※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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episode121 人を呪わば穴二つ。なければ掘ればいいじゃない

 ドラグレイスとブラッドソウルの剣が衝突する度に路面がひび割れ、周囲のテロリスト達がその余波で吹き飛ばされてゆく。

 機関銃の連射も、上空を自在に舞う女神たちには照準が合わずに見当違いの方向へ向かって飛んで行く。聖騎士の装甲も悪魔憑きを相手にすることを専門にしているだけあって頑強だが、ブラックハートの敵ではない。背面ミサイルポッドが開かれる。だが、その発射口から不規則な軌道を描くミサイルを上手く誘導してパープルシスターが迎撃した。

 

「よし、今です!」

 左右からアイリスハートとパープルハートが切り込み、脚部が切断された聖騎士はその場で前のめりに倒れる。その上をブラッドソウルが通過して、着地すると倒れたばかりの聖騎士をアクセル・ストライクで蹴り飛ばした。

 

「あぁ、中の人!?」

「中の人などいねぇ!」

 断言するが、中に人が入っている。

 

「ふんっ!」

「中の人ぉーー!?」

 ドラグレイスが聖騎士の胴体を真っ二つにして猛進。エヌラス以外眼中になかったのか、スピカとカルネの援護攻撃も適当に受け流していた。

 

「退け、自動人形ども!」

 カルネの朱い太刀を弾き、スピカの銃撃を剣の腹で受け止める。そこへムルフェストが見よう見まねの飛び蹴りを加えると、僅かにだが後退った。

 

「消し炭になりたくなけりゃ退いてろムルフェスト!」

「えっ、ちょ!? ワタシごと!?」

「“超電磁”抜刀術・壱式――“迅雷”!」

 光速を超えた居合がドラグレイスを飲み込む――だが、シェアエネルギーの鼓動を察知した直後には変神したドラグレイス=シルバーソウルが顕現している。

 

「キサ、マハ……ココデ!」

「クソが、アレに耐えるとかどんだけしぶてぇんだよトカゲ野郎」

 毒づきながらブラッドソウルはシルバーソウルに二挺拳銃を連射していた。だが、剣で防がれるか弾丸を切り落とされるかのどちらかでしかなく、その異常なまでの生命力で突進してきたシルバーソウルを踏み台にする。その勢いのままに建物に突っ込むと、偃月刀を投げて瓦礫の下敷きにした。時間稼ぎぐらいにはなるだろう、ブラッドソウルは背を向けて聖騎士の団体へと向かう。

 ムルフェストも殴る蹴る投げ飛ばすで文字通り千切っては投げ千切っては投げ。テロリスト達がまるで木の葉のように宙を待っていた。

 

『ギャアアアァァァァーー!?』

「うーん、不協和音。エヌラスー、ワタシも手伝おっかー?」

「いらん世話だ!」

「むぅ、人が折角親切にしてやろうかと思ってたのに……」

《この吸血姫めが!》

「ほぇ?」

「ムルフェスト、後ろよ!」

 聖騎士が全速力で特攻を仕掛ける。

 神格者と言えども二輪装甲車に撥ねられれば一溜まりも――!

 

《……え?》

 そう、思っていた時期がテロリストにもあった。緑竜会にも。ネプテューヌ達も。だがひとつ忘れていた。

 吸血姫であり神格者であるムルフェストは、そもそも根本的に人間とは違うのだと――月光の守護神たるムルフェストにとって陽の光が差さない地下帝国はまるで古巣のような居心地の良さを感じていた。体の不調もなく、それどころか絶好調に近い。

 衝突、衝撃――異様な静寂から前転宙返りという状況下にあって、聖騎士のパイロットが逆さまの視界で見たものは、拳を引いて構えている吸血姫。

 

「どぉらっしゃぁぁぁいッ!!」

《んな、アホなぁぁぁぁぁぁぁ!?》

 聖騎士の一体がビルを貫通して吹き飛び――爆発、炎上した。ムルフェストは肩を回してガッツポーズ。

 

「うーん、新記録?」

「仮にも二輪装甲の戦車を殴り飛ばすって、貴方一体どれだけ身体能力持て余してるの?」

「えー、結構。いつもはぐぅたらして、夜になったらあちこち散歩して、朝になったらまたぐぅたらしてるけど」

「な、なんて自堕落的な私生活……!」

「まるでアナタみたいね、ネプテューヌ」

「失礼ね。私だって忙しいのよ? ゲームしたりプリン食べたりプラネテューヌ散歩したり」

「へぇ、ネプチューヌもワタシみたいに堕落的なんだ!」

「楽しそうなお話してるところ悪いんだけどねぇ、ねぷちゃん達?」

 アイリスハートに声をかけられて振り向けばそこには大勢の敵を相手に四苦八苦しているパープルシスター。

 

「アタシ達、ものすっごく追い込まれてるの分かってる?」

「ぷるるんの言うとおりね。こうなったら四女神無双オフラインエンパイアーズよ」

「色々混ぜすぎてわけがわからないわよ……」

「隠しキャラに俺もいるぞ!」

 “螺旋砲塔”神銃形態を薙ぎ払って焼け野原にしたブラッドソウルがパープルハートの頭を軽く小突いた。

 

「冗談言ってる場合か、ったく。ネプギア、大丈夫か?」

「は、はい! さっきのちょっと当たりそうになりましたけど、なんとか!」

「そうか、悪いな」

 相変わらず血の霧は晴れない。だが、先ほどの一撃で大多数がやられたのか、目に見えて数は減っている。

 

「さぁ、ここからは私達のターンよ!」

 瓦礫を押しのけてシルバーソウルが立ち上がり、吼えた。

 

「グルルルル……!」

「理性残ってるのかしら、アレ?」

「知るかよ、当人に聞いてみろ」

 竜の鱗のように変異した鎧が擦れて不快な金属音を鳴らす。翼を広げて飛び立つシルバーソウルをブラッドソウルが追おうとプロセッサユニットの羽を広げる。ムルフェストはそれを見届けてからぐるりと周囲を見渡した。

 

「うーん、さっきのでほとんどいなくなっちゃってるね」

「エヌラスさん、自分の国なのに……」

「むしろ憂鬱なんじゃない? 辛い思い出くらいしかないし。だからいっそのこと消し飛ばしたいと思うよ。ワタシみたいに」

「ムルフェスト……?」

「ワタシもねー、苦労してたんだ。シェアを得るためには他とちょっと違った方法で供給してたから」

「?」

「ほら、ワタシって吸血鬼だし。信仰するしない関係なく吸血すればシェアエネルギーに出来ちゃうんだよね」

「吸血鬼って便利ね」

「そのせいで国内の反感も凄かったけども、まぁそこはそれ。ワタシの圧倒的大勝利で終わっちゃったし」

 そう言いながら、ムルフェストは自分の手のひらを見つめる。

 

「でも、彼らのシェアエネルギーはワタシの中に残ってる。もう使い切っちゃってほぼほぼ底を尽きかけてるけども」

「なんであんなことしたの? 本当に楽しそうだから、なんて理由じゃないわよね」

「ん~、それもあるけど」

「否定しないんですか!?」

「一番は、やっぱりモヤモヤしてたからかな。なんかこう、引きずってる気がして嫌だったんだよね。なにか形にして使い切りたかった、そんだけ!」

「だからと言って、月ごと落とさなくてもいいでしょ!」

 ブラックハートがミサイルを切り落としていた。その爆発に混じってシルバーソウルとブラッドソウルが空中で激しく切り結び、七つの軍槍が乱反射しながら迫る、それを七重に召喚した偃月刀で迎撃する様は異様な光景だった。

 この戦いをムルフェストは“聖戦(Crusade)”と言う。

 この戦いをドラグレイスは“塔争”と言った。

 ならば、エヌラスにとってこの戦いは只のリセットなのだろう。この世界をやり直す。壊れた世界のその先にあるはずの未来を掴むために。

 

「DAAAIDARAAAA――!!」

 そして、シルバーソウルが遂には押し負けた。幾千にも及ぶ剣戟の果て、火花と閃光の最中から飛び出した迅雷が片羽を消し飛ばし、反転したブラッドソウルのアクセル・インパクトによって地面に叩きつけられる。

 

「おらポンコツ共、遊んでんじゃねぇ!」

 その号令に、スピカは無間心臓を。カルネはハザード・ランプを最大稼動させた。

 

「グッ……!」

 ドラグレイスは変神を解除してその場から大きく飛び退くと、スピカの銃火器による流星群が石畳にクレーターを作りだす。その動きを追ったカルネの一閃を大剣で防ぐ。形勢は明らかな劣勢ではあるが、それでも退かないのはここで決着をつけるつもりか。或いはなにか手があるのだろう。ブラッドソウルはその最後の手段が何であろうと、此処でドラグレイスを仕留めるつもりでいた。

 右肩に長大な鞘を担ぐ。

 血の霧が濃くなる――だが、構わない。

 

「コイツで――!」

 紫電が奔る。抜刀するその瞬間に、ブラッドソウルは見た。血の霧の中に浮かぶ人影を。

 それは、いないはずの人で。帰らぬ人のはずで。

 まるで悪夢のように、その人は立っていた。ドラグレイスもその視線に気づき、振り返る。

 

『――大魔導師……!?』

 名は、言霊。最も恐怖する者の名を呼んだその瞬間に、緑竜会が行っていた決死のテロ活動は成就した。

 

 

 

 その光景を見下ろしているのは、一人の道化師。仮面をかぶり、狂気を振りまく人ならざる魔人。守護神たちの対敵にして、ひとりの男の怨敵であり宿敵であり仇敵。クロックサイコ。

 

「あーあ、復活しちゃったカ。まぁでも、塔の出現が早まる分にはいいかナ☆」

 血の霧が凝縮されていく。顔を挙げれば血相を変えて走るアサイサムと人狼局。既に大半の制圧作戦は完了している。だがしかし、一手遅かった。

 エヌラス達の元へ集まった緑竜会とその協力者達の中にデモンスレイブユニットを搭載した聖騎士は無く、そも、ユニットを搭載した聖騎士はいなかったのだ。彼らはそれを車両で運搬しており、この緊急時にそんな行動を取るとは誰も思わない。偶然、ロメロのタクシーとすれ違っていなければ気づくことはなかった。

 

「おやおやまぁまぁ。誰も彼も皆さん大忙しの大慌て。だけど、ネェ? もうとっくに大魔導師の手のひらの上なんだヨ。何時から? さぁー何時からだろう、ね。エヌラス」

 ケタケタと笑うクロックサイコの腰のベルトに下げられている壊れた懐中時計は、ただ揺れている。いつから壊れているのか、それは誰も知らない。彼がいつからそうなってしまったのかも神ですら知らなかった。

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