【GODEATER】 龍治 -A Ghost of Hero- 作:あとろふ
あそこに親父が居んのはな、親父が極東の人間を護るために独りで戦って・・・独りで死んでいった、英雄だからだ。
英雄なんて美談でもなんでもない、クソッタレな話さ、どこから話せば良いんだろうなーーー
ーーー親父は母さんが死んでから変わっちまった。永音に出会うまではずっと・・・枯れちまったように。親父はそん頃はこの辺では最強って言われてた神機使いだったのにな。
母さんが死んですぐ、親父は酒に溺れちまった。毎日、ほら、そこのカウンターで呑んだくれて・・・・毎日私を殴って蹴って。私の顔の傷は、親父に酒瓶で殴られた時の奴だ、まだ13歳やそこいらだったがよく覚えてるさ。
私だけじゃない、アナグラの前の支部長、ヨハネスもやったらしい。勿論懲罰房行き。私は養護施設行きだ。アンタと知り合ったのはそん時だったな。
懲罰房にいる親父に釈放の条件だってヨハネスの野郎から言い渡されたのは、今の青龍の管轄地区、それを一人で防衛する小隊・・・小隊つっても親父だけだが、それに配属するって命令だった。島流しさ。流れ着いた島で死ぬまで働けって事。相方だった正虎のオッサンもカナダに飛ばされちまって、本当に独りぼっち。
普通だったら神機使いにこんだけの地区を管轄させるなんてのはどうやったって無理な話なんだが、親父はそん頃の神機使いにしちゃあ破格の能力を持ってたからな。ヨハネスの野郎にその能力を利用されたってわけだ。
懲罰房から出てきた親父は、看守も居るって所で私に泣いて謝ったな。私だって親父を責める気はなかったし、それまでどおりここで二人で住むことになった。そこに洲・・・親父の昔の舎弟だったらしい、アイツが専属オペレーターとしてやってきて三人。永音が来るまでの10年・・・まあそんなもんか、ずっと三人で暮らしてた。親父は毎日遠征か防衛、洲はそれのアシスト。一人だけ何もすることのなかった私は、親父の力になりたくて神機使いになったけど、支部長は私を極東の部隊に配属した。親父も俺とは任務に行かせないって。やっぱり支部長は親父を煙たがってたんだろうな。それに、未熟だった私が親父についてった所で足引っ張んのは目に見えてたし、親父が私を危険に晒したくなかったのも分かる。
そんな生活が当たり前になって、親父はずっと枯れたまま、もう笑うことも怒ることもないんだろうな、そうやって戦えなくなるまでここで、って思ってた。でも、永音がここに来た時、確か今のクレイドル隊長が配属される少し前だ。その時私は10年ぶりに笑ってる親父を見たんだ。
ちょっとした瞬間だったけど、私には分かった。そのころから私は多分、ずっと、永音にずっと嫉妬してるんだろうな。なんで永音はって。娘の私にはそんな顔見せてくれないのに、見せてくれなかったのにって。
永音はチンピラの喧嘩に巻き込まれてたところを親父に助けてもらって、それで親父に憧れて神機使いになったらしい。でも、アラガミの襲撃中にアナグラの命令を無視して家族を失って、そんでここに島流しされたんだとよ。
10年間。10年間だ。その間に沙汰を起こした神機使いなんてのはいくらでもいる。そんでも誰も来なかったここに配属されたってことは、永音がここを・・・それだけじゃない、親父も永音の配属を希望したんだろう。誰も、私も、任務に連れて行ってくれなかった親父がな。
親父と接する永音の表情は、俗に言う恋する乙女の顔ってヤツだった。私にはそれがとても憎たらしく、とても下品に見えたよ。私よりも年下で、私よりも親父を知らないアイツが親父に可愛がられてんのが許せなかった。
その頃アナグラはリンドウさんが行方不明になって、アナグラのエースが神薙に移ったり、エイジス計画が頓挫したり、リンドウ救出作戦が敢行されたり・・・忙しくて私はほとんどここに帰ってこれなかった。
リンドウさんが帰ってきて、サカキが支部長になって、ひっくり返したように忙しかったアナグラがやっと落ち着き始めた頃のある日、サカキから親父と正虎のオッサンの異動令を解除するって話が出た。主権者がヨハネスからサカキに移ったからそれは自然な話だ。その話を聞いた時すでに正虎のオッサンはカナダから移動してる最中だったらしい。今日の晩には到着するだろうって。親父も説明を受けにアナグラに来てるって話だったから私は親父に会いに行った。
そしたら、何があったのか知らないが親父が永音と大喧嘩してたんだ。