お嬢様が小学生の頃でした…
『又一さん、シズさん、いってきま〜す』
頭の上で大きく手を振るお嬢様は、いつもと変わらず可愛らしい笑顔で学校へと向かうのです。両親共に仕事が忙しく、私とお世話役のシズさんでお嬢様をお世話していました。
誰にでも優しく、皆に笑顔を振りまく純粋なお嬢様。そんなお嬢様がある日、洋服を泥だらけにして帰ってきたのです。それが小学四年生くらいでした。
まあ子どもは汚すもの。友達と遊んでいて汚してしまったのでしょう。その時は軽い気持ちでいたのです。ですが…この日を境に少しづつお嬢様を孤立させてしまったのです。
日に日に洋服を汚して帰る頻度が増してきたのです。
お嬢様は『すみません、また汚してしまいました。洗濯は真理がしますので。ごめんなさい』と、頬に付いた泥を指で落としながら…やっぱりニコニコと笑みを浮かべるのです。
もちろんお嬢様に洗濯なんてさせるわけもなく使用人がやるのですが…やはり気になった私は使用人を使い調べてもらったのです。
その結果、お嬢様はイジメを受けていたのです。
玄関口から手を振るお嬢様。見えなくなると俯き学校に行こうか迷う素振りを見せていたのです。ご主人様、私達に心配かけたく無かったのでしょう…それでも学校に行くことを辞めなかったのです。あんなに小さいお嬢様が私達に気を使われる…それを知った時は涙が止まりませんでした。
そのことをご主人様にお話すると大変心配なされてました。学校の方に電話して少し見てもらえるようお願いしたのですが、それがさらにイジメを加速させてしまったのです。
HRの時間、先生がクラス全員にイジメがあることを伝えたのです。名前は出さなかったと言うが、イジメをしていた子からしてみれば密告ったのはアイツだ!と、さらにエスカレートしていくのは当然のことでした。
毎日のように汚れて帰るお嬢様。それでもなお笑顔を忘れないお嬢様。洋服や帽子、鞄も靴も…汚れてないのはお顔だけ。
『又一さん…シズさん。ごめんなさい』
毎日謝るお嬢様に私達は『お嬢様、何がありました?』とお嬢様、自らの口で言って欲しかったのです。心優しいお嬢様、そんなこと言えるはずがない。笑顔でこう言ったのです。
『仲良しの友達と泥んこに入って遊んじゃいました。学校が楽しくて夢中になってしまいました』
なんでそうまでして嘘をつく!誰がそうさせてるんだ!
私は世話役を忘れ、飛び出して行こうとしました。誰がどうやってどのようにしてイジメをしているのか全て知っているのですから。腑煮えくりかえりましたが、やはり女性は冷静に判断するのです。シズさんは本人が乗り越えなければならないこともあるのです…と。
シズさんはこの判断を今も後悔していると嘆いています。