超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
二刀流となったアルシュベイト=シャイニングソウルはアゴウ国民からの絶大な支持の元、パープルハート達に向かって歩み出す。両腕を広げた構えのままに無防備に全身を晒し、切っ先を横へ向けている。その一歩一歩が言い知れぬ威圧感と威容を持って足を竦ませた。
《来ないならば、俺から行こう!》
一歩踏み出して腰部ブースターが推進剤を噴射する。白銀の武神が長刀を振り上げ、叩きつける。パープルハート達はそれを避けた。大地が割れる。土埃が噴出した。まくれ上がった地面の中から無数の骸と破片と朽ちた長刀、突撃砲が舞い上がる。
“ただの一撃でコレ!? 冗談じゃないわよ!”
パープルハートとブラックハートは同じ事を考えていたのか、互いに冷や汗を流す。空中へと逃れた中に、エヌラスだけはシャイニングソウルと真っ向から向かい合っていた。互いに睨み合い、そしてシェアクリスタルを召喚する。
「
エヌラスが変神し、その手に、足に。今まで無かったプロセッサユニットが装着されていた。無機質で無骨で、その背には銀色の羽を広げている。ブーツから直接生えているようなすね当てに紫電が奔り、エヌラス=ブラッドソウルが空中を“蹴った”。
その衝撃波をシャイニングソウルは事も無げに切り払う。偃月刀を構えて歩み寄る。
戦禍の破壊神。鋼の鬼神。二人の刃が衝突して金属音が甲高く奏でられた。衝撃の余波が戦場を荒らしていく。
《チェェストォォオオオオ!》
「ォォアアアア!!」
偃月刀を二本。長刀二本。互いの得物で鎬を削った。アクセル・ストライクですら防ぎ、逆に蹴り飛ばされる。それを見てパープルハート達が加勢に走った。
上空からの切り下ろしを、長刀を振り上げて跳ね返す。背の反った長刀で大剣を受け止めて流すと地面に切っ先を埋めるそこへもう一方の長刀を振り下ろした。だが、偃月刀が投げ放たれて軌道を逸らされる。その隙にブラックハートが離脱。左右から同時にアイリスハートとパープルハートが斬りかかるが、一刀を投げる。回転しながら迫る長刀は丸鋸のように空気を裂きながらアイリスハートを弾き、パープルハートの奇襲をシャイニングソウルは片腕で受け止めた。
空いた手が掴むのは、朽ちた長刀。錆つき、刃は欠け、いつ砕けてもおかしくない風化した剣でパープルハートを殴りつける。そして砕け散ったそれを地面に突き刺して、ブラックハートとパープルシスターの二人の同時攻撃を両手で持った長刀一本で受け止めた。その場から一歩も退くことなく二人を跳ね飛ばす。
腰部ブースターを吹かして向かった先にはアイリスハートへ投げ放った長刀。シャイニングソウルはそれを掴むなり、上空から偃月刀を振り下ろすブラッドソウルと切り結ぶ。
《ぬるいッ!》
一喝してブラッドソウルを弾き飛ばした。
パープルハートがその下、死角から長剣を振り上げる。その切っ先が装甲に触れて――止められた。薄く表面装甲を掠めて止まる。目が合って、長刀が振り上げられた。
「お姉ちゃん!」
叱咤の声でその場から離脱する、上空ではM.P.B.L.にエネルギーを充填していたパープルシスターが引き金を引く。
《ふンッ!》
振り下ろそうとしていた長刀を叩きつける。照射されるビームランチャーと拮抗していたが、後退りそうになると腰部ブースターを点火して、あろうことかビームを斬り裂きながらシャイニングソウルが飛翔した。
長刀で跳ね除けられたM.P.B.L.がパープルシスターの手を離れ、その眼前には白銀の武神が一閃を放とうとしている。ブラッドソウルが偃月刀を多重召喚して放つ。それは全てパープルシスターを避けるようにしながらシャイニングソウルへと殺到した。その隙にブラックハートが持ち前の機動力で引き連れて離脱する。
七重の偃月刀がただの二振りで全て砕かれた。
――強い、などとは次元が違う。かすり傷一つ付けるのですら五人がかりでやっとだ。
《それで全力か。お前達の本気は》
「見くびらないでほしいわね、アルシュベイト。まだまだここからが本番よ」
《ならば準備体操は終わったな? こちらも気兼ねなく使わせてもらおうか》
「えっ、ちょ……」
言うなり、シャイニングソウルの長刀がオーラを纏い始める。
《不知火・錦》
剣圧によって放たれる衝撃が地面を裂き穿ちながら迫り、防ごうとしたブラックハートが吹き飛ぶ。ブラッドソウルが避けて鋼糸を長刀に巻きつけた。それにアイリスハートは蛇腹剣でシャイニングソウルの長刀を絡め取ったが、逆に引き寄せられて二人が仲良く地面に叩きつけられる。
「ミラージュダンス!」
「クリティカルエッジ!」
互いの攻撃の隙間を縫うように剣閃を奔らせて、シャイニングソウルを斬り抜ける。
――これなら!
振り向いた二人の前に、背負った突撃砲がグレネードランチャーを投射した。爆風に飲まれ、爆炎から転がり出た二人の変身が解除される。
「ネプテューヌ、ネプギア! この、……!」
ブラックハートが駆け出す。大剣と火花を散らし、二刀を束ねた一閃が大剣諸共にプロセッサユニットを破壊した。よろめいたそこへ鋼拳が打ち鳴らされて大きく吹っ飛んだブラックハートもまた、変身が解ける。
ブラッドソウルとアイリスハートの二人が駆け出す。長刀で振り払われ、吹き飛ぶがすぐさま態勢を立て直す。
「力を与えよ――“魔刃鍛造”!」
「これならどうよ!」
炎の属性を付与された蛇腹剣がシャイニングソウルに打ち据えられる。しかし、切り払われて再び放たれた不知火・錦によってアイリスハートが吹き飛び、変身が解除された。ブラッドソウルが偃月刀を多重召喚して投げ放ち、その中に自らも踊り出る。
アクセル・ストライクでシャイニングソウルの身体を蹴り飛ばし――だが、その手応えにブラッドソウルは訝しんだ。音が軽すぎる。その疑問に答えを出す前に長刀で薙ぎ払われて変神が解かれた。
地面に倒れこみ、だがすぐさま起き上がったエヌラスの手には撃鉄の付いた鞘と日本刀。
「“
かすり傷ひとつ付けることが出来るならば、倒せる。理解している。“それ”は、理解していたのだ――。
「“迅雷”!」
《その一撃を“待っていた”ぞ!》
だが、その更に上を行く一言がエヌラス達に突きつけられた。
シャイニングソウルが閃光の中に飲まれていく――だが、必殺の一刀は空しくも届かない。長刀を交差させて防がれた。それまでは良い。想定内だ。しかし、紫電を纏わせた一撃は機人であるシャイニングソウルの機能を大幅に制限するはずだった。そのはずだったが……。
《…………ふむ》
バチリ。紫電を鳴らしながら、シャイニングソウルが自らの拳を見つめていた。
あろうことか――“帯電”している。新鮮な感覚に心奪われているのか、唸っていた。
その不可解な現象を前に口を開けて絶句しているネプテューヌ達に拳を握りしめる。
《この俺が、何の意味もなくフォートクラブに電導装甲を採用するとでも思っていたのか?》
「――――」
《アレは“俺に使う”為の実験だ。どれほどの性能向上が測れるか、その為のな。いつまでも貴様の紫電に遅れを取るわけにはいくまい。鬼哭掌は最早俺に決定打とならんぞ、エヌラス》
“超電磁”抜刀術、“紫電”鬼哭掌、敗れたり――敗北は決定的なものとなったエヌラス達に、だがシャイニングソウルは手加減をしなかった。
右手の長刀を背負い、腰を落として構える。それにエヌラスは既視感を覚え、戦慄した。
《返礼する》
紫電が奔る。
《“
それは抜刀術・零式を模した一撃だった。
《“神雷”!》
片腕一本。その抜刀術がブラッドソウルに叩きつけられる。切っ先から放たれた光速の打ち下ろしは、正に神罰に等しい雷撃となって戦禍の破壊神に敗北を突きつけた。