引出しをあさり山倉さんでも着れそうな部屋着を探す。
ユニシロで買ったタオル地の服を見つけ手渡すと
『パンツだけでいい』
僕は、なんて子だ!と、持っていたパンツを手渡した。受け取ったと同時にお尻をこっちに向けながらゆっくりと履く山倉さん。
僕は『は〜』と溜息をついた…
気づくと外は暗く星一つない曇り空が窓から見える。
これは雨が降りそうだな…
なんてことを思いながらカーテンを閉め電気を付けた。
『蒼太の部屋って綺麗だね、ととと…』
足が通らないのか転びそうになる山倉さん。パンツを履くとやっぱりサイズが合わずぶかぶかな服を着た子どもに見える。腰紐を縛りどうにかずれ落ちるのを防ぐと『お腹空いた』とお腹を抱える。
僕は『と、とりあえずリビング行こ?』と部屋の電気を消し一緒に向かおうとする。と、山倉さんは何かを気にして動こうとしなかった。
あまり部屋を見られたくない僕は、山倉さんの手を掴み少し強引に連れ出した。
再びリビングに戻り山倉さんをソファーに座らせると何も言わずにキッチンに向かった。
『山倉さんは何が好きなの?』
と、カウンターキッチンから話しかけると返ってきた答えが…
『かつ丼』
か、かつ丼て…
僕は思った。この子はとんでもないお嬢様なのでは…。もしかしたら資産家かなにかのお嬢様でメイドや召使いがたくさんいたりするんじゃないの?
あまりのワガママっぷりに言葉を無くす。
『……かつ丼は素材がないから…お肉が好きなの?』
冷蔵庫の中を確認しながら再び聞いて見た。
『うな丼』
う、うな丼…
ワザとですか?ワザと困らせたいのですか?
僕は、それ以上山倉さんに聞くのを辞めた。幸い鳥肉と野菜があったので唐揚げとサラダを作ってみた。
ふとリビングを見ると山倉さんの姿が見当たらない。
ん〜…
僕はリビングに料理を運び廊下に向かう。だいたいの予想はできていた。多分、僕の部屋に居る。足音を立てず忍びのように近ずくと案の定、部屋のドアが開いていた。
気配を殺し暗闇の空間を覗くとそこには…
ベッドの上で飛び跳ねる山倉さんがいた…
何度か飛び跳ねてはジッと見つめ、背中から倒れては思った以上の反発力に跳ね返されて床に転がっている。
再びベッドに上ろうとするも僕の視線に気づいたのか何事も無かったかのように髪を撫で、何も言わずペタペタとリビングに向かった。
学校のイメージとはまるで別人な山倉さん。女の子って生き物はこうも変わるものなのかと頭を掻きながら思った。
『…楽しかった?』
あれこれ考えるのを辞めた僕は、素直に思ったことを話した。
『……まぁまぁ』
唐揚げを頬張りながら話す山倉さんはリスみたいにほっぺを膨らませていた。
僕は時間も気になり
『もう結構遅くなってきたけど駅まで送ろうか?シャツとかも乾いてると思うから。』
すでに20時を回っていた。
考えてみればあっという間だった。気づいたら夜になっていて…
山倉さんに振り回されていると思っていたけど、意外と僕自身が楽しんでいたのかもしれない。そう思った時、なんだか山倉さんが帰ってしまうのがとても寂しく思えてきた。
でも、ずっと一緒に居る訳にもいかなく、ご飯を食べたら送ってあげよう。そう思い少しゆっくりめに食べることにした。
『…蒼太?』
僕は、一瞬ドキッとした。
そう言えばさっきも僕のこと蒼太って呼んでた。
箸を咥えながら猫のように見つめる山倉さん。僕は、思わず生唾を飲んだ。
『ど、どうしたの?』
緊張のせいか少し声が裏返る。
『………おかわり』
僕は男の子!そういうのは女の子がするんじゃないのかな?
そう思ったものの『はいはい』と、お茶碗を受け取りキッチンに向かう。
『おおめで』
僕は苦笑いしながら思う。痩せの大食いでしたかと…
『はいどうぞ』とお茶碗を手渡すと何やらまだ何かありそうなので『どうしたの?もっと?』と聞いて見た。
少し、モジモジする山倉さん。
僕は次はもう驚かないぞ!なんでも言ってください!お姫様。
と、いい加減山倉さんのワガママにも慣れてきた頃だった…
『今日…』
少し俯き小声になる山倉さん。
『ん?』
僕は、聞き取れなくてもう一度聞いて見た。
『今日…泊まる』
その瞬間、頭の中が真っ白になった。
それと同時に激しく降る雨音が聞こえてきた…