※この作品はR-18です。

緋弾のアリア K・O・H   作:上平 英

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第4話

 佐々木家……いや佐々木邸から男子寮へ戻った俺を迎えてくれたのは、アリア先輩だった。

 

 いや、俺にも何がなんだか……。

 

 朝の巫女さん訪問に続いて、まさかのただいま幼児体型さんなんてイベントが発生するなんて……。

 

 いつも通り男子寮があるマンションに帰ってきて、鍵でドアを開けてリビングに行ったら、イケメン先輩の遠山 金次じゃなくて、ピンク色のツインテールに、ハート形の小さなクリップで前髪を留めて、おでこ少し見せた幼児体型の美少女、神埼・H・アリアがいたんだ。

 

「あら、あなたは……」

 

 俺の存在に気づいたアリアさん。

 

「ええっと……?」

 

 コレ、なんてエロゲ? とはもう言わない。

 

「あの、ア、アリア先輩、ですよね? 何でここにいるんですか? 男子寮ですよね、ここ」

 

 むしろ、部屋にアリア先輩がいることにものすごく嫌な予感がする。

 

「ええ、男子寮で間違いないわよ。あなたは……。見た事があるわね……」

 

 顎に手を当てて、ジロジロと俺を観察するように見始めたアリア先輩。男子寮であることには無視ですか? ここではあなたが異物ですよ?

 

「えーと……あのぅ?」

 

「――思い出した! 『マイルドキング・オブ・ハート』、麻倉 レオンじゃないの!」

 

「ちょっと先輩っ! マイルドって付けるのやめてくださいよ! 俺、気にしてるんですから!」

 

「そ、それはゴメンなさい……。――って、それよりもなんであんたがここにいるのよ!?」

 

 あなたじゃなくて、あんたって呼んだ? え? こっちが素なの? さっきまでの先輩っぽいのは?

 

「もしかして、金次が言ってたもうひとりの同居人ってあんたのことなの?」

 

「……そうだと思います。数日前からこの部屋に住み始めて……」 

 

「そうなの。だったら丁度いいわ。麻倉 レオン、あなた、あたしのドレイになりなさい!」

 

「へ?」

 

 いきなり何を言ってるんだ、この先輩は?

 

 呆ける俺に説明するようにアリア先輩が話し始める。

 

「あたしが作るパーティに入るのよ。そこで一緒に武偵活動するの。そうすれば、あたし、金次、あんたで前衛がかなり厚くなるわ」

 

「ああ、ドレイになれっていわばパーティへの勧誘ですか。――申し訳ないんですが、それはお断りさせていただきます」

 

「えっ!?」

 

 いや、驚かれてもね……。

 

「少し調べればわかると思うんですけど、俺は近接格闘、前衛特化でつき抜けてる武偵ですから。基本俺がパーティを組んだ場合のスタイルって、俺ひとりが前衛で、他のメンバーがサポートに回るのが一番パーティとして最良のかたちなんです」

 

「で、でも私も強襲科Sランクの武偵なのよ? あたしや金次じゃ、あんたに合わせられないとでも言うつもり?」

 

「近接格闘に限れば。今のことろ世界中どこを探しても、俺と張り合えるのは誰もいませんね」

 

「へぇ、大した自信じゃないの」

 

 うれしそうに微笑まないでもらえますかね? 俺、パーティ組むつもりはないので。

 

 このままじゃ諦めそうにもないし、もうひとつの理由も話すか。

 

「それにですね、おそらくアリア先輩が想像してるパーティには、俺は合わないと思うんです」

 

「どうしてそう思うのよ?」

 

「さっき3人で前衛をやるという発言から、先輩のやりたい事って、ひとりでは解決できない事件の解決のために、パーティメンバーもしくはパートナーを探してるってことなんですよね?」

 

「――っ。よく……、わかったわね」

 

 いや、バレバレですから。実は友達いないのコミ障同士だからか、なんとなくドレイ発言の真意について察せましたからね。

 

「俺の場合は先ほど話したとおり、前衛に限っては連携が難しいんです」

 

「それは――!」

 

「自分たちは同じSランクだから、AランクやBランクの武偵と違って連携が取れると?」

 

「そ、そうよ!」

 

「…………。……アリア先輩」

 

「なによ……?」

 

「俺は、銃の腕は人並み以下で、身体能力と格闘技術だけでSランクになった武偵ですよ」

 

 そうだ。何度も死にかけて、何度も限界を乗り越えて、重度の中二病だった俺が彼を目指して得た力。

 

 鍛え上げた力にはプライドがある。

 

 2つ名にも、中二病の名残がモロに残ってて恥ずかしいとは思うが、プライドがある。

 

 Sランク武偵という評価にもプライドがある。

 

「年下だからってあんまり舐めないでください。『キング・オブ・ハート』の2つ名はダテではありません。――俺は、戦車相手でも素手で破壊できます。機関銃の弾丸も効きません。至近距離から発射されたライフル弾だって掴み取りますよ」

 

「――っ」

 

 アリア先輩が驚くような表情を浮かべた。まあ、着やせするタイプだし、後期的な不思議筋肉所持者だから、そんなトンデモ超人には全然見えないよな。もう少し身長が伸びればいいんだが、それは将来に期待しておく。

 

 さらにトドメとばかりにアリア先輩に言っておく。

 

「そんな奴と誰も前衛は組めません。もしも組める人間がいるとしたら、同じレベルの化け物ぐらいです。それに、ひとつのパーティにSランクの前衛が3人というのは、過剰戦力過ぎですからね。Sランクの武偵は固まらせないで分けたほうが、別の現場で起きた事件が解決しやすくなりますよ」

 

「…………」

 

 何も言えずに黙りこんでしまうアリア先輩。あー、雰囲気が暗い。部屋のなかまで暗くなっているようだ。ここはフォローでも入れておくか。

 

「まっでも、パーティメンバーとかパートナーにはなれませんけど、外部協力者としてならお手伝いますよ」

 

「え?」

 

 うわ、見上げた顔。綺麗で美少女なんだけど、体型が完全に小学生だよな、もう。ウチのクラスの間宮さんといい勝負だ。……そういえば昨日間宮さんから送られてきたメールに『パジャマのサイズがほぼ一緒だった』っていうのがあったな。……かわいそうに。

 

「報酬しだいで動くのが武偵ですから。事件が大きくて戦力が足りない、もしくは戦力を分散させなければいけない場合などは依頼してください」

 

「いいの!?」

 

 食いつくの早ッ!

 

「あ、あくまで空いてるときですからね? 事件がないとき、ヤバイ事件のとき限定ですから」

 

「ええ、もちろんよ! ありがとう、レオン!」

 

「ど、どういたしまして?」

 

 いきなり呼び捨て? まあ、外国に住んでたならファーストネームで呼ぶのが普通か。俺の場合は……ライカちゃんと別れて以降友達がひとりもいなかったから、ほとんどが苗字呼びだけど。……このことを間宮さんに知られたら襲撃されそうだな……。

 

「――あ。そういえば。遠山先輩はまだ帰ってないんですか?」

 

 いつもならこの時間には帰っているはずなのだが、家にいないようだ。まあ、知り合って間もないから確かな確証はないけどさ。

 

「金次? 金次なら――」

 

 言いかけて止まる。え? どうしたの?

 

「で、出かけてるわ!」

 

「出かけてる? 夕飯のほうは……」

 

「も、もう食べたわよ」

 

「? それはアリア先輩がと?」

 

「き、金次も私もよ!」

 

「そうなんですか」

 

 へー、2人でねぇ。さすがイケメン先輩だな。ロリ体型も大人体型もいけて口説いてるのか。

 

「じゃあ、俺はこれからなので……。えーと……」

 

「別にあたしのことは気にしなくていいわよ」

 

「そうですか?」

 

 なら、食べさせてもらおう。メイドさんたちに夕飯もらってきててよかったー。弁当箱、しかも重箱ですよ。中身が楽しみだ。

 

 リビングのテーブルについて、お弁当を取り出す。

 

 包みを取って箱を開けると、煮物や魚、光り輝く和牛だと思われるステーキが。二段目はマツタケの香りの混ぜご飯。おおっ、とても和風なお弁当! すっごく美味しそうだ!

 

 お箸を使って食べ始める。

 

 ん~、まい!

 

「じゃあ、あたしはお風呂使わせてもらうから。……覗かないのよ?」

 

「ふぁーい」

 

「やれやれ」

 

 バタンをリビングのドアを閉めて廊下へ出て行くアリア先輩。

 

 お肉サイコー! 煮物サイコー! 混ぜご飯サイコー! これぞ日本の和食!

 

 …………。……あれ?

 

 普通に流しちゃったけど、さっきアリア先輩なんて言った?

 

 お風呂を使わせてもらう?

 

 お風呂? ……へ?

 

 視線をドアの方へ向けてみれば、女の子物のキャリーバッグが……。

 

 そういえば、間宮さんが放課後、帰るまえに何か言ってなかったけ?

 

 えーと……。

 

『アリア先輩の外泊用に、荷造りしなきゃいけないの』

 

 アリア先輩の外泊用の荷造り……。

 

 外泊用……。

 

 リビングに堂々と置いてある女の子が使う色のキャリーバッグ。

 

 現在アリアさんは入浴中。

 

 …………。

 

 ……間宮さんが言ってたアリア先輩の外泊場所ってここじゃね?

 

 けど男子寮にわざわざ泊まる理由は?

 

 ……遠山先輩だよなー。むしろそれしか理由がない。俺の存在については知らなかったみたいだし。

 

 ということは、今までの話から、

 

 アリア先輩のドレイになりなさい発言。

 

 アリア先輩は自分と一緒に前衛ができる強襲科のパーティメンバー、パートナーを求めてる。

 

 遠山先輩は元強襲科のSランク。

 

 遠山先輩の強襲科でのランクを知ったアリア先輩が、遠山先輩をパートナーとしてスカウトしようしてるところか。

 

 いや、もしかしてスカウト済みだったり?

 

 他人の寮の部屋にひとりで留守を預かってて、その前には夕飯を一緒に食べたぐらいだし。

 

 いやいや、待てよ?

 

 でも、さっきの横暴というかコミ障丸出しの態度からいって、遠山先輩が了承していない可能性もあるんじゃないか?

 

 その場合、スカウトする(口説き落とす)ための長期戦グッズとか?

 

 パートナーになるまでつきまとってやるわ! 的な。

 

 まさかー。それはないわー。

 

「それにそうだとしても、俺にはあんまし関係ないよねー。俺はしばらく日本で高校生ライフを満喫するつもりだから、これも学園青春としてスルーしておこうっと」

 

 お弁当を食べ終えて流し台へ。洗って、忘れないように鞄のなかへ。

 

「まだアリア先輩、お風呂から上がらないだろうし。部屋でトレーニングでもしてるか」

 

 最近忙しくてメニュー消化できてないんだし、丁度いい。

 

 

 

◆

 

 

 寝室でするのは汗の臭いとか迷惑だから、玄関近くにいくつか存在する、勉強やトレーニングするための部屋でトレーニングを行なう。

 

 メニューは案外普通で腕立てや腹筋、スクワットとかだけど、それを行なう速度や回数は度を越えていて、他にも体内の気を高めたり、練ったり、気配を消したり、特殊なトレーニングも行なう。

 

 数十分にも満たない時間で汗をビッショリかいた俺は、タオルで全身の汗を拭う。

 

 最近まともにトレーニングしてなかったから少し不安だったけど、トレーニングを行なった感じでは衰えてはいなかった。

 

 むしろ気の巡りというか、操作が楽になっていたぐらいだ。

 

 んー? 今まで過剰トレーニングだったのかな?

 

 肉体が休憩を得たことで、力が増すなんて。

 

 最後にもう一度顔の汗を拭っていると、人の気配が。

 

 外から部屋に誰かが入ってきたみたいだけど、気配の感じからして遠山先輩か。

 

 一応、顔出したほうがいいよな? アリア先輩が入浴中だってことも知らせたほうがよさそうだし。

 

 そう思って、汗を吸ったタオルではなく、まだ使っていない新品のタオルを片手に、部屋のドアノブを回そうとしたときだった。

 

 ピンポーンとチャイムが鳴らされたのは。

 

 部屋の外の気配を無意識に探ってみると、気配は今朝の星伽先輩。

 

 直感的にドアノブを回す手が止まり、気配を消してしまう。

 

 そしてさらに、アリア先輩と星伽先輩の修羅場を想像して物音を出さないように体が硬直してしまう。

 

 ぬ、盗み聞きはしなかったけど……。

 

 予想していた通り、修羅場一歩手前だったようだ。

 

 ていうか、チャリジャックされたのって遠山先輩かよ……。

 

 いや、聞えちゃっただけだよ。盗み聞きしてないからね。ほんとだぞ!

 

 ――と、星伽先輩は何とか無事に帰って行ったようだ。

 

 修羅場は回避されたけど、もうひとつの修羅場が起こる可能性があるから、今度こそドアノブを回して部屋から出る。

 

 そして、なぜか脱衣所に入っていた遠山先輩を発見して――。

 

 慌てて追いかける!

 

「遠山先輩っ! ちょっと待ってください! 今、アリア先輩がお風呂に……」

 

 ……へ?

 

 ――俺が、そこで見たものは、アリア先輩の脱いだ衣服が入ってるだろうカゴを、必死に漁っている遠山先輩の姿だった。

 

 まさか先輩が下着ドロなんて……。いや、制服そのものが狙いなのだろうか?

 

 現実を受け止められずに思考が停止する。そんなときにガラッ、とお風呂の内側から窓が開いた。

 

 なかなか出てきたのは、アリア先輩。

 

 すっぽんぽんで、丁度窓を開けたところで大の字でしたー。

 

 綺麗だけど、本当に幼児体型だね、わぁー。

 

 この状況でなぜか俺の戦闘脳が働いた。ザ・ワールドみたいに時が止まったように思考が引き伸ばされて、アリア先輩を観察してしまう。

 

 上から下へ、下から上に。以外に女の子の肉がついてて、ほうほう、幼児体型も意外となかなか……。

 

 俺自身の体感でじっくりと観察し終えた頃、アリア先輩は下を見た。脱いだ衣服を入れたカゴに目を落とし、カゴに両手を突っ込んでる遠山先輩を発見。

 

 脱衣所で自分が脱いだ衣服の入ったカゴを探ってる男もこちらに気づいて、探る作業を一旦やめて、完全に裸の自分を見上げていることに気づく。

 

 アリア先輩がバッと片手で胸を、もう片方の手で股を隠して、

 

「へ……ヘンタイ……!」

 

「ち、ちがッ……!」

 

 ヘンタイと叫ぼうとしたところで、遠山先輩が頭を下げて、両手をアリア先輩に向って差し出した。

 

 差し出したのは刀。攻撃する意思はないと柄の部分をアリア先輩に向けているが、先っぽにはトランプ柄のブラジャーとショーツ……いや、パンツが。

 

 ――この瞬間、すべての時が止まった。

 

 俺の高速思考による擬似的なザ・ワールドというわけでなく、文字通り全員の時間が止まる。

 

 そして――止まった時が、やがて動きだす。

 

 アリア先輩がふるふると小刻みに震えだし、

 

「――~~~~死ねッ!」

 

 声にならない悲鳴を上げながら遠山先輩の腹に蹴りを放ち、強力な蹴りをモロに貰ってふらついたところに、

 

「このドヘンタイ! ホントに死ね!」

 

 顔面に膝を入れられた遠山先輩は、あっけなく沈んだ。

 

 うむ! 見事なコンボだ!

 

 ――って、感心してる場合じゃない!

 

「アリア先輩! タオル! 体隠して!」

 

 アリア先輩に背中を向けた状態で、片手に持ってた新品のタオルを投げる。バスタオルのような全身を覆うタイプじゃないけど、今は充分だろ。

 

「それと、気絶してる遠山先輩を回収しますから、出来ればもう一度お風呂に入っててくれませんか!?」

 

「う……。わ、わかったわ。あ、ありがと……」

 

 ガラッと窓が閉まる音を聞いて、もう一度アリア先輩に確認してから、気絶してる遠山さんを回収する。

 

 リビングのソファに遠山先輩を寝せて、氷嚢を用意し、タオル越しに顔面に乗せてあげる。

 

 あー、それにしてもどうするかなぁ……。

 

 気が動転していたこともあってアリア先輩は全く気づいてないようだけど、思わず防弾制服の胸ボタンに仕込んでる高性能、高画質カメラで、さっきのヤバいシーンを撮影しちゃったんだよな……。

 

 一応言っておくけど、盗撮用じゃない。本来は強襲科の前衛として、ひとりで犯人たちの前に突っ込んだとき、証拠写真や映像とかを撮影記録するためのものだから。

 

 んー、このまま画像削除がいいんだろうけど、惜しいなぁ。モロだったし……。

 

 まあ、とりあえず、見るのは不味いから映像はそのまま確認しないで、ネットを繋げてないパソコンの隠しフォルダに保存しておくか。もしかしたらあの毒舌推理金髪……長いので毒舌幼女、に売れるかもしれないし。

 

 

 

◆

 

 

 

 リビングのソファで遠山先輩を介抱していると、アリア先輩がやってきた。

 

 桃色のネグリジェ姿で。

 

 えーと……?

 

「そういえば言ってなかったわね。――あたし、しばらくここに泊まるの」

 

「泊まるのって……。ここ何度も言ってる通り男子寮ですよ? 女の子が泊まるのはさっきみたいに危険だと思うんですけど……?」

 

「さ、さっきはゆ、油断しただけよ! また金次のバカが覗いてきたりしたときは、今度こそ風穴開けてあげるから平気よ!」

 

 力強くアリア先輩が断言する。予想してた通りだねー。やっぱりこの人、家に泊まるみたいだよー。わー、これを間宮さんに知られたら俺どうなるんだろー?

 

「あ、あんたも着替えや入浴を覗いたりしようものなら……」

 

「銃を取り出そうとしないでください、しませんから。さっき脱衣所にいた件に関しては、帰ってきた遠山先輩に先輩が入浴中だと伝えようとしたからなんです」

 

「…………」

 

 いや、疑いの目も銃と一緒にしまってくださいよ。伝えようとしたのは事実なんですから。

 

「それよりもシャワー浴びに行っていいですか? さっきまで別の部屋でトレーニングしてたんで、汗かいてるんです」

 

「……何もしないわよね?」

 

「何をしろと?」

 

 俺に入浴直後の浴槽の水を飲めと? 長年の死に掛けサバイバル生活で毒は効かない体質になってるからお腹は壊さないけど、人間として終わっちゃいますよ。

 

「それと、アリア先輩に投げたタオルはまだ使ってない新品だったので、安心してください」

 

「……わかったわ」

 

 丁度よさそうなところで話が終わる。

 

「じゃあ、俺はこれで」

 

 お風呂に直行だ。金次先輩はまだ目覚めないだろうから放置。

 

 …………。

 

 脱衣所から女の子の匂いしました。

 

 お風呂場に女の子の匂いが篭ってました。

 

 いつものシャンプーの匂いではなく、女物のシャンプーやリンス特有のフローラルな香りです。

 

 ……くっ、鼻がいいから強く、意識してしまうっ。

 

 女の子がさっきまで入っていたお風呂だと。

 

「無心、無心になれ!」

 

 幼児体型は範囲外! 幼児体型は範囲外! 幼児体型は範囲外っ!

 

 シャワーを浴びて、速攻で洗い終える!

 

「ふぅ……」

 

 脱いだ服と着る服を入れたカゴからバスタオルを取り出して、体を拭く。

 

 頭から順に下に拭いていき、下着と寝間着にしてるジャージを着る。

 

 タオルを取り出して首に掛ける。

 

 洗濯物をまとめて洗濯機へ放り込もうかと思ったとき、気づいた。

 

 もうひとつのカゴの存在に。

 

 あれ? 入るときはなかったはず――。

 

「――っ!?」

 

 な、なんでブラジャーとパンツが服の上に!? カゴから見えるところに置いてあるんだ!? サイズとトランプの柄が、遠山先輩が2本の刀の柄部分に付けてたヤツに似てる! つまりアリア先輩の物! どうしてだ!? 洗濯しようとして脱衣場に置いたままにしたってことなのか?

 

 マズイだろ! せめて隠そうよ! 遠山先輩ってあなたの下着の入ったカゴを漁ってたんだよっ!

 

 いくらなんでも丸出しはマズい。すでに手遅れかもしれないが、丸出しの下着を見て遠山先輩が犯罪に走った場合、同居人である俺も困る。

 

 使っていない新品のタオルを棚から取り出して、下着が見えないように上に被せる。

 

 ……だがこのままじゃ、金次先輩が捲って中身を見そうだな……。

 

 脱いだ武偵高校の防弾制服の胸ポケットからメモ帳とボールペンを取り出して、1枚メモ帳千切り、書く。

 

『アリカ先輩の洗濯物入り!』

 

 詳細は書かずに、それだけ書いて上に乗せる。うん、これで大丈夫だろう。普通コレでタオルを捲ろうとはしなくなるはずだ。

 

 洗濯物はまた明日でもいいか。

 

 

 

◆

 

 

 

 リビングで金次先輩が寝てるし、もうテレビは見ないで寝室に向って、ケータイでも弄りながら寝るかー、と寝室の扉を開けて見ると……。

 

 アリア先輩が二段ベットの片側。俺のベッドに迎えないようにトラップを仕掛けていた。

 

 マジックで床に書かれた『ここから入ってきたら殺す』の文字と囲いにあわせて、ワイヤーが張ってあって、地雷や赤外線や温度センサーが用意してあって……。

 

 え? コレなんて嫌がらせ? 油性マジックですよね、それ。

 

「レオン? シャワーから上がったのね」

 

 いや、一仕事終えたみたいに汗拭きながら言わないでくださいよ。

 

「アリア先輩? これ、どうしたんですか?」

 

「獣対策よ。これだけ仕掛けておけば大丈夫でしょ」

 

 わあぉ、自信たっぷり。

 

 ――って、それよりも!

 

「そのセキュリティ高めてるベッドの1段目、俺のベッドなんですけど……」

 

「あら、そうなの? まあ、あたしは2段目を使わせてもらうから関係ないわね」

 

「…………」

 

 充分、関係あると思うんです。

 

「あたしはもう寝るけど、あんたは? どうするの?」

 

「俺も寝ようと思って着たんですけど……」

 

「そう。なら丁度よかったわ。今だけトラップを解除してあげるからベッドに入りなさい」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 一段目のベッドのなかに入る。いやいやいや、お礼を言ってベッドに入る場合じゃないだろっ! これ、夜中に俺がトイレ行きたくなったらどうすればいいんだよ!? 金次先輩のほうのベッドの2段目を使えばいいじゃないか!

 

 それに、もしも遠山先輩がアリア先輩のほうに侵入してトラップが発動したら……。

 

「じゃあ、おやすみ、レオン」

 

「はい。おやすみなさい、アリア先輩」

 

 ……とりあえず、なるべくトラップから離れて、布団を頭まで被って寝よう。金次先輩がトラップを発動させないように願いながら。

 

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