【GODEATER】 龍治 -A Ghost of Hero- 作:あとろふ
第一回
子ゆえに迷い、子ゆえに悟る。
坪内逍遥
個々人の戦果を確認しますーーー
わずか20秒の戦闘、それをモニタリングしていた洲が戦果の報告を始めた。
作戦名、第203号東壁防衛作戦、作戦内容第二作戦。
零さん、は・・・討伐個体なしですね。兄貴はオウガテイル種4体ヴァジュラ種1体、お嬢はコンゴウ種1体、若頭はオウガテイル種5体、ヴァジュラ種1体。そして作戦終了後にお嬢と若頭がオウガテイル種3体ずつ、ですね。
兄貴は正虎、お嬢は喜鴉、若頭が隊長といったところか、と零は思った。
青龍に到着し、神機の格納、メンテナンスを済ませた後、洲から報酬の分配についての話となった。
「今回の任務の報酬についてですが・・・」
「均等に分配しようか。」 隊長が鶴の一声をあげる。
「均等・・?でも俺は1体もーーー」 1体も戦果をあげられていないのに報酬だけ受け取るのは納得がいかない。しかし、その言葉を遮るように隊長が
「零クンはちゃんと零クンの働きをしたから。あれが君の今の全力でしょ。」と言った。 認めずには居られないが認めたくない事実である。
「それに、今回もまた神機を新調でもしようとしない限り使い切れない金額だろうし・・・・ほらね」
そう言って隊長が見せてきた書面に載った報酬金額をみて零は愕然とした。一人あたり優に1万fcを超える報酬である。
「驚いたでしょう、でもこれは順当な金額なの。極東支部は私達青龍の仕事にこれだけの価値があると判断してるってこと。その事は自覚して。ただの無能な高給取りになりたくないなら、早く一人前以上の働きができるようになる事ね。」そう言って隊長は自室に帰っていった。
人差し指でコツコツと書面を叩きながら放たれた棘のある言い回しに、隊長がそれを冗談で言っているわけではないことを零は強く感じた。
しばらく膝の上で拳を握りしめていた零であったが、隊長に続いて自室へ帰ろうとする喜鴉を見て、あの部屋のことを聞かねばと思いだし、
「喜鴉姉!」と慌てて声をかけた。
「ん?なんだまだ不服なことでもあんのか?」と小馬鹿にしたような笑顔を見せる喜鴉にこの後の予定を尋ねる。
「予定?いや、特に無いけど。なんだ、今から歓迎会でもするか?」と相変わらず茶化すような応対をする。
「まぁ・・・そんな所だけど、できれば二人で話したいことがある。」
喜鴉は、零のやけに改まった口ぶりに深刻な何かを感じ取った、いや、あるいは零が二人で何を話したがっているのかをも感じ取ったように、
「分かった。・・・おい正虎のおっさん、ちょっと零と込入った話があるからー・・・そうだな、ラウンジ、使わせてもらうぜ。」と正虎に配慮を促した。
ラウンジは地下にあるらしく、エレベータに乗ってロビーより僅かにひんやりする地下へ降りた。 エレベーターの駆動音だけが響くやけに重苦しい空気の中、喜鴉は短く勢いのある溜息をついた。やはり零が何を話したいのかを察しているように見える。
なおかつ、それは並々ならぬ内容となるらしいことも感じ取れる。
ラウンジは、極東支部の明るい雰囲気のものとは違い、零がかつて同志と集っていた廃墟に似た、薄暗く退廃的な雰囲気で、さながら無法者が集まる酒場といった雰囲気であった。そのなかの一つのテーブルに腰を掛けながら、喜鴉は
「あの部屋のことだろう。」とぶらつかせる足に目をやりながら、溜め息がちに言った。
「ああ、あの男・・・喜鴉姉の親父だよな?」 と単刀直入に聞く。
喜鴉は返事の代わりに腰を掛けたばかりのテーブルから飛び降り、零に背を向けて壁際のカウンターに肘を突いた。
そしてにわかに上を向きながら、ゆっくりと話し始めた。
あそこに親父が居んのはなーーーーー