両手で隠すも着痩せするタイプなのか思った以上に胸が大きく、細いくびれ。脱衣所の光で少し影になっていてもその透きとおる色白のシルエットはとても綺麗だった。
『え…
僕は思わず声が出そうになると、慌てて口を抑えられた。
隠すための両手は僕の口にある…と言うことは…全てをさらけ出す山倉さんが目の前にいる。見てしまった僕は、鼻から赤い液体をたらす。
大きく開いた目、見つめ合い真っ赤な顔をする山倉さん。慌てて視線をそらした先は僕の下半身。さらに慌ててあたふたする山倉さんは面白かった。が、我に返った僕は、急いで両手で下半身を隠し背中を向けた。そして何故か蛇口をひねる。
数秒、沈黙が続きゆっくりと湯船に浸かる山倉さん。そのままお互いが背中を向け、蛇口から出る水の音を聞いてるフリをした。
でも、なんでこんなことするんだ。なんて思いながら蛇口を閉めると山倉さんから話し始めた。
『あ、頭は触られてないよね?』
『え?あ!』
『先生に』
僕は少し勘違いをした。先生にか…
話し方はいつもの山倉さんだ。
『うん…多分』
あまり覚えてはいなかった。でも、肩とかよく叩かれていたような気がしていた。
『なんで?』
ポチャン…ポチャン…
水滴が落ちて弾ける音だけが響く空間。沈黙が長く感じた。
『ミクロサイズの盗聴器が埋め込まれてるの』
山倉さんの表情はわからないけど、冗談を言ってるようなトーンではなかった。
この学校では、何歳であっても入学する時は一年生から始まるのが当たり前みたいだ。入学式と同時に盗聴器を付けられ、監視下に置かれる徹底管理体制。ミクロサイズとは言ったが実際の物体を見たわけではない。肉眼ではわからないので推測ではあるが盗聴器、盗聴ウイルス、気づいた時にはもう遅いということだ。転校してきて二年から入れたのは山倉さんの記憶の中では初めてだったみたいで、それだけに気になってしまうのもわからなくもない。
『て、言っても山倉さんだってまる一年しかいないのにそんなに転校生っているの?』
僕は疑ってる訳ではないが、山倉さんの記憶って言っても一年間くらいでは比べる幅が狭いのではと思いあえて聞いてみることにした。
『私は、四年目になるの』
『え?確か同い年…だったと思ってたけど…』
驚いた!山倉さんが留年してるとは思わなかった!決して頭は悪くない。どちらかといえば優秀の部類に入る。授業中の山倉さんを見てればわかることだ!でも…
『同い年よ。中学の途中から来てるの。』
少しホッとした。何歳からでも入れるって若くても頭が良ければ入れるってことか。
僕はそう解釈したが…
『山野君…そのことはあまり…』
少し小声になる山倉さん。またしても気まずい雰囲気になってしまった。
『あぁ…うぅ…ごめんね』
でも、なんとなくわかってきた。今の話を聞いててもわからない素振りを見せたり話題を変える場面がいくつか思いつく。盗聴されているからだったんだ。あえてそうすることで監視網を避けていた。
そして、お風呂に入って水に浸かることによって声が水に遮断されると山倉さんは体を張って教えてくれていたのだ。
この盗聴器のおかげで幾つかの謎が解けた。
お昼休みの先生の素早い行動と対処、トイレでの出来事。そして、どんなに小さな声でも先生は機敏に反応していた。
必要以上に設置されたカメラに盗聴器。何が目的で徹底されているのか…
と、同時にがっかりしたことがある。
それは、山倉さんだ。今日一日気遣ってくれたのも優しくしてくれたのも、僕を好きと言ってくれたことも、全てはこのことを僕に教えてくれるためにやったこと。
それはそれでさみしくもあった。
今は盗聴されてる云々よりもそっちの傷を癒して欲しい。そう思っていた…