※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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episode156 嘆き喰らいの竜とドSな守護女神。そして来るのは――

 

 トランス・アイリスハートはシルバーソウルの背中に向けて蛇腹剣を振るう。延長された刀身を大剣で防ぎ、火球を吐いた。

 

「そぉ、れっ!」

 それに、背中のプロセッサユニットから剣を一本取り出して投げる。火球と相殺して爆炎が巻き起こり、その真っ只中を突っ切ってシルバーソウルが大剣を振り上げていた。蛇腹剣を戻し、受け止める。竜の口から火の粉が漏れているのを見てトランス・アイリスハートは距離を取った。

 火球ではなく竜の息吹(ドラゴンブレス)が後を追う。

 

「まったくもう、まるで怪獣みたいねぇ」

 軽やかな軌道を描いて息吹を避け、トランス・アイリスハートは背中の剣を手にする。指の間に挟んで投擲すると弾丸のような速度でシルバーソウルの装甲を貫いた。だが、それを意に介した様子もなく口に咥えて引き抜くと、逆に投げ返す。

 

「あ~ら、ご丁寧にありがとう。それじゃあこれはご褒美よ!」

 キャッチした剣を更に増やして投擲する。三本の剣が今度は余さず胴体を刺し貫くが、シルバーソウルは止まらなかった。大剣の輝きすらも白黒になっている。

 夢に取り憑かれ、夢を追い求めるあまりに目に映る全てを醜悪と一蹴した竜騎士の今の姿に、トランス・アイリスハートは呆れた。

 

「可哀想ねぇ。だけど、同情の余地もないし憐憫の情もないわ」

「…………」

「それにさっき戦ったばかりで長く相手してらんないのよ。反応薄そうだし」

 現に、シルバーソウルは胴体を貫いた剣を物ともしていない。中も空洞。となれば――跡形もなく破壊するしかない。トランス・アイリスハートは、はて、と考える。どうしてくれよう? どうしてやろう?

 そこで、ゾクリと背中を駆け上がる快感のようなものが湧き上がった。アレは人ではない。ましてやちょっとやそっとで「どうにかなる」ような相手でもない。

 

「フフ……」

 ゾクゾクと自分の中で凶暴な感情が奮い立ってきた。

 

「本当はソフトから始めるのが定番だけど、とびっきりハードにイくわよぉ!」

 ジャラリ――背中に背負った無数の剣が鎖となってトランス・アイリスハートを覆う。それぞれが自らの意思を持つかのように頭をもたげていた。

 シルバーソウルが声なき咆哮を上げて七つの軍槍を召喚する。射出された七つの軌跡は空中で乱反射して獲物を狙っていた。それが全て捕縛される。

 剣閃が奔り、七つの軍槍は一つ残らず両断されていた。そこにはトランス・ブラックハートが並び立つ。

 

「あら」

「手を貸すわよ、プルルート」

「アタシの獲物なのに横取りするつもり?」

「そんなつもりはないわよ。思う存分、イジメ倒してやりなさい。私だってそんなに余裕はないの」

 アルシュベイトとの一騎打ちでユナイトソードは大半の剣を失っていた。一番の貧乏くじを引いたのはトランス・ブラックハートだったが、それを引き受けると言った手前、何も言えない。

 

「じゃあ。徹底的に! 嫌というほど、イジメてあげるわ! 嫌でもヤるわよ」

 シルバーソウルの前に黒い薔薇が舞う。幻術魔法、ローズ・ガーデン――それにトランス・アイリスハートは背中の蛇剣を放つ。自らの意思を持ち、四方に散った剣のひとつがシルバーソウルの姿を捉える。そこへ向けて蛇腹剣を突き刺す。伸長された刃を防ぐが、続いた紙一重の剣技をまともに受けて胴体に横一文字の亀裂が入った。

 目にも止まらない光速斬撃を受けて、尚もシルバーソウルは自らの生命力を武器に立ち向かう。トランス・アイリスハートの蛇腹剣が首を絞めあげていく。四肢を拘束して万力のようにじっくりと力を込めて行った。ギリギリと軋みあがる四肢に亀裂が入る。

 

「このままフィニッシュでもいいけどぉ……もうちょっと愉しみたいわ」

 拘束を解いて、蛇剣がシルバーソウルを無数に打ち据えられた。何度打たれても立ち上がろうとする姿に段々と哀れみの情が浮かんできたトランス・ブラックハートが止めようとする。

 

「プルルート? そのへんでいいんじゃない?」

「嫌よ」

「いや、だってもうドラグレイスボロボロじゃない」

「嫌・な・の。エヌラスを追い回してたって話じゃない? そういうのってぇ、赦せると思う~?」

「いつの話よそれ」

「アタシの記憶にある話よ。だ・か・ら、もう二度とアタシの玩具に手を出すなんてバカな真似できないくらい徹底的に痛めつけるのよ! ホラホラ、どうしたのぉ? ホラホラホラァ! アハハハハハハ!」

「どっちが敵かわからないわねこれじゃ……」

 ――バキィン!

 甲高い金属音。砕け散る蛇剣に、トランス・アイリスハートが妖艶な笑みを浮かべた。シルバーソウルの大剣が何本かをまとめて薙ぎ払っている。

 

「そうよぉ、それぐらい反抗的じゃないと調教しがいがないのよねぇ!!」

 気にした風もなくトランス・アイリスハートが肉薄した。マントを翻すように蛇剣を揺らすと、それは無数の斬撃となってシルバーソウルの片羽を奪う。トランス・ブラックハートの剣が更に片羽を切り裂いた。それによって変神が解除される。

 高めた魔力を圧縮して放つ斬撃――“復讐鬼”が二人の間を抜けた。

 

「ハァッ!」

 トランス・ブラックハートの剣を受け止め、手首を返して受け流す。その背中に大剣を振り下ろそうとして、蛇腹剣に絡め取られた。

 蛇剣が魔法の輝きを放つ。

 

「エヌラスだけじゃなくて、ノワールちゃんまでイジメようだなんて死刑ものよ?」

 まぁ、と区切り、紫電・炎熱・極冷温の三属性を交えた光球を混ぜあわせる。そして出来上がるのは全てに破壊をもたらす白い闇。

 

「まぁ――アタシが殺してあげるんだけど!」

 その光球を左手にかざしながらトランス・アイリスハートはドラグレイスの身体を引き寄せて飛ぶ。

 

「アンリミテッド・デザイア!」

「――――!」

 触れた瞬間に、焼滅した。消滅していく身体から逃れようとするが、蛇腹剣が逃さない。蛇剣が縛り付けて決して離さなかった。

 

「いいコねぇ、貴方達。後でご褒美あげるわ」

 それに歓喜しているのかどうなのか。蛇剣達は一層力を込めてドラグレイスを拘束して、その光球の輝きの中へと消えていく。

 白い闇が膨れ上がる。それは抱え込むほどに膨張して、トランス・アイリスハートの手によって真っ二つに両断されると霧散して消えた。

 

「さぁ~て、こっちも片付いたわねぇ」

「そうなると後は……」

 二人の見つめる先には玉座に座して、退屈そうに眺めているセロン。その眼前で繰り広げられる激闘は大魔導師とトランス・パープルハートの演舞だった。金色の弓が放たれる。十字架が振るわれる。二挺拳銃が踊る。偃月刀が舞う。黄布が揺らめく。多種多様、あらゆる外道の知識の集大成を繰り広げる大魔導師――ネクロソウルの前に苦戦している姿を見て、二人が加勢しようとした。その時。

 次元が震撼する。それはセロンですらも予期していなかったのか、驚いた顔をしていた。

 

「な、なにこの振動は!?」

「セロン! アナタ一体何をしたの!」

「私は何もしていない」

 その言葉は本当なのか、無限に広がる敗北の歴史がひとつ、また一つと消えていく。ひび割れ、景色が崩壊していく。

 

「憎悪のソラより来たりて――」

 その声は、聖句を述べる。

 

「――バカな……そんなはずがない。在り得るはずがない!?」

 セロンは今度こそ狼狽えていた。何故ならば、その声が届くはずがないからだ。何故ならば、その声は潰えているはずだ。

 世界の崩壊を待つだけだったはずだ、それなのに……それなのに、何故。

 

「――正しき怒りを胸に」

 その男の声が響き渡るのか。

 

「私が創りあげた箱庭から、貴様は抜け出すというのか――神の摂理に挑むというのか、お前は!」

 

 ――それは、かつて夢を見た者達の怒り。その戦いの先に平和があると信じた者たちの夢想夏郷。

 

「我は神を断つ剣を執る――!」

 ゆっくりと。ひどくゆっくりと次元の狭間に亀裂が入った。扉が開かれようとしていて――。

 

「――面倒くせぇとっとと開けやコラァ!!」

 

 ……蹴り破られた。借金を取り立てる自由業よろしくな勢いで蹴り飛ばされた扉がこじ開けられる。

 

「お前は、何故だ……! なぜ、ここまで辿り着いた!! 無尽蔵の絶望! あらゆる次元を渡り、あらゆる世界を破壊し、ありとあらゆる希望を消してきた、お前が――!」

「そいつはナンセンスな質問だ。何故ならそいつは」

 傲岸不遜そのものの足取りで空間を歩く。左目に走る刀傷が痛々しい。だが、そう思わせない程に不敵な笑みを浮かべて、嗜虐的に、残虐的に、残酷なまでに絶望は笑う。

 並ぶ四人の守護女神達の姿を見て、胸の中に湧き上がる充足感に満たされる。

 “此処にある”のだと、心が応える。

 

「俺が守る輝望が、ここにあるからだ。人間舐めんじゃねぇぞ、ええ? カ・ミ・サ・マよぉ!!」

 親指を立てて、セロンに向けるとそのまま首を切り、下へ向けるハンドサイン。逆十字を切りながら、絶望の魔人は辿り着いた。

 次元の狭間に。愛する守護女神達の元へと、神の摂理を超えて――。

 

「これからテメェをぶちのめす! そして、ハッピーエンドでめでたしだ! 覚悟しやがれ!」

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