カーテンの隙間から射す光で目が覚めた。
身体を起こすと隣でぐっすり眠る山倉さんが顔を出す。僕は、ゆっくりと布団から出ると甘い山倉さんの匂いが追いかけてくる。起こさないように静かにめくり、再び山倉さんに布団を被せた。
リビングに向かうと二人の姿はなく、綺麗にたたまれた毛布の上に手紙が置いてあった。
毛布ありがとうございます。
早く起きちゃったので一旦お家に帰ります。ので心配しないでください。でわ後ほど。
あと、…
途中から黒く塗りつぶされた文書。こういう書き方が一番気になる…
少し顔が緩む。
学校に行くようになってからこの家も賑やかになったな。リビングやキッチンを見渡し再びニヤける。さっきまで皆、ここに居たんだよな…
ほんの何日か前までは人の気配を感じることがなかった部屋なのに…
ポットに電気を入れ、徐に開けた引き出しから一箱のタバコが出てきた。
…あれ?
誰かが置いておいたのかと思いそのまま引き出しを閉めた。
時計を見ると七時。
山倉さんが起きる前に朝食を作っておこうと冷蔵庫に手が伸びる。
昨日のことを思い出しながら目玉焼きを焼いた。
『おはよ〜』
『お!おはよう』
ご飯の匂いで起きたのか相変わらずの薄着のまま挨拶を交わす。眠たい目を擦りながら寝癖だらけの髪の毛を撫でていた。
『またそんな格好でふらつかないの!』
少しは慣れたつもりではいたものの、下着姿は見慣れなかった。
『眠いでしょ?もう少し大丈夫だったのに』
『うん…顔、洗ってきま〜す』
ペタペタと寝ぼけた声を出しながら洗面所に向かう山倉さんは、やっぱり可愛いかった。
トーストと目玉焼きとサラダをリビングに持って行くと洗面所からドライヤーの音がする。
二人分のお皿とお箸。
寝癖だらけだった髪の毛を整えた山倉さんは下着姿のままソファーに座ると『いただきま〜す』と手を合わせる。
家族ってこうゆうものなのかな…
誰かと一緒に朝食をとるなんて…いつ頃だっただろう…
一人で居ることが長かった。子どもの頃からずっとそうだった僕は、家族や友達との触れ合い方がいまいちわからないでいた。
ずっとお皿もお箸も自分の分だけ。ご飯もおかずも一人前。でも、山倉さんが居るだけでテーブルが賑やかになる。山倉さんが居るだけで話が出来る。山倉さんが居るだけで笑顔が生まれるんだ。
普通の人からしてみたら当たり前であり、ウザいだのめんどくさいだの言う人もいる。
この些細な日常を僕は求めていたのかもしれない。
この瞬間が幸せなんだろうな…
そんなことを思いながら幸せなひと時を過ごした。