※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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エピソード2 隠しても隠し切れない物が本性という

 

 ホワイトハートの戦斧を偃月刀で防ぐと、その重量に押し負けて男性が飛び退く。そこへすかさずグリーンハートの刺突が飛んでくるものの、それはすぐさま切り払って接近する。自分の間合いに詰めようとする相手から離れようと身を引いたそこへ、男性の左手に光の粒子が集まっていった。それは魔力的な輝きを有しており、光が収まるとそこには白銀の回転式拳銃。

 

疾走(はし)れ、イタカ!」

 六連射される白銀の魔弾。それぞれが不規則な弾道、不可解な角度からグリーンハート目掛けて牙を剥くが回転させた長槍によって弾き落とされる。

 

「ふふ、そのような目眩まし。私には効きませ――」

「じゃあの」

 まさかのスルー。

 

「あっ、ちょ!? 待ちなさい!」

「何やってんだホルスタイン!」

「誰が乳牛ですか!」

 その横をあっという間に通り抜けた男性の後を慌てて二人が追いかけようとするが、加速力は相手の方が上なのか一向に追いつけない。

 

「くっそ! ロム、ラム! ソイツを止めろ!」

 姉の声に、変身していたロムとラム――ホワイトシスターが頷いて頭上に氷塊を作り上げて、そのまま男性目掛けて振り下ろす。

 氷山のような塊を見た男性は偃月刀を投擲すると、氷に突き立つ。その脚に紫電を纏い、更に深く突き刺すと剣を伝導体にして氷山の内部から電撃を炸裂させて氷塊を破壊した。

 

「ウソ!?」

「足止めなら私に任せて!」

 ブラックシスターがスコープを覗いてX.M.Bの引き金を引く。光線が的確に男性の進路を妨害し、それに乗じてパープルシスターも同じように別角度からM.P.B.L.を撃つ。幅の広い刀身を持つ偃月刀を左手にも召喚した青年が盾代わりにして突っ切っろうとするが、それよりも先に回りこんだのはホワイトハートの戦斧。歯を食いしばり、衝撃に備える。

 

「ヘッ、ザマァねぇな!」

 偃月刀二本で防いだものの、衝撃に負けて足を止められた青年は舌打ちを漏らした。その視線の先には女神も女神候補生もいない。ただ仮面を着けた人物だけを注視していた。

 

「さぁ、観念なさいな」

「俺の邪魔をすんじゃねぇ!」

 青年の怒気を超えた殺意まで滲む叫びに、年少者であるホワイトシスターの二人が身体を竦ませる。その迫力にはブラックシスターですら一瞬動けなくなった。だが、パープルシスターはどうしてかその叫びに懐かしさと心地よさを覚える。

 

“なんで、だろう……あの人の声……私――”

 脳裏に走るノイズ。雑音、雑念の情報量に、思わず頭を押さえた。

 

「うっ……!」

「ネプギア!?」

「――あぁ、ったく!! どいつもこいつも! どこに行っても俺の邪魔ばかりする奴で頭イテェのはコッチの方だ! 泣かれても困んだよ!」

「なんて人なのですか貴方は! ロリコンの風上にも置けませんわね」

「ロリコンじゃねぇって言ってんじゃねぇかッ!! お前は何なんだよこの羞恥の女神!!」

「私はリーンボックスの守護女神、グリーンハート! そういう貴方は一体誰なのですか!」

「俺は――」

 

「……エヌラス、さん?」

 その一言が冷水のように青年に浴びせられる。

 

「――――……ッ」

 顔を歪ませて、偃月刀を突きつけるが、それでもパープルシスターは接近した。ブラックシスターが止めようとするも制止の手を振りきって。

 

「エヌラスさん、私です! ネプギアです!」

「ネプギアちゃんの……お知り合いなのですか? ますます怪しいですわね、貴方は何者なのですか? 私のネプギアちゃんと一体どのような関係なのですか? 事と次第によっては手加減容赦一切の慈悲無く貫かせていただきますがよろしいですねッ!?」

「なんか先程よりも殺気立ってねぇかなそこの緑の女神! 俺の気のせいであってくれねぇ!?」

 その場に居る全員が思った――それは間違いなく絶対に気のせいではない。

 

「ベールさんもさりげなく私のことを自分の妹みたいにしないでください……」

「いいじゃありませんか少しくらい! くっ。ネプギアちゃんが私の妹にならないのも、四女神オンライン2の緊急メンテナンスもそれもこれも全部そこの方の所為ですわね! 覚悟!」

「うぉぉぉぉいただの八つ当たりじゃねぇかなコレぇぇぇぇ!?」

 グリーンハートの神速の刺突が手加減容赦一切の慈悲なく青年に向けられていた。背中のY字型に生えた銀の翼をはためかせながら青年は偃月刀でグリーンハートの長槍を捌く。穂先を逸らし、接近しようとするがそのタイミングを見計らったかのように手元を回転させて石突が顔を捉えていた。こめかみを掠めて、なおも接近する青年が懐に潜り込む。偃月刀を振り上げる――刹那の攻防に、だがしかし。青年は眼の色を変えて爆音と突風を置き去りにして空を駆ける。

 

「どこへ――!?」

 視線の先。そこで、ようやく気づいたパープルハートとブラックハートが仮面の男性を相手に敗北しそうになっていた。

 

 

 パープルハートの太刀が当たらない。ブラックハートの大剣が、躱される。そして、双方ともに掌打と強烈な蹴りを打ち込まれた。日本刀を納刀し、剣撃から打撃へと切り替えた相手に対応し切れずに押されている。

 

「くっ……!」

 その左手に紫電が走る――本能的に、感覚的に思い出される戦慄が背筋を凍らせた。

 腰を落として、緩やかに伸びる右手が臨界点を超えそうになる刀の柄を握りしめ……閃刃が閃く。視界が覆われる。衝撃。轟音。そして、懐かしい声にパープルハートが顔を歪ませた。

 

「人のこと無視して女と洒落こんでんじゃねぇぞぉぉぉぉ!!」

“この人の背中を……私は、知っている……?”

 だけど、思い出せない。何かが自分の記憶を邪魔していた。それが一体何なのか分からない。だけど、今まさに、自分に背中を見せて閃光に身を灼いている人を自分は知っている。

 

「貴方は……!」

 光が収まり、自らの負傷を気にした風もなく青年が首だけ振り向いて睨みつけた。

 

「何してんだ、テメェは。さっさと立て」

「ええ……?」

「よし行け!」

「えっ、ええ? そのつもりよ? ……なんで命令されてるのかしら、私」

 パープルハートが太刀を振り下ろす。袈裟懸けに日本刀が受け流す。そこへブラックハートが全身を使って大剣を振り下ろすと、衝撃で相手が吹き飛ぶ。更に青年が駆け込み、相手を殴り飛ばした。その先は――教会。盛大に殴り飛ばした相手は防御魔法を使っていたのか、紋章が光っている。赤い五芒星――それを見たブラックハートが頭を押さえて膝を着いた。

 

「お姉ちゃん、どうしたの!?」

「頭が……!」

 その不調には目もくれず、青年は偃月刀を担いで教会の中へと突入する。

 

 吹き飛ばされた仮面の男性は転がるように受け身を取ると、ふと背後を振り向いた。そこでは教会の職員達が集まっていたが、アイエフとコンパが武器を手にして仮面の男性から守ろうと前に出る。避難していた者達には目もくれず胴を押さえながら整息すると、扉から襲いかかる影に日本刀を向けた。火花が散る。

 

「テメェは絶対逃さねぇ……!! 何がなんでも俺が殺してやる……ッ!」

「――――、」

 尋常ではない殺気と執念に、負傷も相まって仮面の男性が押し負けた。だが、すぐに体勢を整えると丁々発止。ふたりの間で無数の剣閃が走り、目にも止まらない速度で衝突を繰り返していた。鞘を放り捨てて青年の胸ぐらを掴み、膝蹴りがみぞおちに入る。一瞬の隙に氣を込めて投げ飛ばした。

 床を滑りながら立ち上がった青年が偃月刀を担ぐ。その間に相手は既に距離を詰めていた。

 

「ちょ、ちょっとここでやり合うつもり!?」

 教会の職員達から悲鳴が挙がっている。避難したプラネテューヌ国民達からも巻き込まれるのではないかと我先に奥へ逃げようとしていた。だが、今度は青年が追いつめられる側となっている。先程に比べて動きが悪い。それもそのはずだ、背中に逃げ遅れた子どもや老人がいる。相手の攻撃を避けるわけにもいかず、防戦一方となっていた。

 それを好機と見たのか仮面の男性は教会の床を強く踏みしめる。残像すら見えるその速度に翻弄されて青年が僅かに後退った隙に、今まで蹴られた仕返しと言わんばかりに強烈な回し蹴りが叩きこまれた。

 

「ごはっ!」

 咳き込み、吹き飛ばされそうになる身体をどうにか押し留めるも、続く二発目をまともに受けて教会の床を滑る。

 再び立ち上がろうとした時、青い髪にヘッドフォンを付けた少女が子供の手を引いていた。仮面の男性は既に跳躍して、刀身が白く閃いている。

 

「5pbちゃん、危ないですぅ!」

「えっ――!」

 小さく悲鳴を挙げそうになる前に刃が迫っていたが、突然膝裏を蹴られて“カクン”と姿勢を崩した自分の身体が引き倒された。その眼前と鼻先を冷たい刀身が走り抜けて、ついつい目で追ってしまう。その先には黒い服――青年の胸を切り裂いて鮮血が溢れる瞬間を見てしまった。

 

「――~~ッ、ッてぇだろうがぁボケがぁ!!」

 力任せに叩きつけた偃月刀の衝撃と、続く飛び蹴りが仮面の男性を教会から追い出す。ポカンと口を開けて涙目になっている5pbをチラと横目で見ると、頭を軽く撫でて手を振りながら背中を向けた。

 

「だ、大丈夫!? 怪我とかしてない?」

「う、うん……ボクは大丈夫、だけど」

「まったく、なんて常識知らずなのかしら。ここには大勢の避難者がいるっていうのに」

“さっきの人……助けてくれた……?”

 あまりにも一瞬の出来事過ぎて実感がないが、跳ね上がった胸の鼓動を鎮める。死ぬかと思った。

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