突如発生した竜巻は広範囲にわたり停電を引き起こした。小牧さんの屋敷は自家発電設備が整っており自動的に作動したが、辺りは暗闇に包まれていた。
このままでは帰るのは無理だろうと客間を用意してくれて急遽泊まることとなった…
『本当にご迷惑おかけします』
晩御飯まで用意してくれるお婆さんに頭を下げる山倉さん。僕も合わせるように頭を下げると、ニコッと微笑むお婆さん。『皆で食べた方が美味しいでしょ』と、暖かいご飯をよそってくれた。
家庭の味に飢えていた僕は沢山の料理が並ぶ食卓に喉を鳴らし夢中で頬張った。そんな僕を優しく見つめるお婆さんは『なんだか息子の小さい頃を思い出しますね』と笑いながら箸を進めた。
僕は家族で食卓を囲んだ記憶が無かった…母親といつも二人で食べる、暗く淋しい記憶しか無かった。それだけに真心のこもった料理と、賑やかな雰囲気がとても暖かく、ずっと昔から求めていた家庭の温もりを感じていた。
そんな僕とお婆さんの間で静かに食べる山倉さんもなんだか楽しそうで…家族のようにこの時間を過ごしていた。
楽しい時間はあっという間に過ぎて行くもので…
『お風呂も湧いておりますのでゆっくりと疲れをとってくださいね』
食器を片付けるお婆さん。
『シズさん、私も手伝います。蒼太、先にお風呂どうぞ』
お婆さんのお手伝いをする山倉さん。なんだか娘と言うより嫁と姑を見ているように思えてきた…
僕はお言葉に甘えて汗を流すことにした。
ほ〜
なんとなく想像はしていたが、やはり露天風呂。住宅地のど真ん中に位置する場所だから山や川と言った景色はないが…竹林に囲まれた露天風呂って…
どれだけ驚かされてもなお驚く小牧さんの家。泳ぎたくなるような広さのお風呂は高級旅館と温泉施設を合わせたような造りになっていた。雹が沢山降ったのだろう積もった雹がより一層雰囲気を演出していた。
そんな景色を眺めていると…
カラカラ…ペタペタ…
出入口から物音が。
誰か来る。
僕は、もしかしたら山倉さん?なんて思いながらタオルで前を隠すと、湯気の中から現れたのは…
『一緒に入ってもよろしいですか?』
白髪の男性の方だった。
僕は『あ、すみません先に入ってしまって』と…
『やっぱり一人より二人。大勢で入るお風呂は気持ちが良いですね』ゆっくりと湯船に浸かる叔父さんは心からお風呂を堪能していた。
そんな叔父さんに付き合うように温まっていると再び話し始めた…
『私はお嬢様がこ〜んな小さい頃からお世話をしていたのです。それはそれは可愛くて可愛くて孫見たいに可愛くて』
タオルで顔を拭う叔父さんはさらに話を続けた。
子どもの頃は良く虐められていたのです…
小牧家に対する妬みからくるものが大半を占めていた。大富豪の娘、憧れや羨み。徐々に嫉妬や差別など色々な感情が親ではなく娘の真理に向けられていたのだ…
そうすることで気を晴らしていたのでしょう。