小牧さんの部屋からさらに奥に進むと地下へと降りる階段があった。
ー関係者以外立入禁止ー
山倉さんは立入禁止の立札を横目に階段を降りて行く。
僕は『どこいくの?』と山倉さんに問いかけると、返ってきた答えは…
『大丈夫、許可はとってあるから』
少し長い階段。
地下に着くと長い廊下が顔をだす。沈黙が続くなか突き当たりに厳重に閉ざされた観音開きのドアがある。この部屋の為だけにある地下。施錠とコードナンバーを入力するという厳重なセキュリティシステムは期待と不安が入り混じる。
施錠を外しコードナンバーを入力すると自動で扉が開きだす。
するとそこには…
え?
僕は思わず自分の目を疑った。
だって、僕の目の前には死んだはずの小牧さんが座っているのだから!
『お金持ちの考えることは理解出来ない』
ボソッと呟く山倉さん。ゆっくりと部屋に入り、正座する小牧さんの前に腰を下ろしたのだ。そして…
『真理はね?死んでるの。……座敷童みたいだね』
僕も一歩づつ歩み寄ると、部屋中に装飾と言うより魔除けの札や文字の書かれた布で覆われた異様な世界。小牧さんを封じ込めているような感じがしてあまり居心地が良くなかった。
小牧さんは火葬されたはずでは…
お金持ちの考えることは理解出来ない…か…
正直驚いた。
驚いたけど、世の中お金があればなんでも出来るんだな。変に落ち着いている自分に驚いてしまうほど落ち着いていた。
山倉さんの横に腰掛ける僕は、そっと小牧さんの手に触れる。近くで見ると綺麗に化粧がされ、紫の着物が色白の肌をひときわ輝かせてみせた。そして、目を閉じたまま開くことのない小牧さんに僕は話しかけた。
『…もう会えないと思っていました。』
小牧さんの手に触れていた手に少しづつ力が入ると
『…なんでたろ。なんでか会えて嬉しいはずなのに…複雑な気持ち。どうしてこんなことになってるの?…楽になりたいよね。自由になりたいよね』
僕は無意識のうちに涙を流していた。
歴史?伝統?そんなことはどうでも良い!こんな窮屈な地下に閉じ込められたままじゃ僕達と再び出会うことなんて出来ないじゃないか。
早く生まれ変わって再び僕達と出会う。それが、僕達の願いなんだから!
だから…ここから連れ出してあげるね。
僕は小牧さんを担ぐと急いで部屋を出た。全力で廊下を走り抜け、階段を駆け上がり、外に飛び出すと、自然と門が開いた…
振り返ると深々とお辞儀する山倉さん。
こうなることがわかっていたのか話していたのかはわからない。だが、ここまで誰一人としてすれ違う者は居なかった。
僕達は門を潜ると走り去るように小牧さんの育った地から離れた。
竜巻が全ての雲を吹き飛ばしたのだろう。夜空いっぱいに輝く星がジッと僕達を見つめていた。
そして、第二の故郷、本当の娘のように接してくれた又一さんとシズさんとの別れとなった山倉さん。泣きたい気持ちを堪えながら走るのであった。