『きゃ〜!』
大音量で鳴り響くスピーカー。終盤を迎えようとする音楽はさらに激しさを増す。だが、その激しく鳴り響く音楽よりも、聴覚を刺激する甲高い声は皆の鼓膜を震わせた。
僕は、何が起きたのかわからなかった。ただ、僕の意思とは裏腹に鋭い眼孔はドアの外にいる人影を見つめていた。
『何だよ、凶悪な奴らって言うから気合入れてきてやったのにたいしたことね〜な〜』
ニヤニヤしながらゆっくりと近づき入り口に手を添える男。
僕は、あまりの出来事に恐怖し足がすくむ…どころか僕の意思に反する僕はドアを力いっぱい蹴飛ばしていた。
歌が終わり、無音の中ドアの激しく閉まる音だけが響く。そして、勢い良く閉められたドアの隙間から三本の指が生えていた。
『…殺して欲しいなら殺してやるよ』
僕ではない僕。頭から流れる血は目に溜まり白眼を真っ赤に染めた。拳で目を拭い、手の甲に付く真っ赤な血。ジッと見つめてはゆっくりと起き上がり、殺気だった僕はドアへと向かう。その時…
ガタッ!
部屋の奥から物音がし、振り返ると誰かが飛びついてきた!
『うぜ…』
そして、布のような物で口元を押さえられると…
『蒼太!ダメなんだよ!』
飛び込んできたのは山倉さん。険しい表情で僕に抱きつき、全力で押さえ込もうとしているのが伝わってきた。
こんな小柄な子に押さえ込まれる僕は徐々に意識が遠のき暗闇に包まれた…
………。
…あれ?
瞼を開けば僕の部屋の天井。
真っ暗な世界に音楽が流れる僕の部屋…僕は自分のベッドで眠っていた。
夢?
ゆっくりと身体を起こすと頭痛が走る。頭を押さえ痛みを堪えているとリビングの方から声が聞こえてきた。布団から出、『三時か…』ぼんやりと蛍光色に光る時計は時間を教えてくれた。廊下に向かうと徐々に明かりが広がっていく。
『ホント最悪でしょ!』
リビングから聞こえてくる不機嫌に話す渡辺さんの声。
やっぱり…夢じゃなかったんだ。
廊下に出るもリビングに行く勇気が無かった。どんな顔をして良いかもわからないでいた。
怒っている…ムカついてる…嫌われる…また…一人になっちゃうんだな…
そんな時、僕の脇腹を誰かに突つかれる。僕はふと振り返るとそこには晴也の姿があった。
『やっと起きたか。皆、待ってんぞ』
と、人差し指で僕の頬を突っつく晴也。その指をリビングに向けニヤッと笑みを浮かべると先に歩き出した。
リビングに入るとバラードが静かに流れていた。ソファーに座り少しダルそうにくつろぐ皆。その中に山倉さんの姿は無かった。
『蒼太、大丈夫か?頭』
僕に気づいたヒロ。
ニヤニヤと心配してるのかふざけてるのかわからない表情で見つめていた。
『ごめんなさい』
と、頭を下げて謝る僕。
『蒼太は悪くないよ』
キッチンからお茶を持ってくる山倉さん。『はい』と僕に手渡しキッチンの椅子に腰を下ろした。
『さっきの人達は?』
僕は全く記憶が無かった。どうやって帰ってきたのか、どうやってあそこを切り抜けたのか……
そして…
減点されてないのか…