はそれを無視した。

後ろからは、見兼ねたのかそんなヒバリをなだめる司令官、雨宮ツバキの声が聴こえている。龍治の過去を知らないお前に、私を含めたこの場にいる誰にも、洲を咎める権利はないーーーそれは慰めか、あるいは僕と同じように神機使いを引退した人間としての同情か。僕は何処か自暴自棄になってそんなことを考えていた。

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