『晴也、グループに迷惑かけたくなければ遅刻なんてしないように!HR終わり!』
腕立てが終わると同時にHRが終わった。
『マジふざけんなよ〜』
最下位となった川嶋君。腕をぐるぐると回しながら文句を言い、ストレッチしながら席に戻った。
中居君も皆に『ごめんな』と、苦笑いしながら席に戻る。
『マジか〜』
疲れた表情をする渡辺さん。すとんと床に座り込むとシャツの第二ボタンを外す。そして、広げると片手でパタパタと扇ぎ出した。
ちょっ!
その時、僕は見てしまった!胸の谷間に黒のブラジャーと…刺青と…
すかさず視線をそらすと、何故か山倉さんと目が合った…疑いの目。山倉さんは冷ややかな目で僕を見ている。
覗きたかった訳じゃ無い。たまたま僕が立ってる所から見えてしまった!事故だ!これは事故なんです!
心の叫びは山倉さんに届くわけもなく、少しの間、無視されてしまった…
なにはともあれ、減点されなくて良かった。ポイントが減って最終的にどうなるかはわからない。こんな些細なことで減点されては先がもたない。内心、少しホッとしながら授業を迎えた。
ほのぼのとした授業…
先生が黒板に書いてる隙を見て外を眺める。
三階から見た景色は白一色に染まった街並み。桜にも雪が積もって春と冬のコラボだね。
そんなことを一人ニヤニヤ思っていると…
チク、チク!
何か顔に鋭い刺激を感じる。
僕は、ふと横を見ると山倉さんがシャーペンの芯を親指で折りながら飛ばしていた。
またこの子は!
口を尖らせ冷めた目で見つめる山倉さんは、やはりまだご立腹のようだ。
僕も同じような表情を作りシャーペンを取り出すと手紙を渡してきた。
『ほーら、腕立てふせがたりないのかな〜?』
慌てて前を見ると先生が僕達を見ながら口だけ笑っていた。僕は慌てて手紙をポケットに隠し苦笑いをすると一生懸命ノートを書いた。
『やっぱり凄いな。先生は』
と、小声で、だけど先生の耳に届くように呟いた。
手紙の内容が少し気になるけど、今は勉強に集中しよう。
『それでは〜…
授業はそのまま続き、午前中の授業は何事もなく終わった。お昼休みになると昨日と同じように席を動かし、小学校スタイルのランチとなる。中居君と川嶋君の二人も加わり場の雰囲気がさらに明るくなった。
『朝、回したの見てくれた?』
あの手紙を書いたのは渡辺さんだった。
『見たよ』
僕以外の皆は読んでいた。読んだら回すを繰り返し席順で僕が最後になっていた。
『ごめんね、まだ見てないや』
授業中に怒られたくないし休憩時間も長くはなかった。お昼休みにゆっくりと読もうと大事にポケットにしまっておいたのだ。
『大丈夫だよ。私、連れてくから』
と、お弁当箱を広げる山倉さん。
『お!もうそんな関係かよ!』
驚きを露わにする川嶋君。それもそのはず、山倉さんはお弁当箱を二つ出し、一つを僕の前に置いたからだ。
川嶋君と中居君は僕と山倉さんの関係を追求し出し、その様子を見ながら笑う渡辺さんと小牧さん。なんとも賑やかなランチタイムとなった。
こんな楽しくて騒がしいお昼は本当に久しぶりだった。ムードメーカーの川嶋君、爽やかで少しクールな中居君。綺麗だけど何処と無く怖い雰囲気を持った渡辺さん、口数は少ないが居るだけで存在感のある小牧さん。さっきからずっと冷めた目で見る山倉さん…
徐々に一人一人の個性がわかってきた。まだまだだけど、もっと深い関係になりたいな。そんなことを思いながらお昼休みを過ごした。