超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
ネプテューヌとアイエフがクエストをこなしていると、携帯が鳴り響く。
「はい、もしもし。ネプギア? どうしたの?」
相槌を打っていると、アイエフがすぐに通話を切った。
「今の電話、ネプギアから?」
「ええ。朝から女神の仕事をしてたらしいんだけど」
「流石はわたしの妹! 姉の代わりに仕事に精を出してくれたんだね」
「ここまで不出来な姉もどうなのよ。それで、ネプギアからの連絡なんだけど……ハァドラインって知ってるわよね」
「うーん、
曖昧なネプテューヌの認識に、本当にプラネテューヌは大丈夫かと苦笑いを浮かべる。
「まぁ、あながち間違いじゃないわね……ほら、ネプ子みたいな女神達って国民からの信仰心が必要じゃない? その信仰がいき過ぎた狂信者とも言うべき集団のことよ。そんなんだから他の国で問題を起こしたりするんだけど……」
「あー、たまにいるよねぇ。熱中するあまり周囲に迷惑かける人、スポーツとかの観客席にいる人達だよね」
「そういう認識で間違いはないと思うわ。それで、そのハァドラインを近辺で見かけたから気をつけてって話よ」
「ネプギアは無事なの?」
「ええ。姿を見るなり慌てて逃げたみたい。ただ、どこに逃げたのかまでは――」
言っている傍から不穏な物音が接近してきていた。アイエフはカタールを構え、ネプテューヌも太刀を向ける。
ブースターを吹かしながら地面を滑る音。ふたりが見上げた先の崖から飛び出してきたのは、一機のロボットだった。
アイエフとネプテューヌが見ている前で両足の大腿部に外付されたバーニアを吹かして着地の衝撃を和らげると二挺のサブマシンガンを回転させながら構える。そして、背後から迫っていた小型の機械――ビットの群れに向けて連射すると一掃した。
「危ない!」
咄嗟にネプテューヌが撃ち漏らしたであろうビットを一閃する。
「ネプ子、大丈夫?」
「うん。ほとんど倒されてたみたいだからこれくらい余裕余裕!」
「はぁ……まったく、気をつけなさいよ。それより、そこのロボット? 貴方ね。ネプギアを見るなり逃げ出したっていうハァドラインの一味は」
背中に武器を背負っていたハァドラインのロボットは、サブマシンガンを背中にマウントするなりアイエフを見て、それからネプテューヌを見て――。
《ヒィヤァァァ!?》
悲鳴と共に飛び上がって頭を下げた。ジャパニーズ・ドゲザである。
《た、たたた大変申し訳ありませんでしたぁ!! まさか女神パープルハート様とは気づかずこのような失態を晒してしまい!》
涙ながらの電子音声に呆気を取られた二人がポカンと口を開けた。
《なんかちょっと格好良く登場できたとか思ってホントすいません!》
「う、うわぁ……ここまで腰の低いロボット初めて見たかも……」
「それより。貴方の所属と名前は?」
《ハイ! 自分はプラネテューヌ国境警備隊、北方第一線部隊所属レオルドです!》
「えーっと……それじゃあレオルド。どうして貴方はネプギアを見るなり逃げ出したの?」
《いえ、その……実は、部隊の実践演習中だったのですが……そこに女神候補生の方が出てきたもので》
「テンパって逃げたってこと?」
《あるまじき醜態です……!》
悔しさのあまりにレオルドは地面を殴る。
《それだけに留まらず、女神パープルハート様のお手を煩わせるとあっては国境警備隊の名折れ……! やはり俺は劣等生なのか! プラネテューヌ国境警備隊の劣等生なのか自分はぁぁぁ……!!》
「え、えーっととにかく落ち着いてくれないかな?」
《グスン……》
背中にマウントされている武装は二挺のサブマシンガン、そしてグレートソード。そのバックパックの下部には追加のジェネレーターが装着されている。レオルドは立ち上がり、肩を落としていた。
《戦績は最下位。貢献度も最下位、このままでは警備隊のランクを下げられて左遷される……》
「け、結構シビアな職場なのね……」
冷や汗を流すアイエフが同情していると、新たに甲高いバーニア音が近づいてくる。
キュイィィィィィ――。
《レオルド、そこで何をしている》
《シロトラ教官殿!?》
全身を白で統一したカラーリングの機体が飛び降りてきた。レオルドとはまたタイプが違うのか、背中に一対のバーニアを背負っている。緩やかに着地すると、手にしている自身の背丈を同等サイズの剣を突き立てた。ネプテューヌを見るなり敬礼をする。
《女神パープルハート様。私はプラネテューヌ国境警備隊の教導隊所属、シロトラ。お見知りおきを。そちらの方は諜報機関の……確か、アイエフさんでしたか》
「あら、わたしの事を知っているのね」
《ええ。女神パープルハート様に親しい方と存じています。我々、国境警備隊も諜報機関の情報網には助けられていますので》
「ハァドラインの一味って言う話は本当なの?」
《はい。ですが我々を他の連中と同類に見てもらっては困ります。友好条約が結ばれたあの日、女神パープルハート様のお言葉に従い、我々も自らの立場を見直しました。それ以来、我ら『B2AM』はこうしてプラネテューヌ国境警備隊として日夜活動しております》
しかし、その友好条約もすぐに破棄された。それでも彼らはこうして国境警備隊としての役割を果たしていた。
《我々をテロリストとして見る世間の目もあるのは重々承知。その為、こうすることでしか女神パープルハート様の力になれません》
「わたしの為に頑張ってくれてるんなら感謝感激ひなあられだよー!」
《労いのお言葉、恐悦至極。それでは、我々は演習に戻ります。レオルド》
《
レオルドとシロトラは二人に敬礼すると崖を見上げる。そこをどうするかと見ていると、シロトラはバーニアを吹かしながら跳躍して壁を駆け上がり始めた。姿勢を低くして剣を抱えるように走り抜ける。レオルドは信号弾を発射すると、その場から上空を通過する輸送機へ転送された。
「なんか、女神信仰の狂信者って聞いていた割にはまともな人達だったね」
「そうね。でもまさか国境警備隊として活動してるとは思わなかったわ」
「うんうん。これもわたしの人徳ってやつだよね! いーすんが心配し過ぎなだけなんだよ。女神のお仕事しなくたってプラネテューヌの平和は守られてるんだから」
「それにしても、ハァドラインの『B2AM』だったかしら……ちょっと気になるわね。私の方でちょっと過去の経歴を洗ってみるわ。調査が済んだら報告するわね」
「でもビックリしたなぁ。まさか崖を駆け上がるなんて」
「アレには私も驚いたわ……」
おそらく、飛行能力が無いために編み出された機動なのだろう。
「それで、ネプ子。クエストは終わったの?」
「もうちょっとでクエスト達成だから頑張ろ、あいちゃん」
ネプテューヌが気合を入れなおしてクエストに取り掛かる。国境警備隊に触発されて多少はやる気を出したのか、アイエフも一安心してカタールを構え直した。
「ええ。サクッと終わらせて帰りましょ」
背部のブースターを吹かしながら高速で駆け抜けるシロトラの隣に降下してくるのはレオルドだった。バックパック下部の追加ジェネレーターがブースターに燃焼剤を投入して加速させる。並走していた二機の機影は障害物を前にしても減速することなく走っていた。
《遅れるな、レオルド》
《了解です。シロトラ教官!》
《女神パープルハート様を一目見れたのだ、これ以上最下位が続けば降格させて僻地の雑草取りだ》
《マジすか!?》
眼前に広がるモンスターの群れを前にして、シロトラは減速する。
《先を譲る。制限時間内に突破してお前の限界を超えてみせろ》
《り、了解です!》
レオルドはマウントされている二挺のサブマシンガンを装備して弾数を確認。燃焼剤の投入をカットしてモンスターの群れに飛び込む。
《レッツ・ボーダー!!》
気合を入れて二挺を連射しながら左前腕部に収納されている手榴弾を投げる。