時は少し遡る。
衛兵とアリアが森にある倉庫の前まで辿り着いた時であった。
「アリアさん!!無事でしたか」
少し遅れながらも龍司はアリア達のいる倉庫に辿り着いた。
「おぉ、少年生きていたか。
今からこの倉庫の中に入って援軍がくるまで隠れるから時間稼ぎを頼っ………………クソ、もう来たか」
そこには赤い目をし禍々しい程に綺麗な刃を振り回しながら歩いてきた。
「な、ナイトレイド………」
今までのほほんとした世界にいた龍司は殺気という殺気を浴びた事が無かった。
蛇に睨まれたカエル、まさしくそれだ。
黒髪赤目少女の殺気というやつに充てられ動けなくなってしまったのだ。
「標的は葬る」
少女は一言だけ残すと走り出した。
「く、クソがァァァァァ!!」
衛兵は手に持っていた銃を乱射するが少女の動きが早過ぎて狙いも定まらず当てる事はおろか掠らせる事すら出来ない。
「葬る」
一言。
少女は一言だけ残すと一瞬のウチに衛兵をバラバラにしてしまった。
斬られながらも無念の表情を浮かべた衛兵の顔が龍司の脳内に張り付いた。
衛兵を仕留めアリアを殺そうと歩き出す少女。
アリアは尻餅をついて動けなくなっている。
「(あいつは俺を殺す気は無い。
このまま動かずにいれば死なずに済む、だけどこのままでいいのか?
今殺されようとしている人は数時間だけだがお世話になった人………
恩を返すとか返さないとかじゃなくても目の前に助けを求めてる奴がいるのにこれで良いはずがねぇよ!!
動け、動け、動け動け動け動けぇ!!)」
気がつけば走り出していた。
身体を麻痺させていた何かも解けていた。
イケる、これならアリアさんを助けられる。
この想いだけで龍司は身体を動かしていた。
「ぉぉぉぉぉおおおおおお!!」
龍司の叫び声に気がついた少女は振り返り一時的に動きを止めた。
相手は明らかに龍司より格上。
いくら相手が少女だろうと格上相手に手加減をしては生き残る事は出来ない。
三代鬼鉄を抜刀し斬りかかる。
「お前は標的じゃない、だけど邪魔するなら葬る」
「へっ、葬られてたまるかよ」
龍司は驚いていた。
自分の直感が相手を読んでいるかのように錯覚させていた。
それというのも少女の剣戟を捌いているのだ。
明らかに格上だがそれに対応出来ている。
「(やべぇ、これはやべぇよ。何とか捌けてるし刀をどう振ればいいか何となく分かる。
いや、分かるというより思い出してるみたいだ)」
ここまで様子を見る限り龍司自身は貰った力に気がついていない様だ。
大切な師を守る為、仲間を守る為に天人との激しい戦争、攘夷戦争を生き残った伝説の侍『白夜叉』
その戦闘能力を有しているのだ。
幾ら格上と言えど白夜叉の戦闘能力ならば…………天に仇なし牙を折られてもなお守り続けた鬼の力ならばやすやすと負けるはずがない。
「ったく、アカメの奴やけに時間かかってるな……………んぉ?あの少年やるねぇ、アカメと互角に渡り合えてるなんて」
聖杯戦争を生き抜いた騎士王の超直感と白夜叉の戦闘能力を持って互角に渡り合えている。
いや、実際のところ相手を斬る事に対して躊躇いを持っている事が戦闘の妨げになっている龍司の方が部が悪い。
「ぉぉぉぉぉおおおおおお!!」
龍司の攻めが激しさを増す。
それに押されたのか少女が押され始めた。
何がきっかけかは定かじゃないが何かが鍵となり思い出させたのだ。
戦闘の記憶、夜叉の力を……………
「は〜〜い、そこまでね」
黄金色の髪に獅子の様な姿をした女性が現れた。
「くそ、援軍かよ……………」
「なぁ、少年。
君はそこを退く気は無いか?」
金髪の女性が龍司に問いかける。
「退くわけないだろ!!
ほんの少しの間でも世話になった人だけど、それでもこんな心優しい善人を黙って殺させる訳ないだろ!!」
金髪の獅子女はゆっくり歩くと倉庫扉の前に立ち、
「少年、そういう事はこれを見てから言いな」
その扉を蹴破った。
絶句、地獄絵図まさにそれだった。
血だらけ、身体色んな部分が黒ずんていたりハエがたかっていたり死体独特の異臭などそういった今の帝都の闇をその場に移したかのような地獄だ。
「そんな………………」
「龍司、私知らない!!こんな所があったなんて私知らない!!」
「なぁ、あんたら何しに来たんだ?助けに来てくれたのか?俺はイエヤスっていうんだ……」
奥にある鉄格子にしがみつきながら何かを訴えようとする少年がいた。
身体はよくわからない斑点があり健全な状態で無い事が分かる。
「ぜ、全部その女がやったんだ。
俺とそこのサヨって奴と一緒に帝都に来たけど騙されてこの蔵に閉じ込められたんだ。
そいつは家族ぐるみでここにいる奴らを殺したんだ!!」
「…………よ、そうよ!!私がやったのよ、田舎での平民なんて金も無い宿も無いそんなのただの家畜みたいなものじゃない!?この蔵で飼ってあげただけでもありがたく思いなさいよ!!だいたいその女の髪がサラサラ過ぎるのよ家畜の癖に、私がこんだけ癖っ毛で悩んでるのにだからこの雌豚は私が直々に可愛がってあげたのよ、それの何処が悪いって言うの!?」
「てめぇ……よくも抜け抜けと」
金髪獅子女が怒りを露わにしながらアカメと呼ばれる少女共に動く。
しかし、龍司によって止められる。
「少年?今こいつは自分のやった事を告白したんだぞ、それでもこいつをたす「俺が殺る」…………」
三代鬼鉄を上段に構えゆっくりと歩く。
アリアは直面する死に恐怖し動けなくなっていた。
「死ね、クソ野郎」
無慈悲にもその振り下ろされた刃はアリアの身体を真っ二つにした。
「(一時の怒りとは言え………少年、結構見込みあるな)」
何を思い付いたか金髪獅子女のレオーネは龍司の襟首をつかむ。
斬った瞬間の感触が残っており嫌な余韻が龍司を浸らせていただけに驚きは倍だ。
「アカメ、時間も押してる。
てか、遅れてるからさっさと退散するよ」
「ちょ、ちょっと待てよ!俺をどうすんだよ!!」
「ん?連れて帰る」
疑問をぶつけようとした時浮遊感が龍司を襲った。
視界が落ち着くとそこは糸の上だった。
「レオーネ、誰よそいつ!!」
「仲間♪」
「はぁ?ふざけないでよね。そんな怪しい奴仲間になんてしたくないわよ!!」
マインが龍司を卑下しているのを見てラバは苦笑いをしていた。
レオーネは鎧男に龍司を預けると
「ブラッちその子よろしく」
「え、は、ちょま、ま」
「安心しろ、直ぐにヨクナル」
「……………」
ブラッちと呼ばれた鎧男の背景に薔薇が見えたのは気の所為だと願いたくなる龍司であった。
「全員揃ったな、これより帰還する」
それを合図に全員が森を駆け抜けた。