超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
人狼局はデモンスレイブユニットの捜索。アサイラムメンバーは引き続き避難誘導と血の化け物の捜索に当てて、エヌラス達はテロリスト達の制圧に当たった。スピカとカルネの二人は別行動で暴れさせているものの、焼け石に水。いちいち被害など気にしていたら一向に終わらない。
召喚陣の錬成だけはなんとしても阻止しなくてはならなかった。だが、魔法陣というのは全て描いて完成するもの。最悪、一箇所だけでも破壊してしまえばその効果は削がれる。
「うし、というわけで俺達は引き続き反抗勢力どもを皆殺しだ」
「いや私達そこまでするつもりは……」
「もうちょっとこう全年齢な方向で解決できませんか?」
「はっはっは」
笑って誤魔化されてネプギアは全年齢の方向では解決できないことを悟った。
九龍アマルガムの教会から三手に別れて行動を開始する。ボロのタクシーに乗り込むなりロメロはアクセルを踏んで去っていった。ブシドーとバトラーの二人もまだ避難の済んでいない区画に向けて歩き出す。
「エヌラス」
「ん? なんだよ、クイーン」
「先ほどの血の化け物ですが、本当に貴方ではないのですね?」
「俺がそんなことをしでかす理由がない。そんだけだ。それよりもサポートしっかり頼むぜ。お前の取り柄なんてそれくらいだからな。後、事後処理」
「ええ、貴方のオフィスにたんまりと送りつけてやりますわよ」
そんな憎まれ口を叩きながら、エヌラス達は九龍アマルガム制圧作戦へと乗り出した。
――聖騎士。そう呼ばれる悪魔憑き対策専門の機体は、二輪装甲車への変形機構がある。その為、機動力は中々なものだが生産コストを考えると高価な点は否めない。武装は携行型プラズマガン。レーザーブレード。ミサイル六門。市街地でも無理なく性能を発揮できる戦車として設計された機体は、軍事国家アゴウの全面協力によって完成した。当然ながら並の機関銃が通用するはずもなく……。
「うわぁぁぁーー!!」
形骸化した警察機構も流石にこの事態には重い腰を上げたのか、総力を挙げている。だがしかし、凶悪犯罪を前に強化された武器も、聖騎士の重装甲にはかすり傷が精々だった。同盟関係にあるマフィア達が構えた粗悪な銃器で蜂の巣にしていく。
その様子を高層ビルの屋上から見下ろすネプギアが口を押さえた。
「……酷い」
「止められたんじゃないの?」
「仮に止めたとして、仲間を呼ばれて囲まれるだけだ」
「じゃあどうするんですか」
「仲間を呼ばれる前に潰す。聖騎士を一体ずつ、迅速にかつ確実に仕留める」
「うわぁ、凄い短絡的……」
「コックピットの位置は、ミサイルの発射口が見えるな? あそこの中央だ。横からだと機体中央部付近。それは俺がどうにかするとして、だ。他の戦闘員は任せてもいいな」
「ええ、勿論よ」
「相手は殺す気で来るだろうが、ただの人間だ。取るに足らないだろうし、遅れを取ることもないだろ」
見たところ、随伴歩兵とも呼ぶべき戦闘員はスーツ姿にトンプソン機関銃を持っている。顔は覆面で隠しており、素顔は定かではない。敵である以上は情けをかけるつもりもなかった。
高層ビルから降下して、エヌラスは変神する。着地点には――聖騎士。偃月刀を逆手に構えて突き立てると、それはすんなりと装甲を貫通した。
「!? 国王!?」
「よぉ、反抗勢力共。鬼のいぬ間に何とやら、ってか?」
トンプソン機関銃を向けるも、それらはすぐに真っ二つにされる。続けて着地したのは変身したネプテューヌ、ノワール、ネプギア、プルルート。続けざまに振るわれた一撃で敢えなく気絶した。聖騎士も搭乗者が息絶えたのか、活動を停止する。
「うし、まずは一体だ。この調子で行けば人的被害は最小限に出来そうだな」
ブラッドソウルが首を鳴らして偃月刀を担ぐ。黒髪に赤のメッシュが入った髪をかき上げた。
「呆気無いわね。もうちょっと手応えあると思ってたのに」
「それなら、戦闘用の自動人形でも敵に回すか? ものによっては手強いぜ」
「程々にお願いするわ」
「それは敵に言ってくれ。俺に言われても手加減できねぇぞ」
そう言いながら整備用のハッチを開き、操作し始める。
「何をしてるのよ」
「ん? こいつの稼動記録のデータを確認しようと思ってな。ネプギア」
「はい。なんですか?」
「Nギアを繋いでくれ。多分、それでデータがとれるはずだ」
「わかりました」
ネプギアがケーブルを繋ぎ、それからすぐに目的のデータのダウンロードとインストールが終わった。
そのデータから、生産工場と移動ルート、通信記録をまとめてクイーンに送信する。
「ねぇー、エヌラス。別にワタシいなくてもよくなーい? ほら、なんか女神さん達十分強いしさ」
「じゃあお前なにすんだよ」
「えっとー。吸血?」
「んじゃ、血の化け物を探知してくれ。嗅ぎ分けられるだろ、お前なら」
「人を犬みたいに使う気? だニャン」
「取ってつけたようなネコ属性!?」
「まぁ、待ってて。すぐ探すから」
すんすん、と鼻を鳴らすもムルフェストは顔をしかめた。
「……臭いが混ざりすぎててワカンナイ」
「この役立たずめ」
「しょうがないでしょうが! だって霊薬とか蒸気とか排気ガスとか血の臭いに混じっててついでに言えばなんかクスリっぽい臭いするんだもん!」
「確かにね。九龍アマルガムって不思議とゴミっぽい臭いはしないのよね。スラムみたいな国なのに」
「それどころか甘い匂いすらするわよね」
「まかり間違っても危ないクスリじゃないでしょ」
「何言ってんだ、危険じゃない場所なんて今更ねぇよ」
ブラッドソウルのいうことは尤もで――現在、ブシドーとバトラーが避難誘導を行っている区画に聖騎士達が進軍していた。
「――エヌラスさん! クイーンさんから返信です。血の化け物らしき相手をアサイラムのメンバーが発見したみたいです」
「場所は?」
「えっと、私達が今……ここだから……」
反応があった場所をマーカーで印されている。それに、ムルフェストが臭いを嗅ぎ分けたのか方角を指し示した。
「んー、あっち! なんかヤバゲな魔力の臭いがプンプンする!」
「今更かよこのアッパラパー!」
「酷いよぉ……えぐえぐ」
「結構打たれ弱いのね、ムルフェストって」
しかし、そんな間の抜けた相手でも自分たちに引けをとらない実力があることは身を持って知っている。それが今、こうして協力しているだけでもありがたい話だ。
「でも、エヌラス。あの血の化け物がなんだっていうの? 貴方が過去に起こした事件となにか関係が」
「……アレは、俺が起こした事件だ。だから、俺以外の誰かができるはずがねぇんだよ」
「だけど現に起きてるじゃない」
「だから、妙なんだよ。それに――」
「それに?」
「あのドレス。妹が着てた服に似てるってのが気に食わん」
静かに闘志を燃やすブラッドソウルの鬼気迫る表情に、パープルハートが固唾を飲み込む。その頭をアイリスハートが撫でた。
「なんだよ」
「そんな怖い顔してたらダメよ? もっと犬らしくそそる顔してないと」
「犬呼ばわりすんじゃねぇ」
「駄犬」
「メス犬」
「あら、生意気にもアタシに口ごたえ」
「俺に喧嘩売ってんだな?」
それとこれとは別問題。口を開けばすぐに一触即発の二人を見て、ため息が漏れる。
「なんでエヌラスとぷるるんって、変身するとギスギスするのよ……」
「でもあれは喧嘩というより、じゃれ合ってる感じじゃない?」
「そうです、ね……?」
「喧嘩するほどなんとやらー」
ともあれ、血の化け物がまた消えないうちにブラッドソウル達は移動を始めた。その途中で聖騎士と遭遇したが、難なく切り抜ける。