※この作品はR-18です。

【GODEATER】 龍治 -A Ghost of Hero-   作:あとろふ

43 / 65
第丗一回

永音さんの云う”時間”はすぐには来なかった。ラウンジで龍治さんと呑んだ日、永音さんの治療が終わった頃から一ヶ月、二ヶ月、慥かそれくらいでしたか。その半端な”間”が龍治さんと永音さんにとって、二人を取り巻く僕達青龍の人間にとっては仇にーーー二人の間の二つの嘘が、それによる傷痕が徒に深くなるだけのようにも思えた。一分でも一秒でも側に居たいと互いに願ってはいた筈なんでしょうけど。

あの人の云った通り、その頃の永音さんを見ていると蔑む訳でもないのに自然と”道化”という言葉が浮かぶようでした。彼女はその道化を隠せていると思っていたのでしょうか。或いはーーー解っていたのでしょうか。龍治さんにつとめて明るく接そうとしつつ不自然に距離を置こうと接触を避ける彼女の横顔にリハビリ直後の沈んだ面影はありませんでしたがーーーやはりそれはどこまでも道化だった。ーーー道化師はショウが終われば化粧を洗い落とす、当然のことです。その数ヶ月が過ぎた後ーーー龍治さんが発った後の彼女は再び、いえ、より一層に寡黙になった。より笑わなくなった。龍治さんとの間の息子さんが無事に生まれた時も、素直に喜んでいる風ではありませんでした。もっとも我々の前ではにこやかに振る舞っては居るんですけどね。違和感は感じませんか。

 

龍治さんの最後の出撃を管轄していたのはアナグラだった。僕の支援が必要ないという事です。龍治さんが敵を食い止めきれなかった時はすぐに別働隊を出撃させなければならないと。理由はそれだけでは無いのでしょうけれど。僕は龍治さんの最後の戦いを見ようとはしなかった。お嬢と兄貴はアナグラでそれを見届けたようですが、僕は青龍に残りました。彼女も。青龍で彼女の姿を見たわけではないんですけど、十中八九、行かなかったでしょうね。

僕や彼女が何故あの人を見送らなかったか、不思議ですか。あなたもあの人を知っていればそれが解っていたかも知れませんね。無論、僕と彼女の理由こそ違いますけど。

龍治さんの最後の任務は”成功”という結果に収まりました。神機使い一名の尊い犠牲ーーーアラガミ化ーーーによって。極東に向かって侵攻していたアラガミ群はその多くが壊滅、わずかに残ったアラガミの群れはアナグラに背を向けて引き返した、と。ノヴァに呼ばれ、星の意志で集ったアラガミが引き返した、と。当時の常識では到底考えられない事です。後にレーダーが検知した偏食場の乱れや龍治さんがアラガミ化したタイミングとの関係から、それーーー”アラガミ化した有瀬龍治”が既存のものとは一線を画した全く新たな種であることが判明しました。

ーーー『感応種』。

サカキ博士はそう名付けた。特異な感応波を発する器官を持ち、その感応波で偏食場を歪ませて周囲のアラガミの行動に干渉する全く新しいタイプのアラガミーーーその出現は既存の神機が通用しなくなる可能性を孕んでいました。我々唯一の武器である神機だってアラガミですからね。原初の個体であるアラガミ化した龍治さんの個体は全く同じ偏食因子を持つ永音さんによって討伐されたようなのですが、その性質をもったオラクル細胞ーーーすなわち龍治さんの遺物である神機は然るべき研究機関に預ける、と。フェンリルなんとか技術開発局・・・?なんだったかは忘れましたが、慥かそういう名前の機関だった筈です。本部直属の、ね。

青龍からフラフラと出て行ったかと思えば龍治さんの・・・言いたくは無いですが”首”と、神機や腕輪などの遺物を持ち帰ってきた永音さんが早々に神機を明け渡す、というよりも押収されるのを見ていると気の毒にも思えました。その時の彼女はそれらに異様な執着を見せていましたから。そもそも、遺体がそれしか残らなかったからとは言えど、”首”を持ち帰り、あまつさえそれを剥製としてーーー貴方も見たんでしたか。あんな風に記念碑のように飾ろうなんてのは、言っては悪いですが普通の人間のやることじゃない。危険な思考です。

優治さんに対しての振る舞いだってそうです。恐らく彼女は優治さんを息子としては見ていないでしょう。精々龍治さんの遺伝子が混じった存在と、それくらいにしか、あれでは優治さんがーーーすいません、少し言い過ぎましたか。

何の話をしていましたかーーーそうです、龍治さんの遺品と永音さんの事ですね。いずれにせよ彼女の度の過ぎた執着心は危険です。優治さんだっていずれ自我を持つ。放っておけば彼女は今以上に孤立して、依存先を失ってしまう。その事は彼女も解っているでしょう。ともすればまた一人で変なことを考えかねません。分支部長というポストの重責もありますし。

ここに貴方を呼び出して何時間経ったかは分かりませんが、長々と龍治さんの事を話してしまいましたね。ですがーーー

ーーー”貴方に伝えたかったのは彼女のことです。”

今の彼女は、優治さんや龍治さんの遺品にただ寄りかかって龍治さんの喪失から目を背けているだけに過ぎません。力になりたいのは山々ですが、今の今まで彼女に何度も嘘を吐いて、罪を犯し続けてきた僕にその資格はありません。無論、今になってこんなことを関係のない貴方に頼む資格だって無いのは承知しているんですけれどーーー。

 

「有瀬永音を助けてやってほしい。」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。