毎時間、小太りの担任が授業を担当する少し変わった方針を取る学校。ただ教科書を読み、黒板も使わないまま授業が終わる。
授業ってこんなだったかな…
ほとんどの生徒が授業なんか聞いてなかった。もちろん私もふざけてはいないけど先生の話には興味なく、風に靡くカーテンをジッと見つめるか…前列に座るあの子達をみているか…だ。
そのまま今日の授業は終わり、掃除もしないでほとんどの生徒が帰ってしまった…ころ。
三人の女の子が机を移動させはじめていた。
『美奈、帰ろうぜ』
『…うん』
私はやはり気になってしょうがなかった。帰ろうとするヒロのシャツを掴んだままジッと見つめていた。
小牧に金髪ギャルに…黒髪の子。
三人は机を後ろに移動させながら楽しそうに掃除をしている。50人のクラスの机や椅子をたった三人で…
…なんで?
皆、帰ってしまったのに、たった三人で皆の分の掃除をする。たった三人で額に汗しながら重たい机を運んでる姿を見ていると…なんだろ、なんか変な感情が湧き上がる。
『おい、ほっとけよ。』
そう呟くヒロ。
『ほっとけるわけないでしょ!』
何故か大声を出す私…
少し驚いた表情をするヒロ。そして、三人も手を止めて私を見つめていた。
『なんでよ!なんでそんな良い子なのにこんな場所にいるのよ!』
私は大声を張り上げながらな三人に言い放った!
小牧は持っていた机を置き、ゆっくりと私に近づく。そして…
『私、お姉さんが本当は優しい人って知ってました。』
え?
『私も本当は怖いのです。でも、人を見る目はあると思ってます。』
………
『そこの連行されたおバカさんも同じです。』
と、少し笑みを浮かべる小牧。そんな小牧の笑顔に少し照れるヒロは、照れ隠しに頭を掻いて誤魔化していた。
『だから、泣かないでください。』
深々とお辞儀をする小牧。頭を上げると、今までにないくらいの笑顔を見せ三人の元へと戻って行った。
私は泣いていた。
こんな暖かい言葉をかけられたことはなかった。
そんな私の肩を触るヒロ。
『な、強敵だろ?』と、上着を脱ぎ、三人の元へと歩み寄る。そして、『うりゃ〜!ブルトーザー!』とふざけながら机をまとめてずらすヒロ。小牧に『やはりおバカさんですね』と突っ込まれていた。
そんな…楽しそうにする四人を見て優しい気持ちになった。涙を拭い鞄を置くと私も上着を脱ぎ『手伝ってやるか〜』とヒロを叩きながら掃除を始めた。
こうして私達は出会い、大切な時間を共にする友達、仲間となった。
一見クールに見える私。綺麗とは言われるが、怖いとも思われていた私は心を閉ざしていた。そんな私に本当は優しい人と言ってくれた小牧。とても心暖まる言葉だった。
そして、心の底から信頼出来る人を探していた小牧。誰にでもあんな憎まれ口を叩いていたわけではなかった。人の本性を見抜く力があるからこそ私やヒロに食ってかかっていたのだ。そして、人を見る目、それは淋しく辛い過去を持つ小牧だからこそ備わった才能でもあった。
私はこんなちっさな子どもに教わった。
…ありがとうございます…
心の底から感謝した。私みたいな人間でも優しいと言ってくれる人が居る。友達と思ってくれる人がいる。
もっと早く出逢いたかった…
ずっと一緒にいたかった…