玄関ホールから廊下にかけてゆっくり歩くとまたしても綺麗な中庭が姿を現す。白い石が敷き詰められ、沢山の竹に囲まれた大きな石。その存在感むき出しの石の前には、小さく生けられた青い花が綺麗に咲いていた。
『この中庭はお嬢様がお造りになられたのです。とても静かなのに何処と無く力強さを感じさせる…お嬢様らしい雰囲気です』
僕も思っていた。静かな雰囲気のなかに力強く主張する大きな石。そんな存在感溢れた石よりも一際輝く小さな花は静かな世界も華やかにしていた。
まさに小牧さんそのものだった。
そして、この中庭の向かいにある部屋が小牧さんの部屋だった。
『それではごゆっくりお寛ぎくださいませ』
と、深々とお辞儀をするお婆さん。ゆっくりと頭を上げるとその場を後にした。
『わぁ〜』
小牧さんの部屋を見て思わず声を漏らす僕。いままでの雰囲気から和風の部屋なのかと勝手にイメージしていたのだが、入ってびっくり。淡いピンクの色使いで統一されたメルヘンチックな可愛らしい部屋。山倉さんが買ったSnaapyのぬいぐるみが所狭しと並んでいた。
『真理はね?凄くぬいぐるみが好きで可愛いのがあるとすぐに買っちゃうの』
小牧さんのベッドに腰掛けながら話す山倉さん。凄く優しい表情を浮かべながら話す彼女の言葉に僕は耳を傾けた。
『私が居ないとあれもこれも買っちゃって、ふふふっ…シズさんも困ってたんだって〜』
ゆっくりと立ち上がる山倉さん。ベッドに手を添えると…
『このベッドで一緒に寝たな〜…私の匂いが好きとか言って…暖かかったんだ〜』
一ヶ月経った今も引きずる山倉さん。
当たり前だよね…でも、前を向いて歩かないと…なんてことは言えるわけもなく無言で頷くことしかできなかった。
『ここに来ればいつでも逢えるんだよ』
買ってきたぬいぐるみを袋から取り出すとSnaapyのエリアに並べる彼女。
『真理?この子、好きなんでしょ?…いつもみたいに笑いなさいよね〜』
少し俯く彼女の背中が泣いていた。
僕も沢山のぬいぐるみを一つ一つ見つめ、ぬいぐるみに話しかけた。
『君達のご主人様はホントに大切にしてくれてたんだね。僕は…会ってそんなに付き合いは長くないけど、優しさとか人間性って言うのかな…すぐにわかったよ。この人は選ばれた人なんだって。もっと仲良くなりたくて、もっと色々知りたくて…親友のようになれる。一生仲間で居れると思っていたんだ。ずっと一緒にいれた君達が羨ましいな』
僕は笑みを浮かべ、ぬいぐるみの頭をワシワシと撫で回した。すると…
コンコン…
ドアをノックする音。僕は『はい』とドアを開けると白髪の男性が立っていた。そして、中庭には沢山の雹(ひょう)が降っていた。
『どうやら竜巻が発生するとのことです。この敷地内に居れば安全ですので安心してお寛ぎくださいませ』
竜巻…か…
『ここは大丈夫だよ』
目を擦りながら笑みを浮かべる山倉さん。
『…ちょっと真理に嫉妬しちゃった。えへへっ』
少し変顔をする山倉さん。と同時に電気が切れたんだ。外で何が起きているのかはわからない。だが今は山倉さんのそばに居てあげることしか出来なかった…