※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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episode106 財産は用法用量を守って使いましょう

 ――ホバーマインの爆発に巻き込まれていたエヌラスがフラフラと起き上がる。

 

「エヌラス、なんで後ろは不注意なの?」

「おとなしく剣とか使ったほうがいいと思います」

「舐めプして逆にやられるってどんな気持ち? ねぇねぇどんな気持ち?」

「(N)ネプテューヌを、(D)ど突き回して、(K)殺したい」

「ごめんなさい」

「お姉ちゃんが素で謝ってる!?」

「でも、エヌラスどうしちゃったの~。あんな不注意、いつもならしないのにぃ」

「そうですよね。エヌラスさん、後ろに目がついてるみたいに倒すのに……」

 土埃を払い落として、身体を慣らしながら調子を確かめていた。

 

「まぁ、そういう時もある」

 それが強がりだと問い詰めようとして――世界が暗転した。

 

「ねぷっ!? 急に暗くなった!」

「あ、あれ? さっきまであんなにお日様上ってたのに……」

「う~ん。どうしちゃったんだろぉ~」

「こんなことすんのは……ムルフェストか! あの野郎なに考えてやがる!」

 すぐ近くで戦闘音が聞こえてくる。金属の衝突音。ノワールがムルフェストと交戦しているのだと駆け出そうとした矢先、蟲の羽音が聞こえてきた。

 暗闇に浮かび上がる仮面を見て、エヌラスの飛び蹴りが突き刺さる。

 仮面と憤怒の形相が至近距離で火花を散らしていた。

 

「よぉ、ブサイク野郎」

「やァ☆元気にしてたかイ?」

「ご覧のとおりだ。くたばれ」

「そういうわけにはいかないサ」

「なんの用だ」

「ムルフェストが月を落とした。それだけ伝えに来たヨ」

「ありがとよ、死ね」

「じゃあネ~! 決着はキンジ塔でつけようじゃないカ! ソッチの方が盛り上がるだろう!」

 クロックサイコの目的は不明だが、エヌラスが夜空を見上げると、確かに月が動いていた。限界まで視覚強化を重ねて、その輪郭がゆっくりと大きくなっているのが見える。

 

「どうするの!」

「ひとまずノワールと合流だ! 走るぞ!」

 森を抜けて、エヌラス達がノワールの元へ辿り着いた頃には既に満身創痍だった。ムルフェストは身体を伸ばしている。

 

「やぁ、エヌラ――」

 挨拶抜きでアクセル・ストライクが叩き込まれた。その頬骨を強烈に打ちながら吹き飛ぶ吸血姫を二の次にしてノワール=ブラックハートを抱き上げる。

 

「ノワール、無事か?」

「大丈夫に見える……?」

「いや、重傷に見える。任せろ」

 ネプテューヌも駆け寄ってノワールの身を案じていた。

 

「だ、大丈夫ですかノワールさん! 今ヒール使うので、じっとしててください」

「ありがと、ネプギア」

「ノワール、いくらぼっちだからって一人で目立とうと頑張らなくたっていいんだよ?」

「ネプテューヌ……アナタ後で覚えときなさいよ……!」

 恨めしいノワールの言葉にネプテューヌが「うへぇ……」と嫌そうな顔をしている。

 

「イッタイなぁ、いきなり蹴り飛ばさなくてもいいじゃん」

「ウッセェ、吸血姫。何のつもりだ」

「なにって……太陽邪魔だったんだけど」

「元に戻せ」

「無理。だって今のでシェアエネルギー使っちゃったし」

「お前ホント計画性ねぇな……」

「楽観主義万歳」

「うっせぇわ」

「ふふん、そうまで言うならどうするつもり? 私と一戦交える? 腹ペコのワタシと、彼女達を庇って戦える?」

「以前のままだと思ってんじゃねぇぞ」

「なーんか、殺気立ってんねぇエヌラス。らしくなーい」

 周囲を見渡して、唸って首を傾げたムルフェストが手を叩いた。

 

「あー、わかった。アゴウとインタースカイ無くなっちゃってるから? ということは……そっかぁ、アルシュベイトとバルド・ギアの二人、同時にいなくなったのかぁ……うん、ラッキー。あの二人って機械だし不眠不休で動くもんだから相手するの面倒だったんだよね。儲けもの」

 ネプテューヌ達が睨んでも、ムルフェストは気にした風もなく笑っている。その無邪気さがエヌラスの神経を逆撫でていた。

 

「どうせ繰り返される歴史なら、嘆くこともないんじゃない? “次もある”んだし」

 ネプギアが眉を寄せる。

 

「次もあるって……どういうことですか」

「んー? 確かキミはあれだね。異次元の女神達だっけ? 別に知ったところでどうにもならないと思うから言っておくけど、エヌラス以外は覚えてるよ。アダルトゲイムギョウ界が滅亡と再生を繰り返していることくらい」

「……だから、なんだ」

「だからアルシュベイトもバルド・ギアも死んだって悲しむことはないって言ってるの。キミの為でもあるんだよ?」

「だから、どうした!」

「そんな怒らなくてもいいでしょ、エヌラス。いつもと違うのは彼女達がいることくらいかな。まぁどうせ全部無駄だろうし、そんなんだったら今を楽しんだ方が断然いいじゃん?」

 エヌラスの倭刀とムルフェストの十字剣が火花を散らした。

 

「エヌラス。無駄なんだよ、全部。キミがどれだけ頑張って、諦めなくても、大いなる“C”には勝てない」

「だからといって諦めるわけにはいかねぇんだよ……!」

「……この生存競争、なんて言うか知ってる? “聖戦(Crusade)”だよ。ワタシさ、不思議に思ってるんだよね――なんで“キミだけ覚えてない”の?」

「俺が、知るかよ!」

「そうだよね、知るわけないか。知ってそうな人間は、キミが殺しちゃったし」

 距離を離したムルフェストに二挺拳銃が火を噴いた。だが投擲された十字剣と衝突して相殺される。

 

「そして歴史は“(ゼロ)”へと至る、か――原点回帰、全ては輪廻の導きで。なんて、これは大魔導師の受け売りだけど」

「それで、どうする。こっちは五人だ」

「さすがのワタシも馬鹿じゃないし、一旦引かせてもらうよ。腹ペコとは言ったけど戦えそうにないくらいお腹空いたから」

 ムルフェストが跳躍した先――ユノスダス。完全非戦闘区域。

 

「というわけでご飯食べてくるね! 戦闘行為は禁止だもんねー、アッカンベー!」

「ハンティングホラー!」

「させるか! ブルース・インパクト!」

 足から放出される魔力の砲撃による薙ぎ払いがエヌラス達の前を横切る。間一髪で避けたが、ムルフェストとは大きく離されてしまった。そうしている間にもモンスターの群れが集まってくる。

 

「お前達は変身してムルフェストを追ってくれ」

「エヌラスは!?」

「仕事だ。今日の晩飯代ぐらいは自分で稼ぐ」

「たまには甲斐性あるところ見せてよね!」

「うっせぇ!」

 ネプテューヌ達が次々と変身してムルフェストの後を追う。

 残されたエヌラスはその姿が見えなくなったところで肩を落とした。

 

「……くそ、胸糞悪ぃ」

 背後へ向き直り、変神する。夜の太陽、月明かりに照らされて活発化したモンスターの群れにエヌラス=ブラッドソウルは右の掌に灼熱の光球を生み出す。白い闇――渦巻くのは“無限熱量”を封じ込めた結界だ。

 

「ユノスダスでぶっぱさなきゃ文句はねぇんだろぉ、ユウコッ!」

 闇すら飲み込む白い闇、ホワイトホールが森林地帯を包み込む。その内部に入り込んだ異物は一つ残らず燃え尽きた。銀鍵守護器官によって生み出される魔力は結界の内部で無尽蔵に膨れ上がる――やがて、その限界に達する時に収縮される。

 

「シャイニング・インッパクトォォォッ!!!」

 忌まわしい記憶。九龍アマルガムを焼滅させた記憶が蘇った。

 ――生身の腕ではなく機械の腕が滅ぼし尽くした焦土の上で、大魔導師だけが立っていた。ミスカトル大時計塔だけが残った。

 

「――昇華っ!」

 訪れる静寂。何事もなかったかのように夜風が吹く。

 何も残らなかった。何もなかった。自分の放った一撃が、何もかも消し飛ばしたのだ。大魔導師と出会う以前より使っていた究極の破滅をもたらす必滅呪法。

 乾いた風が胸を締め付ける。この荒野、焦土を駆け抜けた鋼鉄の好敵手(せんゆう)は、もういないのだ――。

 

 

「こらー、待ちなさいムルフェスト!」

「なに、一緒にご飯?」

「違うわよ! っていうかなんでそうなるのよ!」

 空中で切り結ぶ二人が弾かれるように吹き飛び、ブラックハートが前に立ち塞がる。

 

「なんでこんなことになってるの、ノワール?」

「ムルフェストが「楽しそう」の一言でこんなことになってるのよ」

「それで流石に月を落とすのはどうかと……」

「そんなことしてどうするつもりなのかしら、ムルフェスト」

「知らないわよ!」

 パープルハートが後を追い、跳躍したムルフェストを迎撃した。

 

「なんでこんな三日で世界を救う緑色の勇者の伝説みたいなことさせるのよ!」

「私が純粋に楽しそうと思ったからさ!」

「はた迷惑にもほどがあるわよ!?」

「自分良ければ全て良し! 論破!」

「それには同意するわ」

「ネプテューヌ?」

「ゲフンゲフン……と、とにかく月の落下を止めるわよ」

 どうやって、とまでは解決策が思い浮かばない。説得しても恐らく無駄に終わるであろう。

 

「月を落としたら貴方も死ぬのよ、分かってる?」

「え?」

「え? じゃなくて!」

「あー、ごめん。それは考えてなかった、いや別に世界が滅ぶならいいかなーって」

「このアッパラパー! どこまでおめでたい頭してるのよ!」

 事態は言及すればするほどに最悪な方向へと転がっているようだ。

 

「さっきも言ったと思うけど、アレ落とすのにシェアエネルギー使っちゃったし、回復しないと止められそうにないんだよね」

「……ねぇ、私もしかして物凄く嫌な予感がするんだけど」

「奇遇ね、ねぷちゃん。あたしもよ」

「止めるつもりならワタシしか出来ないし、ぶっ壊すつもりならどうぞご自由に」

 どうやら本当に後先考えない行動だったらしい。それも「まぁ多分どうにかなるんじゃね?」という程度の問題。そんな気軽さで月を落とされてもネプテューヌ達にはどうしようもない。

 

「まぁまぁ落ち着きたまえよ女神達。ほら、素数を数えて落ち着いたら?」

「そんな暇ないわよ! アナタのせいで偉いことになってるんだから!」

「素数って1からだったかしら」

「お姉ちゃん、相手しなくてもいいと思います……」

 城壁前でネプテューヌ達が先回りに成功してムルフェストが立ち止まった。

 

「…………月くらいぶっ壊してくれるでしょ?」

「くらい、の範疇がぶっ飛びすぎでしょ! 非常識にも程があるわ!」

「そうですよ! ただでさえ世界の崩壊が進んでるのにこんなこと、絶対に許しませんからね!」

「えー、なんでそんな怒るの……」

「フォートクラブ生産工場の件といい、アナタって他人の迷惑考えられないの!?」

「そんなもん考えてたら楽しい人生送れないし。ワタシが楽しければ月のひとつやふたつ」

「楽観主義もここまでくるとただの迷惑ね……」

「頭痛くなってきたわ……」

 これ(ムルフェスト)の相手をしていたドラグレイスが可哀想に思えてならない。

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