小牧真理…卒業…
この学校では退学という制度がなく、留年するか卒業するかの二択となっていた。だが、卒業とは二つの意味を指していた。一つは、三年生となりちゃんとした学園生活を送ること。そして、もう一つは通える可能性が0となった時。
そして、小牧さんは…
今日の早朝、晴也と小牧さんは校舎裏の茂みで発見された。晴也は木に縛られた状態で暴行を受けていた。発見された時には意識がなく、すぐに病院に搬送された。小牧さんは…晴也のすぐ近くで…すでに息絶えていた…
それ以上教えてはくれなかった。
その話を山倉さんから知らされた僕は言葉を無くし、無力さを痛感させられた。
そして、何も考えられないままその日の授業が終わった。
帰りのHRが終わり…
僕は鞄に荷物を入れてると先生が近づいてくる。
『変な気は起こさないでね。綾乃も』
先生は僕と山倉さんにそう呟くとヒロと渡辺さんをジッと見つめながら教室を出て行った。
僕達はそのまま校舎を出ると二人の発見された場所に行くことにした。警察や鑑識といった捜査が入るわけでもなく、現場は事件後のまんま放置されていた。
木には擦れたような痕跡と晴也の血が。そして、そこから二、三歩と離れてない場所には大きな鏡と砂をかけて隠そうとしたのだろう血溜まり跡が残されていた。
リアル過ぎる現場は僕達をも遠ざけようとわざとらしく血の匂いを漂わせていた。
皆、無言のまま現場を見つめ、ヒロが動くと同時にその場を離れた。そして、次に向かったのは晴也が運ばれた病院。
普通に会えると思っていた。
会えば意外と元気な顔で話してて…『なんだよ、心配してそんしたよ』…みたいな雰囲気をイメージしていた。
それはただの願望であり現実はそう甘いものではなかった。
身内でもない僕達には何も教えてくれない病院。顔だけでも見たかったのに面会謝絶と部屋番すら教えてくれなかった。
なんだろう…ちっぽけだな…
思い通りに進まない現実に当たりどころの無いストレスが着々と蓄積されていく。
夕陽も沈みかけてくる頃、僕達は電車に乗って帰ることにした。山倉さんと渡辺さんを椅子に座らせ僕とヒロは無言のまま外の夕陽を見つめていた。
疲れたのか山倉さんと渡辺さんは寄り添いながら眠っていた。二人の寝顔を見て少し笑みを浮かべる僕。その時ふと思い出したんだ。机の奥にしまわれていた手紙の存在に。そして、その手紙はポケットの中にしまわれていたことを。
無力と敗北感に包まれた僕はポケットから取り出した手紙の内容に悪意を感じた。
その内容は、真っ白の紙の中心にアドレスだけが書かれていた。
隣に立つヒロに手紙を見せると…
『これから家行ってもいいか?』
耳元で呟くヒロ。
『うん』
男の感とでも言うのか、怪しすぎる内容に女性を巻き込みたくは無かった。これ以上大切な人を傷つけられたくは無かった。
僕は、心の中で…ごめんね…と、降りるはずの駅で二人を起こさずに静かに別れを告げた。