超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
パープルハートの背中に泡立てたスポンジを当て、洗っていく。小刻みに震える肩が、笑いをこらえているのだと分かった。こうした裸の付き合いが無いわけではなかったが、こうして照明の下で観察すればするほどに、その肌のハリや美しさが女神だと納得させる――変身前はともかく。
そんな背中を洗っているうちに、パープルハートは手を掴んで引き寄せる。
「……おい」
「前も。……いいでしょ?」
「自分で洗えよ」
「洗ってほしいのよ」
「嫌だと言ったら?」
「これでも、嫌かしら?」
そう言いながらエヌラスの手を胸に当てて、悪戯っぽく微笑む。ラインに沿ってスポンジでなぞっていくと小さく声を漏らした。
「乗り気じゃないのね」
「まぁ、な……でも洗ってほしいんだろ?」
「ん……もう、くすぐったいわ」
言われた通りにスポンジでパープルハートの身体を洗っていく。胸を下から持ち上げて外側から内側に向けて手を滑らせる。
胸だけでなく全体的なスタイルのバランスが整っており、腕を持ち上げて脇から洗っていくと気恥ずかしさからかパープルハートが顔を背けた。
「なんだか、恥ずかしいわ」
「なんでだよ。裸はいいのに」
「だって普段見られてないところ見られるって……恥ずかしくない?」
「いや、だから裸……」
「裸なんて服の上から見られてるじゃない」
「とんでもねぇこと言ってんなこの女神。いいからジッとしてろよ」
腕を伸ばして隅々まで洗うエヌラスの手つきを見て、パープルハートが疑問符を浮かべる。
「ねぇ、エヌラス。貴方なんだか手慣れてない?」
「……そうか?」
「ええ。もう少し抵抗あったり、手間取りそうなのに」
「スピカとカルネの身体ぶっ壊れた時に誰が直すと思ってやがる。全身解体して一から作り直してんだぞ」
「そ、そうだったのね。作業風景見たら猟奇殺人の現場みたいだわ」
「よく言われる。雇ったばかりのメイドが間違って通報して騒ぎになったこともあったな」
「その時はどうしたの?」
「片端から黙らせた」
現在は予備の身体を用意している為、そうそう手ひどく壊れない限りは自分たちで治すようにしているらしい。だが、それとこれとでは扱いに差がある。
「それだけ?」
「なにがだよ」
「本当にそれだけで、私の身体を洗うのにこんなに慣れた手つきで出来るものなの?」
「…………」
太ももから膝、内股にまで手を滑り込ませるとパープルハートが足を閉じた。それに構わず手を滑り込ませていくと熱い吐息が漏れる。
「……妹がな、よく駄々こねたんだよ。「兄さまと一緒のお風呂じゃないと嫌だ」なんて言って」
「……ごめんなさい。辛いこと思い出させて」
「いいさ、気にすんなよ。今のお前は似ても似つかねぇ」
変身を解除したネプテューヌ=パープルハートが申し訳無さそうな顔をしていたが、エヌラスはそれに笑って返すと小さな身体をそのまま撫で始めた。
「アイツはよく、俺にくっついてたな。飯も風呂も、寝る時もずっと一緒だった。俺が大魔導師に弟子入りしてからはいっつも機嫌悪そうにしてたっけな。「兄さまは修行ばかりでわたしを見てくれない」なんて喧嘩したこともある」
「……ん? お風呂も、寝る時も? じゃあもしかして兄妹でアレコレしちゃってたの?」
「ああ」
「そこ平然と答えちゃうところ!?」
「お前は本当に変身前と後じゃ別人だな……」
「どっちのわたしが好み?」
「どっちも」
「――――――」
「なんだよ」
平然と応えるエヌラスに、ネプテューヌが笑顔で固まっている。
「ど、どの辺が? ははー、わたしは知ってるぞぉ。エヌラスがその場しのぎで適当に答えてるなんてまるっとお見通しだよー!」
「変身前はやかましいところはあるが、無邪気なところだな。悪気はないんだろうが、ズケズケ言うところはちょっと傷だが、もう慣れた。変身後はそうだな……ま、落ち着いた物腰と凛とした雰囲気と抜群のスタイル。背中預けるくらいには頼りにしてる」
「…………」
「なんで黙るんだよ……」
「だ、だってそんな風に言われるなんて思ってなかったもん……ズルいよエヌラス。そ、そんなに言われたらわたしだって言い返さないといけないじゃん?」
「別にいい。俺なんて戦闘能力以外クソみてぇな奴だからな」
「確かにそうかもしんないけど、それだけじゃないよ」
「テメェ全肯定かよ!?」
自分で言っておきながらちょっと泣きたくなった。だが、ネプテューヌは身体を反転させてエヌラスの首に手を回して笑顔を見せる。その頬が紅いのは、浴場の熱気だろうか。
「ユウコが言ってた。誰かを守る時のエヌラスは、信頼してるって。わたしだけじゃないよ。初めて会った時、バルド・ギアと戦ったじゃん? あの時さ、わたしごと斬ってたら倒せてたはずなのにそうしなかったよね」
「……手元が狂っただけだ」
「そんなはずないよ。……そんな嘘、言わなくてもわかるもん。他にも、フォートクラブだっけ? あれがユノスダスに入ってきた時だってあんなに傷だらけになりながら、それでも守ろうとしてたから」
エヌラスの身体には無数の傷跡が薄っすらと残っている。それを自分の未熟だと言うが、違うとネプテューヌは断言して首を横に振った。無傷の勝利も、無血の勝利も得たことがない。いつだって傷だらけでボロボロになりながら、それでも立ち向かってきた。
「ネプギアがクロックサイコに攫われた時も、邪神がわたし達の前に出てきた時も、エヌラスはいつも守ってくれたからさ。ちゃんと見てるし覚えてるんだから」
「なんだ、てっきり忘れてんのかと思った」
「もう――置いて行かないでよ? 今度は最後まで、ずっと一緒だから」
「……流すぞ」
「水に流さないでちゃんと聞いてってば! お気楽至上主義の享楽主義者であるこのネプテューヌ様が百年に一度あるかないかのシリアスな台詞なんだから、って冷たい! やめ、それ水だから! シャワーやめて、風邪引いちゃうからー!」
「うっせぇバーカ! 馬鹿は風邪引かねぇって相場が決まってんだよ!」
「なにをー、バカって言った方がバカなんだからねバカー!」
「なんだとバーカ! 冷てぇだろうが! こっち向けんな!」
「先にやったのはエヌラスの方でしょ! お返しだよー!」
冷水を流すシャワーの頭を向け合いながら浴びせていたが、ネプテューヌに奪われたエヌラスが咄嗟に奪い返した。その際にしっかりと熱湯側に全開でツマミを捻っておく。
「あっちゃぁあああーーー!!!」
「ザマァみやがれ」
「もー! 照れ隠しにしたっていくら何でもやりすぎだと思うんだわたし! ノワールに負けず劣らずのツンデレさんめ!」
「アイツほどツンデレじゃねぇだろ俺!」
――アナタ達、人のことツンデレとか言わないでよ!
「聞こえてんのかよ!?」
脱衣場から人の気配がして、エヌラスが振り向くとそこにはプルルート、ネプギア、ノワールがバスタオルを巻いている。
「いつまでお風呂でイチャついてるつもりよ、もう!」
「そうだよ~。二人だけでズルいよぉ、ねぷちゃん」
「待ちきれなくなって、来ちゃいました……」
「なんでみんなバスタオル巻いてるの?」
「アナタと一緒にしないでよ、タオルも巻かずによく入れるわね」
「だって今更隠すような仲でもないじゃん。仲間なんだし」
「仲間の定義、ちょっと広すぎない?」
「んー、じゃあ恋人?」
「もしそうなら、エヌラスは四股だねぇ~」
「やめろ、今ちょっとその事実を再認識して頭抱えてる」
「ネプギアとわたしの二人で姉妹丼、どう!?」
「胸焼けしそうだ」
「お、お姉ちゃん! そういうのはノワールさん達がいる前で言わないでよ!」
「ん? じゃあ、エヌラスと二人きりだったらいいの?」
「えっ!?」
みるみるうちに顔が真っ赤になったネプギアがエヌラスとネプテューヌを見比べて、小さく頷いた。
「……いい、かも……」
「じゃあエヌラス、今夜は姉妹丼」
「いらんわ!」
全力で拒否。