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『あつい…』
小牧さんの葬儀から早一ヶ月。季節は春を忘れてしまったのか梅雨が来る前に夏を迎えていた。
小牧さんの死…から約一ヶ月。
皆の行いが良かったのか、先生の優しさからかはわからないけど、僕のグループは少しの間休みをもらっていた。
『は〜や〜く〜!』
休みの間、ずっと僕の家に居た山倉さん。人前で弱みを見せない彼女も、小牧さんの出来事にはさすがにまいっていた。時間が解決してくれると人は良く言うが、なんか無責任な感じがして…僕は好きではなかった。だが、時間が経つに連れ心の傷が癒えると言うのも事実であり、現に彼女も、こうやって外出するまでに回復していた。
ピョンピョンと飛び跳ねるように僕の前を歩く山倉さん。そんな彼女とデートをすることになったんだ。デートと言っても毎日僕の家で過ごす彼女。一部屋空いているってのもあり、彼女の部屋を作ってしまおうと買い物に向かっていた。
『蒼太〜遅いよ?』
久々の外出ってのもあり、子どものようにはしゃぐ彼女を見ると僕まで幸せな気持ちになる。そんなことを思いながら歩いていると…
カシャ!
何処から持ってきたのか、手にしていたのは小型のカメラ。一枚写真を撮ると満面の笑みを浮かべる山倉さん。
『たくさん思い出残そ〜』
明るく振る舞う山倉さんは、僕の手を掴むと引っ張るように先を急いだ。
見知らぬ街。こっちに来てから色々あり過ぎて地元の街と学校のある街しか知らない僕。初めて降りた街はどれを見ても新鮮だった。
地元や学校の街なんかよりさらに栄えた都会。平日にもかかわらず人の多さに驚いた。
『ちょ!ちょ〜』
信号が青になると一斉に動き出す人の波。オシャレな洋服や巨大なショッピングモール。映画館や美味しそうな料理屋が所狭しと並ぶ街並みは僕には眩し過ぎて場違いと思わせる。
そんな街並みと人の波を縫うように進む山倉さんは尊敬に値する。そんなことを思いながら必死に…はぐれないように…迷子にならないように彼女の後を付いてまわった。
『ここ!ここのお店美味しいの』
急に立ち止まり何かを指差す山倉さん。その先にはこれまたオシャレな…レストラン?
…パンケーキ
看板を見るとホットケーキの写真が…生クリームが山盛りだ…
『太るよ?』
僕は写真を見るなりすぐに口を滑らせた。はっ!と我に帰りガラス越しに映る山倉さんを見たら振り向くことが出来なくなった。
『す、すごく美味しそうなホットケーキだね』
と、ご機嫌取りをする自分が情けなく思えた瞬間だった…