明け方には灰となった小牧さん。微かに残る焼けた匂いは一生忘れることは無いだろう。
最後まで見届けた山倉さんは空を見上げながら呟いた…
『これで自由になれたんだよね』
『…そうだね』
僕達は後ろ髪を引っ張られる思いで小牧さんにさよならを告げた。
僕達は遺骨を小牧家の門の近くにそっと置くと、そのまま始発の電車に向かった。やはり昨日の竜巻の影響で電車は止まっていた。改札口にはたくさんの野宿者が居た。
ここら辺はあまり被害という被害はなかった。が、下り方面が被害を受けたと駅のテレビに映されていた。映像をよく見るとなんだか見覚えのある繁華街。そこには地下室のメロディのお店が映っていた。
『もしかして!』
ハモるように驚いた僕達は急いで改札口から飛び出すと人混みを掻き分けるように外に出た。タクシー乗り場には長蛇の列。道が渋滞してるのか車のクラクションが鳴り響くロータリー。交通機関は完全麻痺していた。
僕達は顔を見合わせると勢い良く走り出した!
あの繁華街が被害を受けたと言うことは、学校も大変なことになってる!学校が被害を受けてるとかではなく、周辺がSクラスによって荒らされる。まさに無法地帯となるのは確実だ!
そんな時、強い力で僕の腕を掴まれた!
『山野様』
僕をそう読んだのは白髪の又一さんだった。
僕は、あっ!と思わず後退りした。そんな僕に…
『昨日はありがとう御座いました。お嬢様もさぞお喜びでしょう』
と、深々と頭を下げる又一さん。
『お急ぎでしたら一度、屋敷にお越しくださいませ。』
怒ってる訳ではなかった。殺されてもおかしくは無いと思っていた僕は山倉さんと目を合わせた。そんな山倉さんも目をまんまるにして又一さんを見つめた。
『ご主人様には私から伝えておきますので安心してくださいませ。…私やシズさんは山野様や綾乃様にはまた来ていただきたい。ただ、それだけなのです』
そんな優しく微笑む又一さんに勢い良く飛び付く山倉さん。そんな彼女は辺り構わず泣き出した。そんな彼女の頭を優しく撫でる又一さんは家族のように暖かく、自分の子どものように接した。
そのまま二人は腕を組みながら歩き出した。後ろから見たら普通の家族のように見える二人。そんな二人を見つめながら僕は思った。
間違いではなかったんだと…
人混みをスルスル縫うように歩く二人についていく僕。その時、再び誰かに腕を掴まれた!
『やっと見つけた〜』
振り返るとそこにはニヤニヤと笑みを浮かべる金髪の男性の姿。左耳のピアスが輝く危なそうな男が立っていた。そして僕に近づき耳元でさらに呟いた。
『君はどう見てもこっち側の人種だよね〜』
耳元で囁くように話す男は掴んだ腕にさらに力を入れる。そして…
『気に入らないな〜。あの女も同じ目に合わせちゃうっかな〜』
と、話終わると同時に僕を突き飛ばす男。そのまま笑い声だけ残し人混みに消えていった。
『蒼太〜、早く〜』
先を行く山倉さんの呼ぶ声。
僕は周りを見回すといくつかの視線を感じた。危なそうな気配を感じるも本性を表さないまま人混みに混ざるように消えていく。
そして、殺気漂う気配だけが僕にまとわりついていた…
その後、二時間かけてたどり着いた学校。辺りはひと気のない不気味な雰囲気が漂っていた。やはり竜巻の通り道となったのだろう校舎は、全てのガラスが吹き飛びカーテンがなびいていた。
そして…
グラウンドの真ん中に立つ一人の男性の姿。頭に包帯を巻いた男性は右の拳を強く握り締め、ジッと校舎を眺める背中が怒りに満ち溢れていた。
ゆっくりと僕達に向かってくるその男性は…
……晴也だった。