超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
超次元ゲイムギョウ界国民感謝セレモニーと銘打たれたその式典の様子は全国へ生中継という形で放映される。プラネテューヌはもとより、ラステイション、リーンボックス、ルウィーでもそれぞれの国に向けてそれぞれの女神達が感謝の言葉を述べていく。
ハァドライン――アームドソウルスもラジオと携帯で音声を流しながらその様子を録画していた。
プラネテューヌ国境警備隊、B2AMもまた、他国からの不法侵入者がいないかどうか目を光らせている。
開会の言葉が終わり、次に女神達が自国に向けて今年度の抱負、もとい運営方針の演説を執り行う。とはいっても、大体いつも通りの意思表明なのだが……。
プラネテューヌでは今後益々の発展。
ラステイションでは更なる事業の拡大。
リーンボックスでは新たな技術の開発に、より国民に寄り添ったイベントの開催。
ルウィーでは治安維持。それぞれの運営方針ではあるが、共通してゲイムギョウ界の平和を願っていた。そして、この後はリーンボックスより来訪しているゲイムギョウ界が誇る大スター、5pbちゃんによる感謝ライブが行われる――はずだったのだが席を立った瞬間、突然地面が揺れた。
その衝撃はまるで爆弾でも落ちたかのような揺れで、会場がどよめく。
「な、なに!? 地震!?」
「落ち着けよ。地震だったら私達までバランス崩してねえだろ」
「それもそうね……でも、今の揺れは一体――」
「皆さん、空を見れば理由が分かりますわよ」
グリーンハートの言葉に、会場の誰もが空を見上げた。カメラも自然とそちらを映す。だが、そんな必要はなかった。
何故なら、海上の空に出来た渦は全ての国から観測できるほど巨大な物だったからだ。
「何なの、アレは!?」
「何か出てくるわよ!」
その巨大な渦から吐き出されるように出てくる赤い軌跡――黒い羽を広げて空に踏み留まった姿に、目を凝らす。それは、人だった。全身が血のように赤いプロセッサユニットを広げ、黒い翼を広げている。その後を追うように現れたのは無数のモンスター達。それに、パープルハート達が迎撃に向かおうとした矢先に、突然渦の中から閃光が放たれる。
海水を蒸発させて湯気が立ち込め、霧のように広がった。海面は一部は沸騰し、一部が氷結するという奇妙な光景が出来上がる。
「……今のは」
それに、何故か懐かしさを覚えるパープルハートが頭を振る。気のせいだと、振り払う。
渦の中から現れる大量のモンスター達が反転して渦から出てきたもう一人の姿へと殺到していく。だが、次々と翼を断ち切られて絶命していった。遂には、仮面を着けた相手に向けて三日月形の歪な刃を持つ偃月刀を振り下ろしている。
交戦しながら移動を続ける二人が、徐々に迫っていた――。
「こっちに来るぞ!」
「なんで!?」
何故か。プラネテューヌ目掛けてその二人は衝突と離脱を繰り返している。その後を追うのは、のっぺらぼうの翼竜達。それを鬱陶しく思ったのか、後から現れた人物は手にしていた偃月刀を投げる。高速で回転しながらモンスター達を海に沈めていくが、肝心の仮面を着けた相手に向ける武器がない。しかし、次の瞬間には既に二挺拳銃が握りしめられていた。
赤と白の弾道が獲物を狙う。それらを日本刀で弾きながら自らの距離に相手を収めると、一閃。その白刃をブーツで受け止めながら二人が弾かれたように距離を取る。
徐々にその輪郭がハッキリとしてきた――。
「逃ィがすかァァァァアアアッ!!」
聞こえてきたのは、怒号。大気を震わせながら吼える相手に、その声に、ブラックハートが眉を寄せた。何故か、どうしてかその声が聞き慣れた物に思えてならない。初めて見るはずの相手なのに。
「会場の皆さんは早く避難してください!」
「駄目だ、間に合わねぇ! 来るぞ!!」
鍔迫り合いから離れた相手を、電流を纏わせた蹴りで吹き飛ばす。仮面を着けた赤い男性が胸板を押さえながらプラネテューヌの会場に迫り、そこへ容赦のない追撃が入った。きりもみ状態で地面に落下した人物は獣のように這いつくばりながら着地する。
黒い髪に、血のように赤いプロセッサユニット――それに、ネプギアが既視感を覚えた。
“この人……どこかで……? ううん、そんなはずない”
「ネプギア! なにボサッとしてんの!」
「ユニちゃん?」
名前を呼ばれて、気を取り直す。今はそんなことよりも国民の避難が最優先だ。黒髪の少女、ユニが光に包まれる――女神化したブラックシスターは大型のライフルを構えて翼竜の群れを撃ち始めた。
「ネプギアちゃん。わたし達も……」
“そうだ。今はとにかく、みんなを安全な場所に……!”
ネプギアの視線が、イストワールとアイエフ、そしてコンパへ向けられる。アイコンタクトで頷くと、教会に向けて避難誘導が始められた。
「皆さん! こちらです!」
「5pbちゃんも、こっちです~!」
「は、はい!」
その様子を見て、避難誘導を任せたパープルハート達もドレスが光に包まれてプロセッサユニットを装着する。太刀を向け、大剣を構え、長槍を携え、戦斧を担ぐ。
「どっちを相手にするの」
「なら、私とベールであっちのワケわかんねぇ剣持った野郎だ」
「私とネプテューヌで仮面を着けた相手ね。行くわよ!」
二手に別れたネプテューヌとノワールは自分達が相手しようとしている仮面を着けた人物に、謎の違和感を覚えていた。
「ねぇ、ノワール」
「ネプテューヌ、まさかとは思うけれど……貴方も?」
「なんとなくだけど、分かるのよ」
「ええ。ま、相手してみればハッキリするわ!」
顔を上げる仮面を着けた人物へ大剣を振り下ろす。飛びのいたそこへパープルハートが太刀を振るう。それを僅かに身を逸らすだけで躱し、更にバックステップで距離を取った。
「貴方の目的は何? あの渦は一体なんなの!」
「せっかくの式典。ぶち壊しにしてくれた罪は重いわよ!」
「…………」
仮面の男性は答えない。ただ手にした日本刀を構え直す。それを無言の抵抗と見た二人が斬りかかる。
「おい、テメェ! 何のつもりだ!」
振り下ろされる戦斧を避けて、そのまますり抜けた相手にグリーンハートが長槍を突き出す。最小限の動きから繰り出される高速の刺突に進行を妨害された相手は足を止めた。その前に二人が並び立つ。
「こっちの台詞だ! 何しやがるアブねぇだろうが!」
「そこにキレるべきではないと思うんですが」
「うっせぇわこの痴女! お前ほぼ全裸じゃねぇか!」
「わ、私のこの格好を痴女!? 何を言っているのですか! この女神的女体! 完璧なプロポーション! その魅力を余すことなく見せつける私のプロセッサユニットに何の不満があるというのです!?」
「チッ……チッ。チッ! チッ!!!」
隣でホワイトハートが不機嫌さ全開で舌打ちを繰り返していた。
「隣に立ってぽよんぽよんと邪魔な脂肪揺らしやがって……!!」
「何を今更怒っているのです、ブラン? 貴方と私が並び立つということは、こういうことですのよ?」
「どういうことだよ!」
「まぁ、そういうことなんだろうな……元気出せよ。世の中の男性全員がそういうの趣味なわけじゃねぇんだし」
「うるせぇ! 初対面の男性に同情される私が今どれだけみじめか分かってんのかテメェ!!」
「なんでキレられてるんだ俺!?」
「同情するなら胸よこせ!!」
「いやそれ男に求めるものじゃなくねぇか!? あぁもう、テメェ等の漫才に付き合ってる暇はねぇんだからどきやがれ!」
「そういうわけにはいかねぇ、ベール! あの野郎ぶっ飛ばすぞ! 話はそれからだ!」
「承知しましたわ。観念なさい、このロリコン」
「初対面でロリコン呼ばわりするお前から徹底的に集中狙いにすることにした、今!」