超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
エピソード0 割といつものゲイムギョウ界
ゲイムギョウ界のプラネテューヌではいつものようにネプテューヌがゲーム三昧。そしてイストワールに怒られること小一時間。女神の何たるかと延々と聞かされて、解放されたと思ったらプラネテューヌの見回りと女神のお仕事を強制された。そのお目付け役にアイエフまでもが駆り出されている。
「うぅぅ~~あァァァんまりだァァァァ! うわーん!」
「自業自得でしょ。ほら、泣かないの」
「だってだって! 酷いと思わないあいちゃん! いーすんったら「今度女神のお仕事をサボったらゲームのデータを消しますからね」なんて言ってきたんだよ!? わたしのゲームのデータをだよ!?」
「それだけ貴方が仕事をしていないって証拠じゃないの?」
「えー、だってさぁ。プラネテューヌは毎日平和だよ? 女神のお仕事とかないないナインティナインだよー」
「残りの一パーセントがとんでもない地雷でないことを祈るわ。それより、式典の準備とかもあるんじゃない?」
アイエフに言われて、ネプテューヌは首を傾げた。
「式典……? なんかあったっけ?」
「はぁ……」
これには堪らず、頭痛がしてくる。
「ほら。ゲイムギョウ界の式典よ。他の女神様達と一緒に何か開くんじゃなかったの?」
「あ、忘れてた」
「一大イベントじゃない! なんで忘れてるのよ!」
「んーっと……平和ボケ? まぁまぁ思い出せたからいいじゃん」
「そうね」
呆れながらも適当に相槌を打って、プラネテューヌのギルドへ立ち寄る。主に仕事を紹介してくれる場所でその内容も多種多様、十人十色。困っている人達が真っ先に頼る場所でもある。
「それじゃ、クエストでも受けていきましょ」
「謀ったな、あいちゃん! いつの間にかわたしをギルドに引っ張ってくるなんて!」
「貴方の仕事ぶりが悪いのよ。ほら、ちゃっちゃと受ける」
「うぅ~、あいちゃんのイジワル」
とりあえず、言われたままにネプテューヌは近場のクエストをいくつか引き受けた。その横から伸びた手がクエストの依頼書を読んで、持って行ってしまう。
背の高い男性で、ロングコートを着た黒い髪にネプテューヌは目が惹かれた――。
「…………」
「ネプ子? どうしたの?」
「えっ? あー、うん。なんだろ……今の人、あいちゃん知ってる?」
「え?」
「え? いやだから、さっきクエストを受けた人だよ」
「ああ、さっきの人? いえ、知らないわよ。ギルドでクエストを受けるのは何も女神だけじゃないし、珍しくもないでしょ」
「うーん、そうなんだけど……なんだろ。なんかモヤモヤするなぁ……」
「クエストでもこなしてればスッキリするわよ」
「だよね! よーし、パパっと終わらせてゲームするぞー!」
「遊ぶことしか考えてないのはどうなのよ……」
サクッと気を取り直して、ネプテューヌはアイエフと二人でクエストへと向かう。
その一方で、ラステイションの教会。その執務室ではノワールがいつものように女神の仕事に精を出していた。すると、パソコンに着信が一通。相手は誰かと画面を開くと、リーンボックスから。
相手はリーンボックスの女神、グリーンハート。ベールだった。
「もしもし? どうしたの、ベール。珍しいわね」
《ああ、ノワール。実は、今度開かれる式典のことで、ちょっと相談があるのですが……今、よろしいでしょうか?》
「ええ、構わないわよ」
《それにしても私の出番がスカイポ通話というのはどうなのでしょう》
「いや、いいから早く用件言いなさいよ……」
ノワールとて暇ではない。まぁそれを言ったらどの女神も同じなのだが――約一名を除いて。
《“ハァドライン”という集団については、ご存知でしょうか》
「ええ、聞いたことがあるわよ。女神信仰の狂信者、でしょ? 自国の女神を信仰するあまりに他の女神に対して攻撃的なはた迷惑な連中。それが?」
《まぁ。要点だけを簡潔にまとめた解説は流石ですわね》
「わたしも式典の原稿まとめてる途中なの。できれば手短にお願い……」
《あら、私としたことが……実は、リーンボックスとラステイションのハァドラインがこの数ヶ月、不穏な動きをしているらしいのです》
「それはちょっと面倒な事になりそうね。うちは重工業がメインだし、そっちも軍事国家だったわけだし――」
そこで、ノワールが言葉を詰まらせた。リーンボックスはここ最近はベールの意向で萌え文化を取り入れてはいるが、元は軍事産業がメインの軍事国家。その分技術力も最先端をいっている。
しかし何故か、思い描いた軍事国家という言葉に違和感を覚えていた。
《……どうかされました?》
「ううん。なんでもないわ。まかり間違って手を組むことになんてなったら大変ね。一応こっちから出向いて警告だけはしておくわ」
《私も同伴させていただきますわ》
「じゃあ、お願いできる? 場所は――」
ラステイションとリーンボックスの国境近辺にある森林地帯。以前は工場などが栄えていたが、事業の収縮に伴って現在は撤退している。その跡地をハァドラインが根城にしているとの情報があった。
ノワールが合流場所に到着してから間もなくして、豊満なスタイルのグリーンハートが降りてくる。すぐに変身を解くと、金髪の美女へと姿を変えた。
「来たわね。ベール」
「ええ。本当は四女神オンライン2のイベントに集中したかったのですが……サーバーの緊急メンテナンスが入ってしまって」
「あ、ああ……そうなの?」
生粋のゲーム廃人としてもベールを知っているノワールは緊急メンテナンスに感謝しつつも、気を取り直して森の中へと入っていく。
やがて、崖から廃工場を見下ろすと、そこではリーンボックスで見かけられる防衛ロボが稼働していた。その中には見慣れない人型の軍用ロボも確認される。明らかに、怪しい――よく見ると重機までもが運びだされていた。
「どっからどう見ても」
「怪しいですわね……」
二人が顔を見合わせて頷く。放置しておくわけにはいかない。
「ちょっと!! あなた達!」
ノワールが廃工場の前で声を張り上げると、一斉に手が止まった。
「ハァドラインの連中ね! 責任者は誰! 出てきなさい!」
ザワザワと騒ぐロボット達だったが、その一声に顔を見合わせて責任者を呼び出す。その相手もまた、軍用ロボだった。
《…………》
赤と黒のカラーリング。何世代か前の人型軍用ロボットは黙ってノワールとベールの前に立つ。
「あなたがリーダー?」
《……》
うんうん、と頷く。すると、そこに遅れてもう一人がやってくる。白いカラーリングの人型軍用ロボット。リーンボックスで見受けられる型としては一世代前の機体だ。両方共に武装を解除しているのか機体各所のハードポイントに武装はマウントしていない。
《すまんな。こいつはあまり喋らないのだ。話があるならば、私が応じよう》
「そう。じゃあまずは、所属と名前を教えてもらえる?」
《私はリーンボックス企業連盟傘下に所属する、J.Oだ。皆は私を『ジョッシュ』又は『ジャック』と呼ぶ》
「そう。そっちは?」
《……》
《この男は、ナイルス。見ての通り無口でな。女神を前に緊張して言葉も出ないのだろう。会えて光栄だ、守護女神》
ジョッシュの紳士的な対応に空気もいくらか解れたのか、周囲の防衛ロボ達も警戒態勢を解除した。やがて一人、また一人と憧れの女神を一目見ようと集まる。
《マジだ……マジで女神様だ! くぅー、まさか生きている間に生で見れるとは思いもしなかった!》
《あ、あのグリーンハート様! 握手いいですか!》
「ええ、構いませんわよ」
《あ、でも俺、さっきオイルいじってて汚れてる……すいません、すぐ手を洗ってきます! アルコール! アルコールはどこだ!》
《やめんかお前ら、見苦しい。気持ちは分かるが作業の手を止めるな》
どうやらこの場を取り仕切っているのは事実上、ジョッシュで間違いないらしい。ナイルスは名目上のリーダー、ということだろう。
なんとも緊張感の無いハァドラインだが、ラステイションとリーンボックスの軍用ロボがこうして一挙に行動しているのを見ると、どうやら同盟関係にあると見て間違いはないらしい。
「それで? この廃工場であなた達は一体何をしているの?」
「この近辺であなた方が不穏な動きをしている、というのは既に調査済みですわ」
「返答次第じゃ、こっちもそれなりの対応させてもらうわ。覚悟しなさいよ」
二人の真剣な眼差しに緊張が走るが、ジョッシュはナイルスを横目で見る。
《なるほど。そういうことか……》
「答えなさい」
《いや、すまない。我々ハァドラインと呼ばれている者達がこうして大挙していれば、世間体は確かに不安を感じるだろう。そのことに配慮が足らなかった》
「それでは、あなた方は此処で何を?」
《我々は現在、解体作業中だ。事業収縮に伴い、稼動を停止させた工場や施設。その解体事業を執り行っている。これにはそれぞれの企業に正式な許可証も貰っている》
そう言って、ジョッシュに書類が手渡される。それに目を通すと、確かにラステイションとリーンボックスの両方の企業からそれぞれ許可が降りていた。しっかり納期も決められている。
「えっ、じゃあ……あなた達ってもしかして……」
《この規模の廃工場となると、中にある道具も再利用できる。我々は解体作業を請け負う一方で工業部品の修理も現在行っているんだ》
ノワールとベールが作業スペースを覗かせてもらうと、錆びた鎖や壊れた工業製品を解体して部品をチェックしていた。それが正常に動くかどうかの動作チェックも行っている。
「じゃ、じゃあ周りの軍用ロボはなに?」
《この周辺にはモンスターも多数生息している。自衛の為だ。我々も仕事でやっているのでな》
「そうだったのね……」
飛行能力のある自分達と違って彼らは陸路で来るしかない。確かに、こんなモンスターだらけの危険地帯で解体作業を請け負う業者は早々見つからないだろう。人間ならまだしも彼らは軍用機械。うってつけの仕事だ。
「ごめんなさい。ハァドラインとだけであなた達を危険視して……」
《なに、気にすることはない。こちらも迷惑を掛けた、お互い様だ》
「リーンボックスとラステイションの企業が提携してこの工場の解体を依頼しているとあっては、私達にはどうすることも出来ませんわね」
要するに、早とちりだった。式典が近いということもあってピリピリしていた自分達の勘違いに謝罪すると、ジョッシュは気にした風もなく頭を下げる。
《こちらこそ、すまなかった》
「いいえ、わたし達の方こそごめんなさい」
「ええ。今回は私達に非がありますわ」
《守護女神の仕事は多忙を極めるのだろう。私達の国を統治しているとあっては漏れがあっても仕方ない。責める気はない、どうか頭を上げてくれ》
うんうん、とナイルスも頷いていた。
《むしろ感謝さえしている。ご存知の通り、我々は女神を信仰している最たるモノだ。こういった形でしか一目見ることは叶わない。彼らもやる気を出してくれているようだしな》
《ドォラッシャァァァァァァッ!!》
ブルドーザーが派手に廃工場の壁に風穴を開けていた。
《何やってんだバカ!》
《なにをしてんだお前! おーい、中の奴大丈夫かー!》
《やっぱりかぁぁぁぁぁ!!》
《……気にしないでくれ。いつもああなんだ》
「そ、そう……それじゃ、わたし達はもう行くけれど」
《ああ。これからの活躍を期待させてもらう、武運を》
「ありがと。行きましょ、ベール」
「ええ。それでは皆様、がんばってくださいませ」
ノワールとベールが去っていく。その背中を眺めていたナイルスとジョッシュに通信が入る。
《――こちらアームドソウルス、ジョッシュだ……ああ、首尾は上々だ。今しがた、守護女神が視察に来た。我々の動きを警戒しているらしい。……問題はない。勘違いだと上機嫌で去っていったよ》
ブルドーザーが空けた壁の中。廃工場内では解体作業が続けられていた。
《期日までにこちらの作業は完了する。それではな――プレジレント》
通信を切ると、ジョッシュは中を覗く。そこでは解体作業に使用される工具以外に、元から備え付けられていたクレーン等も利用して組み上げられている物があった。
《向こうのハァドラインとも互角に渡り合えるだろう》
《…………》
それにナイルスは肯定も否定もしない。ただ組み上げられていく巨大なブースターを眺めていた。