超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
セロンの見ている前で繰り広げられる激闘は、パープルハート達が終始押されていた。
守護女神とはいえ、その同等の実力を持つ神格者達が相手では手間取る。彼らはこの輪廻の中で永遠に戦い続けてきた。その経験の差が実力として両者を引き離している。
大魔導師の超重力弾がパープルハートを吹き飛ばした。アルシュベイトの豪剣がブラックハートの大剣を叩き壊し、プロセッサユニットが破壊される。バルド・ギアが放つ怒涛の射撃がパープルシスターを撃ち抜いた。ドラグレイスの大剣が蛇腹剣を絡め取り、アイリスハートは続けざまに放たれる魔法によって空間を漂う。
「…………」
セロンは、ただその結果を“ああそうか”と受け取った。守護女神達の敗北だ――そう思った瞬間、パープルハート達が体勢を整える。
「まだ、よ……セロン……! 私達はまだ、戦えるわ……」
「……」
「“コンティニュー”よ!」
「……好きにするがいいさ」
玉座に頬杖をついて、セロンは立ち上がるパープルハート達を待った。だが、結果は同じ。
“最強”の名を冠する神格者がふたりもいるのだから当然の結果とも言える。かたや物理最強、かたや魔術に精通した魔法最強の神格者。アルシュベイトと大魔導師が相手ではあまりに分が悪すぎる。
「……勝てる道理など、ないのだがな。何故諦めない」
ほとほと呆れた口調でセロンは疑問を口にしていた。立ち上がるだけの体力もなくなったのか、パープルハート達は余さずプロセッサユニットが破壊されている。
「お前達が痛い思いをする理由もない。辛い戦いに身を投じる理由などない。諦めろ」
「……――――」
「お前達が守護女神の使命を全うしようとしたところで、この世界は救えない。アダルトゲイムギョウ界に、お前達の居場所は無いのだ……」
自分達の限界を、思い知らされた気がした。確かにそうかもしれない。此処に、私達の居場所は――そう思いかけた時、ふと左手の薬指に嵌めた指輪が目に映った。
「…………エヌ、ラス……」
無限に続く敗北の歴史。その光景に自分達が刻まれる。
――だが、絶望に屈しそうになる瞬間に。今際の際に、そこに映る神格者達の最期に共通するものがあった。
アルシュベイトが、戦い続けていた。先代アゴウの女神に背を預け、戦っていた。刃が折れる、片腕が食われる。弾が尽きる。無尽蔵の絶望に包囲され、信じるものは己の肉体だけ。だが、それでも……先代アゴウの女神の背中を押して、ただ一人残った。跳躍ユニットを廃棄して、自らの手に持って叩きつける。腕部に収納されているナイフを取り出して、戦う。戦う。戦い続ける――――そして、死んだ。
無尽蔵の絶望を前にして、バルド・ギアが。ドラグレイスが、大魔導師が。誰もが。
――彼らは、死ぬ最期の瞬間まで諦めていない。命あるかぎり、戦い続けていた。
きっとその先に平和があると信じて、戦っている。
「お前達があの男を愛したところで、あの男がお前達を愛している証明など、何処にもないだろう。愛などない。誰がそれを証明する」
「――――――――――」
そこで、気づいた。どうして自分達がまだ戦えるのか。戦おうとさえ思うのか。自分達の姿を見て、思い出す。
――俺がアイツに命を懸けるだけの価値があるってことなんだよ。
エヌラスが言っていた、いつかの言葉。
ただの一度も“愛している”なんて、言ってくれなかったけれど、言葉にしなくても分かる。
「ぁ…………あ、あ…………」
涙が溢れてくる。
そうだ。
一体、何を忘れようとしていたのだろう。
“アダルトゲイムギョウ界で変身出来る”ということが、何を意味しているのか。
「私達は……」
愛されていた。いや、愛されている。今でも。今までも。
祈るように。慈しむように。シェアリングを握り締める。
「エヌラス――」
だいじょうぶ。私達は、だいじょうぶ――だから、だから。
脳裏に浮かぶのは、いつだってボロボロになってきた絶望の魔人。
『私達を、
光が生まれる。シェアの光。その輝きをセロンは知っていた。“それ”が何を意味するのか。
「……トランジスターか」
足の欠けた星形のシェアクリスタルが、パープルハート達の掌に包み込まれていた。
「“神々の神像”とも呼ばれる、善なる属性の結晶。知っているとも。それでお前達は何を願う?」
「――明日を。未来を」
自分達の身体からシェアクリスタルを取り出すと、パープルハート達はトランジスターへ埋め込む。
「今なら分かるわ……この世界が、侵されていのだと」
「ほう?」
「大いなる“C”。貴方は、邪神よ。この世界を歪め続けてきた、邪悪な神様」
「それは違う。私は歪めてなどいない。彼らが望んだのだ」
「彼らが望んだのは、平和よ。アダルトゲイムギョウ界の明日」
「なぜ、そう言い切れる」
「それは、私達が彼らの“いのちの歌”を知っているからです」
「ここでずっと独りぼっち、そんな貴方は知らないでしょうけどね!」
言葉もなく、セロンは呆れた。目の前で守護女神達の傷が治っていく。
「私達は、人々の切なる叫びを胸に、明日へと向かうわ。ここで終わりになんかしない!」
「ならば、お前達の願いを込めるがいい。トランジスターには、それだけの力がある。さぁ、見せてみろ――その“斬魔大星”が魅せる輝きを」
『
宣誓する。世界を越えて守るべきものの為に。
光の中から生まれるのは、新たなプロセッサユニットを装着した守護女神達。その姿にセロンは喝采の拍手を送った。
「見事だ。実に見事だよ、守護女神。いつ見ても、その輝きだけは私を飽きさせない。祈りの空より来たるもの。切なる叫びに応えるもの。ギョウ界の善なる属性が顕現したもの――!
今のお前達は“もっとも新しき旧き神”に相応しい! 来るか、
女神トランス・パープルハートが、太刀を担ぐ。その刃は実体ではなく、シェアエネルギーによって形成されていた。
「そうだ。私が大いなる“C”と呼ばれる以前より、選ばれたものだけがその輝きを身に宿してきた。あらゆる次元。あらゆる世界を超えて! この私の敵として! だが、お前達の敵は――この者達だ!」
アルシュベイトが、ドラグレイスが、大魔導師が。シェアクリスタルを手にしている。
「いずれ神へと至る、神に値する願いを持つ者達――神格者! この者達を討ち倒さないかぎり、この私に刃は届かんよ」
そして、一斉に変神した。バルド・ギアだけは装甲を展開して輝きに包まれる、電界突破。
「私がアルシュベイトをやるわ」
女神トランス・ブラックハートが背丈を超える大剣を構えた。両肩から浮かぶユニットの中には冷却用のファンが回転している。
「なら、お願いね、ノワール」
「任せなさいよ。ゲイムギョウ界トップシェアの女神の力、見ておきなさいよ」
「それじゃあ、私はソラさんを相手します」
女神トランス・パープルシスターは両手に先鋭化されたM.P.B.Lを構えてドレスのように広がるプロセッサユニットを翻した。バルド・ギアの姿が掻き消える。その光の尾を追って、トランス・パープルシスターが飛翔した。光速の銃撃戦が繰り広げられる。
「なら、アタシはドラグレイスをイジメようかしらぁ? 別にいいわよねぇ!」
女神トランス・アイリスハートは、まるで剣の女王のように背中のプロセッサユニットに無数の剣を携えていた。得物である蛇腹剣もより凶悪なフォルムへと神化を遂げている。理性を失ったモノクロの竜が襲いかかるが、それを事も無げにトランス・アイリスハートは蛇腹剣で捌くとその背中を追った。
ネクロソウルが長大な刃の偃月刀を担いで首を傾げている。
「私達は、諦めないわ。何度でもコンティニューよ!」
「ならこれは、超次元遊戯だ。異なる次元同士の狭間で起こる、ヒトの世界を超えた“神々の