どんなにイジメられても休もうとはしないお嬢様。
その理由は…
お嬢様がイジメられることにより他の子がイジメを受けないで済むから。
小学生の頃から続いたイジメは、元々はお嬢様のお友達がされていたのです。たまたま見てしまったお嬢様は仲良しだったお友達を見て見ぬ振りは出来なかったのです。
止めに入ったお嬢様。
良い子ぶってんじゃない!と一緒にイジメを受けるようになりました。いままでずっと同じクラスでけして仲が悪かったわけではないクラスメート。その日から、人が変わったように嫌がらせをしてきたのです。
雨の降る日は泥水をかけられ、いきなり後ろから押して転ばせる。晴れた日も同じことをされていたのです。お嬢様は毎日泣いていました。どれだけ汚されてもお顔だけ綺麗だったのは、お家の近くの公園で顔を洗い涙の跡を洗い流していたからなのです。
私物を悪戯されても髪の毛を切られても学校に行くのはお友達が可哀想だから。お嬢様が居なくなると、そのお友達がお嬢様の分までイジメられてしまうからなのです。
そして、一番の原因は小牧家の裕福な御家柄だったのです。嫉妬する大人が子どもの前で話しているのを聞いていた。素直な子ほど真に受け、イジメに繋がったのです。
お嬢様の性格からしてイジメにあうなんてことはまず無かったはずです。偶然が重り、日頃の鬱憤やストレスが溜まった子どもの矛先がお嬢様や気に入らない子に向けられてしまったのです。
『ごめんなさいね。お嬢様は本当に優しくて誰にでも好かれるお方だったのです。それを伝えたくて、長々とお話ししてしまいました』
僕はどう返したら良いかわからないでいた。
『年をとると話が長くなっていけません。先に上がりますね』
と、ゆっくり湯船からでるとペタペタと足を鳴らしながら風呂場を後にした。
何だか気が重い。
そんなことを思いながらもう少し湯船に浸かることにした。
………
どのくらいお風呂に入っていたのだろう。手がしわくちゃになっていた。脱衣所で身体を拭き、廊下に出るとそこにはハーフパンツにキャミソール姿の山倉さんが待っていた。
『ホント遅い!どこのお爺さんかと思っちゃった!』
よく見ると山倉さんの髪が少し濡れていた。先に入ったのは僕。その後に山倉さんが入ったのだろう。結構な長風呂な山倉さんが先に出ていると言うことは…どれだけ入っていたんだ?
僕は『ごめんなさい』と山倉さんに謝り、そのまま客間へと案内された。
『小牧さんのお家って本当に凄いんだね…って』
布団が敷かれた和風の部屋。どうみても旅館の一室だった。しかも何故か二組の布団が並んで敷いてある。
『…嫌なの?』
目を細め、睨むように見つめる山倉さん。そんな山倉さんに何も言えない自分が情けなかった。
『さっき白髪の叔父さんとお風呂で話してて長くなっちゃったんだ。ごめんね』
布団に寝そべりながら話す僕。そんな僕の真似をするように横になる山倉さん。『そうなんだ〜』とジッと見つめる彼女。そして『なんか旅行に来てるみたいだね』と少し照れるように笑い出した。
そんな山倉さんを見て思わず苦笑いすると、またしても目を細め口を尖らせ不機嫌そうに寝返りをうつ彼女。そのまま天井を見つめると…
『後で合わせたい人がいるの』
と、真顔で話してきたのだ。