『なんか蒼太変わったよな』
ポケットに手を入れながら歩くヒロ。徐に取り出したのはタバコだった。
『そうかな〜ってヒロ、タバコ吸うの?』
『ん?吸うよ』
今まで吸ってるところを見たことが無かったから思わず驚いてしまった。
美味そうにタバコを吸い込み真上に煙を吐くと『美奈がうるせーからな』と苦笑い。
『わかってるとは思うけど俺達、付き合ってるんだぜ?』
え?知らなかった…
『蒼太とかいってなんかそういうのわかってなさそうだからな〜』
と、笑いながら話すヒロは凄く楽しそうだった。
『な、何、知ってたよそんなこと』
ヒロは『ふっ』て鼻で笑い話を続けた。
『まぁいっか。じゃ〜晴也と真理が付き合ってたのは知ってた?』
…知らなかった。
僕のことを横目で見ながらまたしても鼻で笑うヒロ。
『そうだな〜何処から話すか〜。…俺はさ、この学校に入ったのが遅くてさ、俺、今18歳なんだよ』
『え?』
ヒロは去年の春からこの学校に通うことになった。同期で一緒だったのは渡辺さんと晴也だった。小牧さんも山倉さんも留年組で小牧さんは一昨年から、そして、山倉さんはさらに前から通学していた。
確かに山倉さん本人から四年目とは聞いていたが小牧さんも留年組とは思わなかった…
『真理なんかよ〜、見た目が子どもじゃん?』
笑ったりタバコを吸ったり忙しそうにするヒロ。そんなヒロに聞き耳を立てながら笑みを浮かべ頷いた。
『あいつさ、今年…15歳なんだよ…』
1…5歳…
さっきまで笑っていたヒロ。目頭を押さえながらタバコを握り締めるヒロは泣いていた。
『俺よりガキのくせによ〜、この学校のことすげ〜詳しくてよ、俺、かなり助けてもらってたんだよな〜』
今までずっと堪えていたのだろう。
渡辺さんや山倉さんの前で見せたくはなかったのだろう。僕と二人で気が緩んだのか、我慢していた感情と思い出が溢れ出し、空を見上げながら泣いていた。頼もしい男が辺りを気にせず泣いていた。
僕は山倉さんがいてくれたから色々と知ることができた。ヒロも最初は何も知らない人だったんだ。こうやって受け継がれていくんだな…
いつの間にか夕陽は沈み、僕達に気を使ってか照明を少し暗くしてくれたように感じた。もう少し…人が通らないことを願いながら静かに夜空を眺めていた…
支えてくれる人が周りにいなかったから…山倉さんは何年も同じことを繰り返していたのだ。そして、同じように苦しむ人が出ないためのシステム公開を初めて実行に移したのが山倉さんだった。
プライベートから全て監視されるこのシステムを妨害し、不安や不自由を少しでも無くすために自らが犠牲となり次々と進級させていた。今の二年生や三年生、卒業出来た生徒は皆山倉さんのお陰と言っても過言ではない。
そして、信頼出来る仲間が五人揃った時、初めてこの呪縛から解放され、自らの幸せのために歩み出したのだ。