超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
浴室でシャワーを浴びて一通り身体を洗い終えたエヌラスが出てくる頃には、既に全員は昼食を食べ終えてゆっくりしている。
肩にタオルを掛けて、黒シャツ一枚を着てジーンズを穿いた水も滴るいい男が一人。
「ハァー、生き返った。ありがとな」
「いえ、気にしないでください。お食事の方も取ってありますので、どうぞ」
「なんかもうホント申し訳ねぇ気持ちでいっぱいだわ……」
テーブルの上に取り分けられていたエヌラスの分の食事は温め直してコンパが持ってきた。手を合わせてから、口に運ぶ。
「わたしの手作りです~。おいしいですか?」
「素直に美味しい。久々にまともな食事をした気がする……そうだよな、人間の食事って本来はこういう物なんだよな……何もかもが懐かしい……」
「ホントどういう食生活してたのよ……」
「飯時に話せる内容じゃねぇからまた今度な」
「何食って生きてんのよ、この男は」
ジロリとアイエフの視線がネプテューヌとネプギアに向けられるが、二人は揃って目を逸らした。本当に普段なにを食べて生きているのだろうか……。アイエフは好奇心がそそられると共に、それを聞いてはいけない気がした。
「――ごちそうさまでした」
「お粗末さまですぅ。じゃあ食器下げちゃいますね」
「ん、あぁ……悪い」
自分が後片付けをしようかとも思ったが、目の前に出されたお茶に足を止められる。
「さて、それでは。改めて――エヌラスさん。あなたの事を聞かせていただいてもよろしいでしょうか」
「そうね……ネプテューヌやノワールとの関係も気になるし」
「私のネプギアちゃんもですわ」
「あの、ですから私はベールさんのじゃ……」
「こまけぇこたぁいいのですわ! 何よりも今は! この見るからにロ――」
「ロ”?」
一瞬、エヌラスの目が殺意を交えた眼光を光らせてベールが死を直感した。
「――ろ、狼藉者……」
冷や汗をダラダラと流しながら顔を背ける。ロリコン禁句であるのは再三に渡って身を持って味わっていた。
「わたしも気になるなぁ。あの後のアダルトゲイムギョウ界がどうなったのか」
「そうね」
「それに、大いなる“C”という言葉についても」
「分かったから質問は一回ずつにしてくれ」
ズズ……、出されたお茶が冷めない内に空にしてからエヌラスは順序立てて整理する。
「まぁ自己紹介は今更だとは思うが……俺はエヌラス。こんなんでも“一応”神格者だ。こっちでいうところの女神だと思ってくれて構わない」
「ならこちらも改めて自己紹介させてもらうわね……わたしはルウィーの守護女神、ブランよ」
「ああ、斧振り回してた白い方か」
「ええ。こっちはわたしの妹達」
「あの……女神候補生のロムです……」
「わたしはラムよ」
控えめな自己紹介は、エヌラスの第一印象が『とんでもなく恐ろしい人』だからだ。なにせ初対面で変神後の姿を見てしまっている。それに苦虫を噛み潰したような渋い表情をしていたエヌラスがちょっと傷ついていたりしていた。
「私はリーンボックスの守護女神、ベールですわ」
「今後とも宜しく」
「ええ。よろしくお願いしますわ」
「エヌラス。私の妹を紹介するわね。ほらユニ、自己紹介してないでしょ?」
「ラステイションの女神候補生、ユニです。……お姉ちゃんがお世話になったみたいで」
「よろしくな、ユニ。むしろ俺のほうが数えきれないくらいに助けられた」
コンパが戻ってくると、そこでようやく全員が揃う。
「そうだ、コンパ。あなたも自己紹介しておいた方がいいんじゃない?」
「あ、すっかり忘れてたですぅ。初めまして、わたしはコンパですぅ。よろしくです、えぬえぬ」
「さっきの昼飯は美味かった。よろしくな――って、えぬえぬってなんだ?」
「エヌラスですから、えぬえぬですぅ」
「そ、そうか……」
なんとも気が抜ける相手に、エヌラスが苦笑いを浮かべていた。
「それでは皆さんお揃いのようなので」
「ああ、分かってる。まずは、アダルトゲイムギョウ界についてだが――滅んだって言うのは少し語弊がある」
「と、言いますと?」
「正確には、あらゆる次元からの観測がされない状況下だ。つまりは隔離された状態だな」
「なるほど、そうなのですか。では次に、大いなる“C”については」
「大いなる“C”ってのは、セロンって奴だな。次元の境界に存在している、まぁ門番みてぇな相手だ」
「――それはもう、並の者が相手できる次元ではありませんね」
「いーすんはセロンについて何か知ってるの?」
「知ってるも何も、格付けで言うなら女神よりも上ですよ? 国が女神を生み出すのと同じように、その規模は段違いです。世界そのものを生み出す神なのですから」
「……改めて考えると、わたし達ってとんでもないことしてたのね」
そのセロンを左ストレートでぶん殴った大馬鹿野郎がそこに座っている。なお住所不定無職(前科持ち)の模様。
「そのような次元神を相手にするなんて何を考えてるんですか」
「あの時はわたし達も必死だったんだよー。アダルトゲイムギョウ界が滅ぶ直前だったし」
「九分九厘消滅してたけどな」
「そうなのよね……色々とギリギリだったわ」
「極限状態って燃えね?」
「続けてもよろしいですか?」
「あっはい」
脱線しそうになる話題に先手を打って封殺する様はさすが教祖。ネプテューヌと違って軌道修正が早かった。
「では、現状のアダルトゲイムギョウ界についてお聞かせください」
「……今は、何とかうまくやってる」
「歯切れが悪いようですが、何か不都合でも?」
「まー、その……なんというか……」
視線を彷徨わせて、エヌラスは言葉を探している。
「あの、仮面を付けた人物と関連のあることなのでしょうか?」
「……そうなるな」
イストワールの助け舟に乗ることにした。セレモニーの最中、現れたのはエヌラスだけではない。それよりも先に仮面を付けた人物がいる。大勢のモンスターを引き連れ、守護女神を二人相手にしても引けを取らない程の実力を持っていた。
「アレは一体、何だったの?」
「うんうん。メチャクチャ強かったんだけど」
「……その、まぁなんだ。邪神だ」
「そんなサラッと言われても困るんだけど!?」
邪神と言われても様々だ。とりあえず、漠然と悪い神様という認識しか浮かばない。
「アダルトゲイムギョウ界が今のところうまくやれてた時に、突然あの野郎がやってきてな。神格者総出で相手して、逃げようとしてたから死ぬまで徹底的に追い詰めてた」
“あの”神格者達が総出でやってくる。その光景を思い浮かべたネプテューヌとネプギア、ノワールが顔面蒼白となっていた。
「大丈夫? 顔から血の気引いてるけど」
「だ、大丈夫だよ、あいちゃん」
「あんなん全員同時相手とか裸足で逃げ出すわよ……」
「俺とアイツが戦ってるうちに色んな次元を飛び回っててな。まぁ軽く二つ三つくらい滅ぼしたような気がしないでもないが――」
「それもうアンタも邪神と大差ないじゃない!?」
「仕方ねぇだろ逃げるんだから!」
「全責任を邪神に押しつけても、もうちょっとやり方ないの?」
「味方がいないんだから手加減するわけがねぇ」
……妙な沈黙が訪れる。
「そっか。アダルトゲイムギョウ界で次元を移動できるのって、エヌラスだけなんだっけ……」
「それどころか、俺以外は全員記憶ないからな。「初めまして」は聞き飽きた」
腕の傷跡も、恐らくはその服の下も傷跡だらけになっているだろうことはネプテューヌにも容易に想像できた。自分達は二年の歳月をゲイムギョウ界で過ごしてきたが、エヌラスはアダルトゲイムギョウ界を正しく導こうと一人で戦い続けてきた。自分だけが記憶を引き継いだニューゲームを。
「そ、それで? あの邪神は結局なんなの?」
「知らん」
「知らないのに戦ってたの……」
「あれはアダルトゲイムギョウ界を滅ぼしにきた邪神だ。俺は仮にも旧神だ。敵対する理由なんてそれだけで十分だ」
「……
「それって、どんなかみさまなの?」
「そうだなー。邪神が“わるいかみさま”なら、旧神は“いいかみさま”だな」
「牢屋送りにされましたのに?」
「神様の威厳、欠片もないわ……」
「……俺は庶民派な旧神なんだよ」
しかも世界を軽くぶっ壊している。お前のような神様がいてたまるかという視線がエヌラスに突き刺さっていたが、ネプテューヌを見てから「まぁそういう神様もいるよな」ということで落ち着いた。
「なんか腑に落ちないけど、わたしのお陰でその場の空気が賑やかになるならオッケー!」
「じゃあ、次。いいかしら?」
「アイエフさん? どうぞ」
「警察に引き渡す時、武器を没収しようと思ったのに検査には反応がなかったの。それはどうして?」
「ん、ああ。それは普段、魔力に変換してるからだな」
「持ってる武器、全部出してもらえる?」
「別にいいが……」