驚かないつもりでいた。だが山倉さんは僕が予想していた以上の言葉に思考回路が停止する。
僕は思わず『えっ?』と、山倉さんを見つめた。
『ダ、ダメだよそんなの!』
山倉さんの雰囲気からして本気だ!そんな山倉さんを見てどうして良いのかわからなくなる。
『ちょっと待ってて』
と、口を尖らせ不機嫌な顔をする山倉さんは席を立ち、鞄から携帯を取り出すと何やら電話を掛けながら廊下に向かう。そのまま暗闇に消えると微かに声だけが聞こえてきた。
僕は、誰か召使いか運転手を手配してるのかと勝手に思い、勝手に安心していた。
数分してペタペタと足音を響かせながら戻ってくる山倉さん。僕のことをジッと冷めたような見ながら発した言葉はこうだ!
『許可もらったから大丈夫』
と、またしても口を尖らせ椅子に座るとさっきより口いっぱいに唐揚げを頬張った。
……やけ食い
どんな会話をしていたのかはわからない。けど、このまま山倉さんを泊めてしまうのもそれはそれで不味い気がしていた。
『いやいやいやいや!そうじゃないよね?僕は男の子で山倉さんは女の子だよ?』
『バリバリ!』
『………山倉さん?布団もあれしかないんだから!』
『バリバリ!』
『い…一緒に寝ることになるんだよ』
僕は焦って色々言って帰ってもらおうとするも聞く耳を持たない山倉さん。一生懸命唐揚げを食べていた。が、一緒に寝ると言った時、一瞬、口が止まったのを僕は見逃さなかった。
『い…一緒に寝るってことは…』
なんだか興奮してきた。
『何するかわからなくなっちゃうって…ことだよ』
やはり僕も男だったんだ!改めて思った。
もし、本当に泊まるのであれば理性を抑えていられる自信は無い。しかも、こんなに可愛い子が横で寝ている。想像しただけで心臓が破裂しそうだ!
『……いいよ』
小声だ。凄く小さな声でいいよって…
山倉さんの顔を見ると真っ赤になっていた。でも、いいよって!またしても予想を遥かにうわまる発言に脳みそが破裂しそうになる。
『だって』
僕はやっぱりダメだと言おうとした!
『嘘、ウソだよ』
いつもと違う下手な笑顔。
『そうだよね…今日会ったばかりでいきなりなんてね〜ありえないね』
と、頑張って作り笑みを浮かべるも見ていられない。
山倉さんは箸を置き、足早に洗面所に向かう。乾燥機に入った服に急いで着替えると鞄を整理し始めた。そして、その鞄を手に持つと…
『ごめんね』
って…
頑張って笑顔を作っていた山倉さん。しかし、その作り笑顔は徐々に崩れ、今にも泣き出してしまいそうな表情へと変わっていく。
『き…気に…気にしないでね。また明日ね』
ついには涙を零しながら笑顔で手を振り.走るように玄関に向かう。
そんな山倉さんを僕は見ていられなかった。
玄関まで走り、急いで靴を履くと勢い良くドアノブをひねる。そのまま勢い良く玄関を飛び出そうとした時…
僕は山倉さんの腕を掴んだ。
ここで力強く抱き締めたい気持ちはあった。だが、僕にはそこまでの勇気はなかった。精一杯の気持ち…僕は…
『もう少し居てくれないかな?』
正直な気持ち。
このまま…このまま雨の中帰らせてしまったら男として最低だ!それに、帰って欲しくはない。それも本心ではある。
ここ何年かずっと一人で過ごしていた。友達も出来ず一人で居る時間が多かった。孤独な日々が続いていた。そんな僕の前には一緒に居たいと言う人がいる。
嬉しさと困惑の狭間を行き来するも僕は山倉さんを泊めることにした…