超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
――エヌラスとネプテューヌ達はひとまず、周辺街道に蔓延る手短なモンスターの駆除に乗り出した。
「ねぇ、エヌラス」
「ん?」
「アダルトゲイムギョウ界のモンスターって、どんなのがいるの?」
「一般的なのはやっぱスライムとかそういうファンタジックな奴らだな。ほら、あんな感じの」
たどたどしい足取りで一歩進む度に身体を揺らして歩く細身の宇宙人を指差して、エヌラスはレイジングブルマキシカスタムで頭を撃ち抜く。緑色の血液を撒き散らしながら玩具のように吹き飛び、消滅した。
「……あれ、スライム?」
「いや? あっち」
そう言ってエヌラスが顎で差した先には、無数の牙が生えた粘液の塊が蠢いている。芋虫のように地面を這っていた。
「なんか私が想像してたスライムと違う!? もっとさ、こう、愛嬌があって肉まんみたいなフォルムで、かつマスコット的存在感のだと思ってたのに何アレ!?」
「スライム」
「ちがーう! あんなのスライムじゃないー! あんな海外で売ってるような芋虫ゼリー、私はスライムと認めないんだからねー!」
「ちなみに物理がほとんど無効化される」
「い、意外と強敵なんですね……あれ? でもそれならどうやってフォートクラブ達は撃破していたんですか?」
「火炎放射器で燃やしてた。塩ふっかけられたナメクジみたいに縮むんだよあいつら」
言うなり、自動式拳銃を召喚してスライムに一発。灼熱の魔弾が胴体に刺さり、苦悶の声をあげながらのたうち回ってスライムはやがて痙攣して動かなくなった。その身体がドロリと溶け始める。その臭いにつられて先ほどの宇宙人がフラフラと集まってきた。
「と、まぁこんな感じだ。動きは鈍いし、対処は簡単だ」
「いやいやいやいや!? 今私達の目の前で広がっている光景はそれどころじゃないですよ!?」
「うわーグロ……なんだろう、すごくバイオがハザードしたような光景……」
「で、あの群れに向かってこれをな?」
エヌラスの手には赤い凶悪な魔術紋様を輝かせる自動式拳銃。銃口を宇宙人の群れに向ける。
「こうだ」
意識を拳銃に集中させて引き金を引いた。雷管を叩かれて弾き出される弾丸は神性の炎を込められている。魔術的な小爆発を起こして群れの中心地に着弾すると、細身の宇宙人が一匹残らず炎に巻かれて死んでいった。
「ま、弱点多いし動きは緩慢だし数だけ多い文字通りの雑魚、ってわけだ。ただしとっ捕まると非常に面倒くさい」
「どうなるの?」
「薄い本」
「うん、分かった。それ以上聞きたくないや」
早々に何かを察したネプテューヌはそれ以上の言及を諦める。
「えぇ~? どうなるかわからないよぉ~。エヌラス、ちょっと捕まってみてくれるぅ~?」
「イヤに決まってんだろ! なんで俺なんだ!」
「ねぷちゃん~」
「え、ごめん。ぷるるんのお願いでも嫌かな」
「むぅ~……ぎあちゃ」
「ごめんなさい無理です」
「即答されたぁ~」
怒っているつもりなのか、ユノスダスで購入したヌイグルミを振り回したプルルートは、ユラユラと近づいてきた宇宙人――ミッド・グレイを殴りつけた。恐ろしく鈍い打撃音と共に複雑骨折しているが息の音があるのか、しばらく呻き声をあげながら悶えて、間もなく息絶える。
「ホントだぁ~。結構、簡単に壊れちゃうんだねぇ~」
「お、おう……」
「エヌラスさん、後ろ――!」
「ん?」
よそ見をしていたエヌラスの背後からミッド・グレイが手を伸ばしていた。その手を逆に手首から掴み、捻りながら足を掛けて空中で一回転させる。宙に浮いている華奢な体躯に二、三発の蹴りを叩き込むと、森の奥からゾロゾロと現れる群れを転倒させた。その群れの奥――緑色のモンスターを見たエヌラスが距離を取る。
「ネプテューヌ、ネプギア、プルルート。少し離れてろ」
「どうしたの?」
「ヤバイ奴がいる。近づくなよ」
「あの緑色のモンスターですよね? どうなるんですか」
「こうなる」
白銀の回転式拳銃を召喚すると、群れの中を複雑な軌跡を描きながら通過して奥にいる緑色のモンスターだけを射抜いた。眉間に風穴を開けたモンスターの身体がだんだんと膨れ上がり、爆発する。その規模たるや、生きた爆弾だ。小さなクレーターが出来上がっている。
「あっぶねぇ……」
「なんかすっごい身体に悪い色してたけど、あれもモンスター、なんだよね?」
「ああ。九龍アマルガムから不法投棄されている魔術的物質とかよくわからない化学物質で突然変異した歩く爆薬」
「それ、完ッ全にエヌラスの所為じゃない!?」
「ホバーマインってよく言われてるけどな」
「なんかちょっと意味合いが違うような……って、本当にホバー移動してる!?」
「それで近づくと爆発するから
「あと、モンスターが湧く原因って九龍アマルガムでしょ」
「……九分九厘」
「完全十割ですよ!」
ネプギアに怒られながらもモンスター達を退治していくエヌラスは格闘で相手を沈めていく。それを見ていたネプテューヌが、首を傾げていた。
「ねぇ、エヌラス。剣とか銃とか使ったほうが早いんじゃない?」
「ブン殴った方が気分がいい」
「うわぁ……」
「なんか、久々にそういうエヌラスさんの言葉聞いた気がします……」
「気のせいだろ、っと!」
コートの裾を翻して相手の死角から蹴り上げる。反対側のミッド・グレイを、その反動で振り上げた踵で顎を横薙ぎに蹴りつけ、跳躍するなり頭から地面に蹴り落とした。防御する間もない連撃を受けてミッド・グレイは頭から内容物を撒き散らして絶命する。
「こんな攻撃すんのキモイ奴以来だな」
「……思い出したくないです……」
「うわぁ……」
「わぁ~……なんで一息に殺っちゃうのぉ~?」
「ジワジワとなぶり殺しにしたところでこいつら相手じゃ楽しくない」
「そっかぁ~。じゃぁ~、ベッドの上ならぁ~」
「そういうのは日が沈んでからにしようなプルルート! な!? そういう話題にはまだちょっと早いから!」
「あ、エヌラスさん。後ろ――」
「へっ?」
エヌラスがホバーマインの自爆に巻き込まれて負傷したのと同時にノワールがユノスダスの城門をくぐる。
「……なんで向こうで爆発が起きてるのよ」
おおかたエヌラス辺りが大暴れでもしているのだろう。そう思って先を急ごうとしたノワールが人の気配に見上げると、そこでは大木の太い枝の上で眠っていたであろうムルフェストが金色の髪を垂らして寝転がっていた。よく落ちないものだと感心しながら、よく見れば網目状に広げた血液をハンモック代わりにしている。そこまでして寝ていたいのかと思ったが、相手は大あくびを漏らしていた。
「んも~……うっさいなぁ……人が静かにお昼寝してたのに~…………」
「ムルフェスト?」
「んー? だれー? ……だれだっけ?」
「……ノワールよ。エヌラスと一緒にいた」
「……だっけ? ごめん、私って人の名前覚えるの苦手でさぁー」
くぁ~と欠伸を挟んで寝ぼけ眼を擦る。その姿はまるで神格者、吸血鬼というよりは気ままな猫だ。神性の欠片もおくびにも出さないムルフェストではあるが、ドラグレイスを退けるほどの身体能力を持っていることを考えれば、ノワールは多少の不利を認めながらも自分に敗北はないと身構える。
「えーっと……で、ノワールだっけ? 私に何か用?」
「別にアナタに用はないわよ。ユウコからの頼みでユノスダス周辺のモンスター退治をするところなの」
「へー。楽しそう」
「楽しそうって……」
「私は楽しければ何でもいいの。寝起きの体操に一緒にさせてもらうね」
「……へ!?」
ハンモックから飛び降りてムルフェストは寝間着のドレスからラフなシャツとジーンズ姿へと服装を変えた。どうやらそれが普段の戦闘衣装らしい。準備体操で軽く身体を慣らしてから手短なモンスターの頭を掴むなり握りつぶした。
「そい」
ゴシャッ。
まるでトマトでも潰したかのようにドロリと赤い血液がムルフェストの手を汚していく。当人はそれを気にした風もなく放り捨てて次の獲物へ。
「そりゃそりゃー!」
ちぎっては投げ。ちぎっては投げ。文字通り、腕や足、首をねじ切って放り捨てる姿はやはり吸血鬼であるということを雄弁に語っていた。
「だ、大丈夫なのかしらコレ」
「あー大丈夫大丈夫。どうせこいつらすぐ消えるし。いくら殺しても罪には問われないし、むしろ感謝されるくらいだし? どっせい」
メゴシャッ。地面に頭から埋められて人型モンスターが絶命している。
奇妙な共同戦線を張ることになってしまったことに頭を悩ませながらも、ノワールはひとまずモンスター退治に専念することにした。