超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
式典の開催から数日――プラネテューヌでは復興作業が超スピードで進められ、既に街は元通りとなっている。いつになく全力で働いた国民の中にはハァドラインの姿があった。国境警備隊であるB2AMの構成員達は元は採掘や建築用として開発されたロボットがメイン。その為か裏方での仕事はお手の物、まさに縁の下の力持ち。
ネプテューヌ達はというと、一時解散はしたものの留置所に拘束されているエヌラスに面会しようと集まっていた。当の相手も特に抵抗することなく、おとなしく連行されて今日まで何の問題も起こしていない。
「ねぇ、あいちゃん。エヌラスの様子はどうなの?」
「一応警察と連絡は取って逐一確認してるけれども……」
なんとも歯切れが悪い。アイエフを先頭に、プラネテューヌの留置所へ到着すると女神が勢揃いという光景に勤務していた職員が思わず直立不動で固まった。
「どうかしたんですか?」
「……爆睡してるらしいわ」
「剛毅というか、剛胆というか……なんとも気楽な方ですわね」
「何度か起こそうとはしたみたいだけど、結界張って寝てるらしいのよ」
「一体どれだけ寝たいのよ……」
この数日、ずっと寝ているという報告が続いてアイエフもため息しか出てこない。「今日こそは。いやもしかしたら次こそは」と連絡する度に警察側から「寝ています。とても気持ちよさそうに」という返答が続くと、さすがに仕事へのモチベーションも下がる。
「もうあの犯罪者……犯罪王だったかしら。寝たきりにしとけばいいじゃない。どうしてそんなに入れ込むのよ。わたし達の立場としては犯罪組織に連なる連中を放置しておくわけにはいかないのよ?」
「あいちゃんの言うことは正論なんだけど……うーん、どう言えばいいのかなぁ……」
「えっと、わたし達で釈放というわけにはいきませんか?」
「ネプギアまでどうしたのよ。まさか惚れ込んだとかじゃないわよね」
「ち、ちちち違います! 別にそういうわけ――」
――脳裏に蘇るのは、いやんばかんいちゃこらうっふんな桃色の記憶。顔を赤くしながら必死に否定する姿にユニからジッと睨まれる。
「怪しい……」
「怪しいですわ……」
「まぁいいわ。相手の出方次第でこっちの対応も変えるから」
“エヌラスさんに温厚な振る舞いは期待するだけダメかな……”
さりげに失礼な事を考えつつも、一行はエヌラスが拘束されているという牢屋に辿り着いた。無機質な部屋には簡易ベッドだけ。
「寝てますね……」
「寝てますわね……」
「動物園の猛獣を見に来たら眠っていたみたいな心境よ、今……」
ブランの例えに全員が納得してしまった。猛獣などというレベルで片付けられるような相手ではないが。それはさておき、アイエフが檻を軽く揺らしてみる。ガシャガシャと音を立ててみるが、相手は身動きしない。
「死んでないわよね」
「大丈夫よ。寝返り打ってたみたいだし。ほらー、起きなさいそこの犯罪王!」
「…………」
反応無し。
「完全に寝太郎と化してますね」
「起きなさいよ、エヌラス」
ノワールが呼びかけるも、モソモソと薄手のシーツをかぶって動かない。
「起きませんわね、あのロリコンの方――」
バゴォン!!
銃声。いや、砲声に等しい発砲音が響く。いつの間にかエヌラスの手には硝煙を漂わせる凶悪な外観のレイジングブル・マキシカスタムが握られていた。ちなみに銃弾はベールの頭数センチ上を通過して壁に弾痕を残している。
「……――ん、あー……あれ? なんで俺銃持ってんだ……?」
「無意識レベルで銃ぶっ放すとか危険すぎませんか!?」
ようやく起きた。まだ寝ぼけている様子だが、左手に持った愛銃に首を傾げている。全身の骨を慣らして立ち上がると、そこでネプテューヌ達に気づいた。
「というか、武器を没収してなかったのですか? 今、私の頭がエロではなくグロ方面に閲覧注意出てましたわよ、あんまりな扱いではなくて!」
「武器を持っているのは確かなんだけど、全身調べても反応がなくて没収できなかったの」
大あくびをかみ殺しながらエヌラスは邪魔そうに手錠を鳴らしている。
「あー……それで、全員揃って俺になんの用だ? ていうか俺、どんだけ寝てた」
「ざっと五日くらいね。どう、寝起きの気分は」
「意外に寝心地よくてなー。久々だわ、屋根のある場所でシーツかぶって寝たの」
「あなた、普段どういう生活してるのよ……」
「基本的に四六時中ぶっ続けで戦闘してる」
「……戦闘狂?」
「そんなんだから睡眠時間も削りに削られてな……ふあ~あ……腹減った……」
ぐぅ~。腹の虫が鳴るものの、アイエフはあまりに緊張感のないエヌラスにほとほと呆れていた。
「今まで多くの犯罪組織を相手にしてきたけれど、ここまで牢屋でくつろぐ犯罪者は初めてだわ……」
「えっと、アイエフさん。ものすごく言い難いことなんですけれど」
「なに、ネプギア」
「……エヌラスさんに拘束とかしても多分、意味無いです……」
まさかそんなはずはない。何を言っているのかとエヌラスを見れば、結界を解除したのかガラスの砕ける音がしたと思った瞬間には見えない壁のようなものが消えた。手錠を見下ろして呼吸を整える。
「――ハッ」
小さく息を吐きながら氣を込めて、手錠の鎖を引きちぎった。
「ウソォッ!?」
「思ったより硬かったな……」
「な、なんでそんな簡単に壊せるのに捕まってたのアナタ!?」
「いや、だってなぁ……無料で寝床提供してくれたら俺が逃げる理由なくなっちまうし」
「貴方自分が捕まってるってこと忘れてないでしょうね! 留置所は宿じゃないのよ!?」
「ベッドと屋根があったら俺にとっては宿なんだよ!」
「普段どれだけ貧相な生活送ってるのこの男!?」
「とにかく、起きた以上は事情聴取が最優先ではなくて?」
「そ、そうだったわ。危うくペースに呑まれるところだったけど、そうはいかないわよ。下手な真似はしないことね」
「いや、留置所で銃ぶっ放した時点でもう……なぁ? それにあんなんやらかしてるしな……」
ハァ……、重苦しいため息をついてエヌラスは肩を落とす。一応、罪の意識はあるらしい。
「とにかく、面倒事なら手短に頼むぜ? 腹減って死にそうだ……」
ぐぅ~きゅるるるいあふんむるいふたぐぅん……。
――果たして今のは本当に腹から出てきた音なのか。明らかに聞こえてきてはいけないような音も混じっていたような気がするが、きっと聞き間違いだ。
「五日も寝たきりだったらそりゃあお腹も空くよねぇ」
「ご飯食べないと話にならないわね……」
「とはいえ、一銭も持ってねぇぞ俺」
「……身分証明書とか、身元を保証する物、ないの?」
「ねぇな」
「ほ、ほらバイク持ってるじゃない! 免許証は?」
「あれは厳密に言うと『大型自動二輪の形をした半無機物魔導生命体』なのであって、免許証なんていらない」
「まさか無免許だったの!? じゃあなんでバイクの形してるのよ!」
「……カッコいいだろ?」
「もしかしなくてもバカでしょアナタぁぁぁっ!」
結局。エヌラスの身柄は四女神が拘束するという形で仮釈放。万が一にでも不慮の事態が起きたら即座に対応するということで警察側も納得せざるを得なかった。不満もない。がっちり両脇をネプテューヌとノワールに拘束され、その背後にネプギア。そしてその一歩後ろをユニ、ベール、ブラン、ロムラムという順番で続いていた。