ブランド物の洋服を見て回り、化粧品を見て回り、メガネ、そして、キャラクターショップ。
お昼を食べてから徐々に口数が少なくなる山倉さん。キャラクターショップ【Snaapy】に入ると、耳の長い犬の人形を手に持ちジッと見つめていた。
僕は、そんな彼女の横で…なんとなくそばにいた…
『これ…買っちゃお』
何かを決意したような表情を見せる山倉さん。手に持っていた人形を置き、近くにある大きな人形を手にした。
え!そっち!
山倉さんとさほど変わらない人形。
子どもを抱きかかえるように持つ彼女。ぐねぐねと芯のない人形はどこを持ってもへたってしまう。山倉さんの意思に反し、赤ちゃんのように身体を反らせ全身でだらけてしまう人形。そんな人形を持ち直す山倉さんは何故か真剣だった。
僕は『持つよ』と顔を肩に乗せるように担いだ。そのままレジに向かうと…
ピッ…2万5千円です(^_^)
2、2万…そりゃ店員も笑顔になるよね。
財布からお金を取り出し、手渡す山倉さん。
『プレゼント用の袋に入れてもらってもいいですか?』
数分して再び僕等の前に現れた人形は、赤いリボンで封がされた白い袋にしまわれていた。僕が品物を受け取り袋を担ぐと…誰もが思うだろう、赤い帽子に白いヒゲを付ければサンタクロースにしか見えない。
『ありがとう』と少し笑みを浮かべ顔を背ける山倉さん。再び僕を見つめると堪えきれずに笑い出してしまった。
僕は苦笑いするも素で笑う山倉さんを見て内心少しホッとする自分がいた。
『ふぉっふぉっふぉっ、このプレゼントは誰にあげようか』
なんてサンタクロースの真似事をしながら店を出ると外の通行人に笑われた。そして、後からついて来る山倉さんに少し距離をとられ、なんだか切ない気持ちになった。
カシャ!
そんな淋しげな僕を撮る山倉さん。
『ふふふっ、いこいこ』と後ろから荷物を押す山倉さんはなんだか楽しそうにも見えるが、どことなく無理してるようにも見えた。が、今はそのことに触れるのは辞めておこう。
少しでも気が紛れれば良いのかな…
そんなことを思い僕はされるがまま、彼女の言う通りゴールのない街を歩き回ることにした。
途中で気がついたんだ。
山倉さんは、よくショッピングに来ていたんだろうな。今日のルートも多分、この街に来たら必ず寄るお店なんだろうな。他愛の無い会話をし、美味しいスィーツを食べ、日が暮れるまで共に過ごす。
その相手は…
小牧真理。
そして…徐々に華やかだった街並みから住宅地へと変わりつつある景色。この大きなプレゼントは…
小牧さんに買ってあげたんだよね。
これから向かうのは…多分…小牧さんの住んでいた家なのだろう。
なんとなく読めてしまった。
本当に好きだった人。いなくなっても認めたくない…そんな思いからいつもと変わらない行動をとって自分の気持ちから逃げてしまっている山倉さん。そんな彼女に厳し過ぎる現実を伝えなくてはいけない役割は…やっぱり僕なのか。
そんな辛い役割から逃げている自分も…やっぱりね…