※この作品はR-18です。

緋弾のアリア K・O・H   作:上平 英

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第2話

 東京の武偵高校に入学して早3日。

 

 この3日間、俺は海外を飛び回ってるときでもあまりなかった忙しさで過ごした。

 

 まずあったのがライカちゃんからの日本の常識についての授業。

 

 なんでもメイドさんは熱いけど一部だけで、指導室に女教師にひとり呼び出されてー、というようなHなイベントも滅多に起きないらしい。聖地も、聖地は聖地でもオタクの聖地らしい。

 

 あはははは……。これには俺もカルチャーショックを受けたね。

 

 そして、その日の放課後も。

 

 いつの間にアドレスを知ったのかわからないけど、佐々木さんにメールである呼び出されて向うと、そこはなんと佐々木さんの実家。

 

 そのままお城みたいな家に笑顔で招かれて、豪華な食事を食べさせてもらい、噴水がある中庭へ。

 

 今日あったばかりで特に恋愛フラグを立てた覚えのない俺が警戒してると、佐々木さんが抱きついてきて、ライカちゃんより少し大きな胸の感触に不覚ながら酔いしれていると……。

 

『あかりちゃんに近づく男は、力尽くで排除させていただきます』

 

 という言葉と共に、0距離で居合い抜き。刀によって一刀される。

 

 ……正確には一刀されかけた。

 

 ギリギリのところで体が反応して、刀を止めた。指で刀身を挟んで。まっ、止めるのが少し遅れて指の間を切ったけど。

 

 それから本格バトルに発展したのはものすごく戸惑ったなぁ。

 

 物干し竿すごい。うん。本当に長い。

 

 それを軽々と振り回してる佐々木さんもすごいし。あ、ちなみに物干し竿って名前の刀です。物干し竿並みに長い刀だから物干し竿っていうらしい。

 

 まあそれはそうと、物干し竿で鞘なしの居合いとかまで放ってきて凶悪だった。佐々木さんの魂の叫びも怖かったし。

 

『アリアアリアアリアアリア……! どうしてアリアがそんなにいいんですかぁっ!?』

 

『私はこんなに大好きなのにっ!』

 

『どうしてどうしてどうしてぇぇええええっ!』

 

 とか。

 

『俺たちはじめて会ったばかりだよなぁ!? そこまで好かれる覚えはないんだけどぉっ!? アリア先輩に関しては会って話したこともないぞぉっ!』

 

 ――っていう、俺の言葉も聞えてなかったみたいだし。

 

 俺もその時は変な方向に勘違いしてて、佐々木さんを抑えつけるというか、取り押さえちゃって……。

 

 ……号泣されて、体勢的にやりやすかったからとりあえず抱きしめたら、ものすごい力で絞められ……腹部を殴打され、膝やスネに蹴りを入れられたりして……最後は抱きつきかえさられてからの号泣……。

 

 騒ぎを聞きつけたメイドさんたちもやってきて……。

 

 怪我すら負わせてないのに責任がどうとかの話に発展して……。佐々木さんは相変わらず涙や鼻水を俺の制服にこすり付けて泣いてて……。

 

 大変だった……。

 

 しかもそのあと、落ち着いた佐々木さんに事情を話してもらって誤解に気づいたんだけど、ご両親が帰られてこられて……。

 

 大事な一人娘だが、相手(彼氏だと思われる)は2つ名持ちでSランクの武偵か。うん、合格だな。

 

 と、勝手に盛り上がられて……。

 

 いや、まあ、状況的に夜+娘の部屋で娘と2人っきり=彼氏か恋人という図式で判定されたんだろうけどさ。佐々木さんも初めて家に客として呼んだのが俺だったらしいし。

 

 メイドさんたちも女の子のヌイグルミなど、様々な間宮さんグッズが部屋を覆っているところに男の俺を呼んで、中庭で俺に抱きしめられて泣いていた佐々木さんを見て、これはッ! と……。

 

 しかも、俺×佐々木さんの外堀が埋まっていくなか、佐々木さんはというと、これを理由にお見合い回避してその間にあかりちゃんを――! と俺の腕に抱きついて笑顔を浮べて「そうなんですよー」と棒読み。

 

 いきなり何を言って!? 誤解だったんだろ!?

 

 ――と、驚く俺の腕を谷間に挟むフリをして、まばたき信号。

 

『さ・わ・い・だ・ら・こ・ろ・し・ま・す』

 

 そんな怖い言葉だったけど、もちろん俺も黙っているだけじゃなく、反論した。

 

『き・み・に・は・ぼ・く・は・こ・ろ・せ・な・い』

 

 仮にもSランク武偵だし、さっきも完封だったからの言葉だったけど……。

 

『しゃ・か・い・て・き・に・な・ら・わ・た・し・で・も・こ・ろ・せ・ま・す』

 

 と……。ニッコリ笑顔、黒い笑顔で見つめられて……。

 

 うん……。それ以上何も言えなかった。

 

 ご両親とメイドさんたちがありがた迷惑にも気を利かせて2人っきりにされても、何も言えなかった。

 

 そして、まさかパンツ……。いや、ショーツ(紫)を頭に被せられて、それとセットだろうブラジャーを渡されて、2ショット写真を撮られるとは……。

 

 しかも2ショット写真は2ショット写真でも、佐々木さんは首まで布団で隠してベッドに寝転がってて、俺はベッドの脇に座ってるところなんだけど、佐々木さんは顔を背けてる。

 

 それに、制服を着崩してるせいか佐々木さんは何も着てないようにも見えて、枕元には封の開いた小さな四角形の袋が4つほど。俺の格好も佐々木さんのショーツを頭にかぶって、手にはブラジャーを持ってて……。

 

 はい、事後画像ですね。見られたらこれは言い逃れできないです。

 

 それにしてもなんでゴム持ってるんだよ、佐々木ぃっ!?

 

 自分のショーツ被せて、ブラジャーまで手渡すか、普通! はじめて挨拶したときみたいな自然なニッコリ笑顔を浮べて、両手でするりとショーツを被せてくるから逃げられなかったじゃないかっ。

 

 ていうか、いくらなんでも欲望に忠実すぎるだろ!? おまえ! 今日の朝に出会ってから刀でいきなり切り付けられようとも、根は上品なお嬢さまだと思ってたんだぞ、今日の夜までは!

 

『これであかりちゃんと私の仲を隔てる壁が一時的に消えましたね』

 

 って、考えが一方的であざと過ぎるし、何よりも俺のことは!? ご両親やメイドさんに恋人だと思われてるんだけど!?

 

 ショーツとブラジャーをあげます? いや、俺そんな特殊な性癖ないから!

 

 ゴミを見るような目で、やっぱり脱ぎたてがいいんですかとか聞くなよ!

 

 いや、脱がないでいいから! 本当に! 脱ぐところをじっくり見てみたい気もするけど、ちょっと欲しいかなって思うけど、我慢するから、自重するからスカートのなかに手を入れないでっ! いい加減落ち着け佐々木ぃっ!

 

 へ? 遅いから泊まっていけって? 娘さんの部屋じゃないよね?

 

 ああうん、客間ね。よかった。

 

 佐々木さん? へ? ここでは志乃さんと呼べと? わかったよ。

 

 あと小声で、本当は呼ばれたくありませんけど、って言ってるの聞えてるよー。メイドさんたちには聞えてないみたいだけど、俺には聞えてるからなー。……心のなかでおまえのこと『佐々木』って呼んでやる。

 

 じゃあ、俺客間に行くから……。女の子の部屋にいるのはさすがにマズいし。

 

 うん。じゃあね。

 

 …………。

 

 ……え? 何? 俺寝てたんだけど……。

 

 ――真っ赤な顔で、もじもじと恥らっているような佐々木。

 

 ――格好は制服からパジャマ。女性用のシャンプーの香りが髪からした。

 

 ――私の部屋に着てください。

 

 ――そう小さくつぶやいた彼女。

 

 ――いつもと……今までと少し変わった雰囲気に佐々木についていく。

 

 ――部屋へとつき、ベッドの上へと呼ばれる。

 

 ――そして彼女は手を後ろにまわして……。

 

 ――ノートパソコンを見せてきた。

 

 …………。

 

 ――あなたにあかりちゃんがどんなに素晴らしいか教えてあげます!

 

 カンベンしてください……。

 

 そして、ほんの少しだけでも期待してしまった俺を殴りたい。

 

 ――あの写真……、プリントしてみたんですよ。

 

 なんなりと、お申し付けください、志乃さま……。

 

 ――じゃあ、まずは私たちの出会いからですね!

 

 できれば手短に……いえすみません。なんでもありません。

 

 ――それでですね! この写真(盗撮)のあかりちゃんはこの角度からが可愛くて素敵でして、最高なんですよー!

 

 うんうん、かわいいねぇ。カメラの存在に全く気づいてないみたいで。

 

 場所は女の子の部屋。その部屋の美少女とベッドで仲良く並んでパソコン画面を見るという一見するとラブラブ? リア充空間だっけ? そんな甘い感じだけど、俺の気分は修行で篭ったギアナ高地の密林地帯にいるみたいだった。

 

 佐々木より先に寝たら殺される(社会的に)。

 

 佐々木の話を聞き逃してしまったら殺される(社会的に)。

 

 途中彼女の身の上話(ボッチだったんです)を聞かされたりしたけど、それに言葉(今まで俺もボッチだったんだよねー)を挟んだらなぜか睨まれる。

 

 途中で佐々木が寝堕ちというダウンしそういなったから、部屋から退散しようとしたら、なぜか寝ぼけた佐々木に、あなたも私を無視するんですね、と泣かれる。

 

 泣いてる佐々木の頭を撫でて慰めてたら、寝ボケから覚醒したのか、変態、スケベと怒られる。

 

 佐々木って大人しそうに見えて感情表現豊かだよねぇ……。情緒不安定ともいうけど……。

 

 結局朝まで話を聞いたあと、佐々木がとうとう寝ちゃって、俺は寮まで佐々木の家の車で送られて帰宅。朝食は遠慮させていただきました。すみません。まだ同衾には早いって? 同衾? ああ、Hのことね。キスする関係でもありませんから、ご安心ください。……とは実際には言えないので、ご安心くださいとだけ言って帰えらせていただきました。

 

 その後、俺は寮へと帰ってベッドのなかに。

 

 すみません、金次先輩。連絡もしないで。聞かないでくれてありがとうございます。はい、今度からは連絡します。すみませんでした。

 

 あー、それにしても今日が土曜日でよかったぁ。

 

 佐々木も今頃寝てるだろうねー。

 

 俺も今からベッドにダイブするぞー。

 

 

 

◆

 

 

 

 週を開けて3日ほど。東京武偵高校への進学初日。

 

 今日から高校生かー、とちょっぴり感傷に浸りながらも防弾制服に袖を通して、朝食は何がいいかなー? と悩んでいるとインターホンが鳴り響いた。

 

 時刻はまだ7時00分にもなっていない早朝の訪問に驚きながらもドアを開けて見ると……。

 

 巫女さんがいた。

 

 いや、俺にも何がなんだか……。ありのままの事実なんだ。

 

 インターホンが押されたからドアを開けたら、巫女さんがいたんだ。

 

 日本のカルチャー。レオン粋な日本人。現代社会ではレアな(佐々木さんも含める)つやつやした黒髪のロングストレートヘア。頭の上の白いリボンもかわいらしい、巫女服。なぜか刀が腰に差してあって……、とびっきりの美少女。

 

「え? これ……。えーと、この場合日本ではなんて言うんだっけ? 『これ、なんてエロゲ?』だっけ?」

 

「え? あ、あのぅ……?」

 

 おっと、巫女さんが戸惑っていらっしゃる。

 

「あ、えーと……。ここ、男子寮、ですよね?」

 

 神社じゃないよね? 近くに紅い鳥居とかもなかったよな?

 

「はい。そうだと思いますよ? あっ、私、星伽(ほしとぎ) 白雪(しらゆき)っていいます。その……、あなたは?」

 

 丁寧なあいさつ。だがしかし、ここは女人禁制の男子寮。むしろあなたにお訊ねしたい。

 

 彼女は……男じゃないよな? 成長したライカちゃんよりも深い谷間から少しだけ黒いブラジャー見えてるし、女性だよな? それにしても、巫女さんが黒の下着かー。白い下着よりもエロく感じます。

 

 ――って、ゆっくり胸を覗いてる場合じゃない! それより自己紹介を返さないと!

 

「今日から新しく武偵高校に入学する事になりました、麻倉 レオンっていいます。少し前からこの部屋に住むことになってて……」

 

「そうなんですか?」

 

「はい。遠山先輩とは同居人という立場になります」

 

「キンちゃんの同居人……」

 

 キンちゃん? ……ん? まさかこの巫女さん……。あー、性格良しのイケメン先輩だしありえそうだなぁ、うん。

 

「もしかして遠山先輩の彼女さんですか?」

 

「なっ!?」

 

 あれ? 違った? なんかバックに雷鳴が光ったように見えたんだけど……。

 

「そそそそそんなぁっ! キンちゃんのお、お嫁さんなんて……!」

 

 頬っぺたを真っ赤に染めて悶えてる星伽さん。その姿はかわいらしくもあるけど、危ない人にも見えた。先日知り合った佐々木さんが間宮さんのことを話すときにすごく似ている。

 

 まあ、堂々とインターホンを鳴らしたってことは、悪質なストーカーという線はないだろう。一方的なストーカーなら逃げるか、隠れるかするだろうし。この人の場合はドアを開けられるのがわかってたみたいだし。

 

 とりあえず、金次先輩にあとは任せよ。

 

「あの星伽……先輩?」

 

 だよね? 同じ学年の名簿には乗ってなかったし、遠山先輩と知り合いみたいだし。

 

「あっ、ごめんなさい。私、キンちゃんのこととなると周りが見えなくなっちゃって……」

 

「えっと、ですね……。俺、そろそろ出るので、よければなかに入りませんか?」

 

 日本語おかしくないかな? 大丈夫だよな?

 

「えっ、いいんですか!?」

 

 うん。大丈夫というか、聞いてるけど、聞いてないみたい。部屋のなかに入っていいというところしか聞えてないみたいだ。

 

「はい。登校の準備も済んでますし、今日は早めに学校に行くので。代わりと言ってはなんですが、金次さんのことを頼みます。まだ寝てるみたいなので」

 

「はい! 頼まれます!」

 

 元気よく敬礼で返事を返した星伽先輩を部屋のなかへと招く。うん、じゃあ、俺は出ようかな。鞄を持って、防弾制服の上着も着こんで、ネクタイ締めて。一応拳銃も装備。

 

「じゃあ、俺は行きますね」

 

「はい、いってらっしゃい」

 

「い、いってきます」

 

 ……美人な巫女さんに笑顔で見送られるのはなかなか……。

 

 あー、星伽先輩の持ってたあの包みって朝食だよなぁ。それか昼食のお弁当だろうし。あー、いいなぁ、遠山先輩。

 

 俺は、コンビニで済ませるかなぁ。

 

 むむっ、スライムマン!?

 

 200円……。

 

 スライムのクセに他の商品たちより一番値段が高いな。ゲームだったら経験値もお金も最低で、一匹倒しても1ゴールドぐらいしか落とさないエンカウント率高しの邪魔キャラなのに。

 

 だが、なかなか……。

 

 スライムが造形が再現されてて、惚けた顔がかわいらしい。青色のところ何味なんだ? ラムネ味だとぉ?

 

 …………。

 

「ありがとうございましたー」

 

 買ってしまった。ついでにメタルスライム味の缶ジュース(230円)も。

 

 

 

◆

 

 

 

 いつもより早いバスに乗り込み、いつもより空いてる車内で朝食を食べる。

 

 スライムマン、普通に美味しかったです、菓子パンみたいで。メタルスライム味のジュースは普通のジンジャーエールでした。もう買わない。

 

 移り変わる景色を眺めながら、ケータイ画面に映し出されてるメールに目を通していく。昨日は昼から外でクエスト(依頼)を受けてて、深夜近くまで忙しかったから、読むのは昨日の日付からだ。

 

 From:間宮あかり

 Sub :ヤッター!

 

『 アリア先輩と戦姉妹契約結べたよー! 放課後にアリア先輩と戦姉妹契約かけて勝負して、何とかエンブレムを取ったの! 皆にはまだ言ってないけど。このあと、アリア先輩の家でお泊りなんだ♪ 』

 

 From:佐々木志乃

 Sub :どういうことですか!?

 

『 あかりちゃんが喜んでるのは見てて幸せですけど、戦姉妹契約を結んでしまうなんて……! あなたの力で何とか戦姉妹契約を無効にできませんか? 同じSランクですよね? してください。いえ、やりなさい。あかりちゃんがアリアの毒牙にかかる前に。白紙にもどしてください。写真ばら撒きますよ? いいんですか? いいんですね? 本当にやっちゃいますよ? それともあなたは下着をあげないと動いてくれませんか? いいですよ、下着ぐらい。メイドたちの下着もあげますよ。だから、今すぐあかりちゃんからアリアを引き離してください! 』

 

 …………。

 

 眉間を指で揉み解す。

 

 えーと……とりあえず昨日の放課後に、間宮さんがアリア先輩と戦姉妹契約するためにエンブレムルールを使って戦ったってことだよな? あの時間制限内に星マークを取るっていう。

 

 そしてその結果、間宮さんが勝って、正式にアリア先輩の戦姉妹になって……。

 

 佐々木はそれについて激怒してる。

 

 そして、俺にどうにか間宮さんとアリア先輩の戦姉妹契約を解除させようと頼んできた(脅迫ともいう)。

 

  とりあえず。念願かなってアリア先輩との戦姉妹契約おめでとう、間宮さん。

 

  佐々木は……ゴメン。

 

  俺にはどうすることもできない。ていうか、したら間宮さんが泣く……。

 

 メールを打つ。

 

 間宮さんにはおめでとうメール。

 

 佐々木には弁解メール。

 

 直後に佐々木から着信。電話?

 

 丁度武偵高校前でバスが止まったので、降りて電話を取る。

 

『下着では不満ですか?』

 

「はい?」

 

 第一声でいきなり何を言ってるんだ、佐々木ぃ……。

 

『……少しぐらい胸を触っても許します』

 

「おい」

 

『下も、触らせろと? ……やっぱりあなたは獣だったんですね』

 

「なんでさ!?」

 

『ちッ。……仕方ありません。いいでしょう。一回だけ許します。本当に、一回だけです許します。その代わり、絶対にあかりちゃんからアリアを引き離しなさい』

 

「いや、無理だから。まずは落ち着こうぜ、志乃さん」

 

 魅力的な取引だけど、それやったら俺終わっちゃうから。結婚ルートか鬼畜亭主ルートか、最悪逮捕ルートに入って、俺の人生終わっちゃうから。

 

『はぁ……。あなたでも無理なんですか? 仮にもSランクなんでしょう』

 

「……仮には余計。そもそも戦姉妹契約を破棄させる上でランクなんて役に立たないよ。戦姉妹契約が一度結ばれたら本人同士にしか解消できないんだから。――あ」

 

 そういえばもうひとつ解消させる方法があったな。

 

『何か方法があるんですね?』

 

「…………」

 

 いやー、でも……。佐々木の欲望でせっかく契約結べたのに解消されたら間宮さんが……。

 

『教えてくれませんか』

 

「う……」

 

 強制だよな? でも、間宮さんが……、

 

『……写真』

 

「戦姉妹契約の規定では、戦姉妹契約を結んでから72時間以内なら、他者によって強制的に解消することができるんだ」

 

『他者によって……?』

 

「ああ。元々人気のある先輩と戦姉妹契約を結ぶチャンスを、あと一歩のところで出遅れてしまった人に与えるためのものなんだけど。――72時間、つまり契約を結んでから3日以内に、先に戦姉妹契約を結んでいる人を他の人が倒せば、先に戦姉妹契約していた人の契約が解消されて、倒した人が優先的に先輩と新しく戦姉妹契約を結ぶための試験を受けることができる。……っていう規則があるんだ」

 

 ……いや、しょうがないだろ。俺だって命が惜しいだ。この場合は話すしかない。

 

『つまり私があかりさんを倒してしまえば……』

 

 案の定、佐々木が不穏なことをつぶやいてる……。

 

「あのね、志乃さん。一応この制度って、チャンスを与えられなかった生徒に、最後のチャンスを与えて後腐れをなくすための措置なんだよ? ――だから、すでに戦姉妹契約を申し込んで失敗してる生徒には使えないルールになってて……」

 

『――私が動くしかないということですね』

 

 あの……話聞いてた?

 

「おーい、志乃さん――って、もう切れてる……」

 

 こ、このままだったら間宮さんが……!

 

 間宮さんにメールを!

 

 む? 着信? メールか?

 

 佐々木からだ。

 

 えーと、画像が添付されてる。

 

「――ブッ!?」

 

 ちょっと!? 佐々木っ!?

 

 思わずケータイ画面に映し出された写真を食い入るように見てしまう。

 

 佐々木さんから送られてきた写真は、まるでR指定の雑誌に映っている写真だった。

 

 体操服&ブルマで、片手目隠し。

 

 体育座り、正面から。片手目隠し。

 

 脱ぎたてらしきブルマ。

 

 ぎりぎり穿いてないように見える全体写真。両手目隠し。

 

 何送ってきてくれてるんだ、あいつ!? つーか、いつ撮った!?

 

 急いで電話をかける。

 

 数回コールがなった後、佐々木が出た。

 

「おい佐々木! 何て画像を送って着てくれるんだよ!?」

 

『なんです? もっと過激な写真を寄越せとおっしゃっているんですか?』

 

「違う! なんで体操服なんてマニアックな……」

 

『男性はそういうのがお好きなのでしょう? ……まさか、あなたは裸のほうがいいと? とことん下種ですね』

 

 脳内で佐々木さんにレイプ目で見下ろされる映像が……。

 

「それも違うっ! そういうことじゃなくて、なんで写真を送ってきたかってことだ!」

 

『報酬です』

 

 簡潔に言われた。

 

「……は? 報酬?」

 

『情報に対する報酬ですよ。そこに意味なんてそれ以上でもそれ以下でも存在していません。……私の写真ではお気に召しませんでしたか?』

 

「正直、眼福だった!」

 

『……そうですか』

 

「特に太ももとかにの腕とか、大きな胸とか最高だった!」 

 

 思わず速攻でブロックフォルダに入れさせていただきました!

 

『…………。では、もう用はありませんね。それと、くれぐれも他人に見せないように。見せた場合は私が被害者、あなたが加害者で、牢屋に入るのはあなただけですから。……あと、私の家以外では気安く『志乃』と呼ばないでください』

 

 ――ブツッ、と電話を切られる。

 

 言われなくてもこんなお宝画像誰にも見せない……、って! 俺、いったい何のために電話したんだよっ!

 

 とにかく佐々木を止めないと!

 

 もう一度電話をかけようとしたところで、メールが届く。差出人は間宮さんだった。

 

 From:間宮あかり

 Sub :今起きたよ!

 

『 メール返してくれてありがとう! おかげで遅刻しないですみそうだよ。

 今からアリア先輩の寮から学校に向うね。

 昨日のことは今日教室でお話しするから! 』

 

 あー……、朝からご機嫌そうだねー。絵文字いっぱいだよぉ。

 

 佐々木についても含めてメールを返そうかと思うけど、やめる。

 

 おそらく信じてくれないだろうし、この件に関しては昨日今日会ったばかりの俺が関わっていい物じゃない。

 

 間宮さんと佐々木の問題だ。

 

 俺が関わっちゃいけないんだ。ん? もう一件メールが着た。

 

 From:間宮あかり

 Sub :

 

『 でもちょっとだけ先に教えてあげるね♪

 昨日、実はアリア先輩と2人でお風呂に入ったんだー♪

 アリア先輩とお風呂だよー(絵文字でハート満載) 』

 

 ……ぐっ、関わっちゃいけないんだ!

 

 間宮さん、とにかく頑張って! 試練はすぐそこまで迫ってるぞ!

 

 でも直接は言えないので、とりあえずメールで『よかったね』と返しておく。

 

 お願いだからお風呂の件だけは佐々木に話さないでください……。

 

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