部屋に入ると人数分のアイスと飲み物が用意されていた。
『ありがと〜』
と、何事もなかったようにソファーに座りアイスを食べ『おいしい』と呟く山倉さん。『ホントですか?』とその隣に座り味見をする小牧さん。そして、晴也、僕となった。
皆がソファーに座ると照明を調節して薄暗くする渡辺さん。
『真理、真理!このアイスすっごくおいひ〜』
『おいひ〜ですね。私も食べてます』
アイスに夢中になる二人は、まるで子どものように喜んでいた。
ドア付近て何か落ち着かないんだよな〜
何て思っていると…
『蒼太君、こっちこっち、アイスおいひ〜です』
と、スプーンを咥えながら指差す小牧さん。
晴也をお尻で強引に押し返しスペースを空けると、アイスを片手にさらにずらしてくる。どうして良いかわからなくなる晴也。モゾモゾしていると…
パチーン!
『いって〜!』
力いっぱい晴也の太ももを叩く小牧さん。
『早くズレなさい晴也』と、晴也を見上げながら腕をつねっていた。口調と光景がミスマッチしているが…
『は、はい』
と、渋々立ち上がる晴也。何だか子どもに怒られてるお兄さんみたいだった。
そんな二人を見ていると、なんだか急に笑いが込み上げ思わず笑ってしまった。
と同時に自然と視界に入る前の二人。
歌を選ぶ渡辺さんと、ヒロ……。あのムードメーカーのヒロが一言も喋らずに俯いていた。そして、何かを鼻に詰めていた。
少し薄暗いから気づかなかったけど、多分、渡辺さんに引っ叩かれたのだろう…。渡辺さんの隣で静かに鼻栓をしているヒロは何だか弱々しく、何かに怯えてる羊ようにも見えた。
僕は言われるがまま山倉さんの隣に座ると、アイスを手渡す小牧さん。そして、大音量で音楽が流れ始めた。
『じゃ〜カラオケバトル行くよ〜!』
マイクを片手に立ち上がる渡辺さん。
皆のテンションが上がり、静かにしていたヒロも調子を取り戻し『フォ〜〜!』と雄叫びをあげながら踊りだした。
隣に座る山倉さんも僕を見るとニコッと微笑み、小牧さんとアイコンタクトをとると立ち上がりリズムに合わせて踊りだした。
僕はカラオケボックスに来るのは初めてだった。世の中、こういう遊びがあるんだな。大声出して周りを気にせず歌いまくる。凄く楽しそうに歌う渡辺さん。リズムに合わせて踊る皆を見て…
凄くまとまりの良いグループだと思う。優しさ溢れる仲間思いのグループだと思う。だけど、僕に気を使って楽しく振舞ってくれてるだけなのかもしれない…
良い面だけを追いかけていれば良いのに、何故か悪い面も考えてしまう僕。そうすることで何かあった時に少しでも傷つかないですむようにしたかったのだ。
そんな自分が嫌になる。
ただね、ここに居る皆と一緒にいて思ったんだ。
僕の本当の姿を見ても今と変わらず仲良くしてくれるのか…
皆を信じなさい…
先生の言葉がふと蘇る。
考えれば考えるほど悪い方向に進む僕…すると…
『蒼太、踊ろ?』
笑顔で楽しそうに笑う山倉さん。周りを見ると皆も僕を見つめていた。
『蒼太、俺達はずっと一緒だよ。ぜって〜裏切らね〜からよ』
マイクに向かって大声で叫ぶヒロ。耳がキーンとしながらも少し嬉しく思った。
これが仲間なのかな…
信じたい!僕も友達と言える仲間が欲しい。でも…失う辛さも味わいたくはなかったんだ…
『ごめんね、ちょっとトイレ行ってくるね』
と、楽しい雰囲気を壊してしまった。
『早く戻ってこいよ。待ってるからよ』
と、親指を立てるヒロ。僕は軽く笑みを浮かべドアノブに手を添えようとした…
その時、ひとりでに下がるドアノブ、。と同時に勢い良く開かれたドアは僕を壁まで吹っ飛ばした!
プッ…