超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
――その場にいた全員が、絶句していた。
アイエフが予想していたのは、歪んだ刃の偃月刀と拳銃くらいだろうと。
だが今、エヌラスが立ち上がって持っている武器を“全部”出したところ……。
「よっ、と」
常時魔力変換された武装を次から次へと取り出す。
まずは、無銘の倭刀。レイジングブル・マキシカスタム。これはネプテューヌも見慣れていた。
次に、深紅の自動式拳銃。更に、白銀の回転式拳銃。これもまぁ予想していた。
撃鉄の付いた日本刀。更には二メートルはあろう野太刀。カタン、ゴトッ。テーブルに立てかけられるのを見てノワールもまぁ何とか頷く。見覚えがある。
「よいしょ」
次に、破片のような小剣が二本。あまり馴染みのない形にネプギアが疑問符を浮かべた。
「あれ、エヌラスさん。そんな武器持ってました?」
「ん、ああ。使う機会があまりなくてな。これはな、こうなるんだ」
その小剣を二つ組み合わせると――バシャン! 隠れていた剣が無数に生えて手裏剣のような投擲武器となる。そのままテーブルに並べるとネプギアがポカンとしていた。
「あー、とは……これか」
取り出すのは、赤いハルバード。石突に小さな鎌の刃が付いている。先端が鎖で伸縮する。
更に、青いソード。刀身がエネルギーワイヤーによって伸縮するので移動にも使えると説明しておく。
『…………』
次から次へと武器を取り出すエヌラスに、イストワールも、言い出しっぺのアイエフも目を点にしていた。まだ出てくる。
「ハンティングホラー」
パチン、と指を鳴らせば自らの影から出てくるのは一台の大型二輪。一度は壊れたはずの愛車は幾度と無く戦いを繰り返す合間に修繕されて新車となっている。そのサドルを軽く叩いて紹介した。
「俺の愛車だ。見てくれはバイクだが、中身は生きてる。変身機能もあるが、まぁそれは追々」
そして、ポケットを探って取り出すのは見慣れない携帯電話。タッチパネル式の奇妙なデザインをした電話にはアイエフも首を傾げる。
「携帯……にしてはちょっと変わってるわね」
「ああ、コレはD-Phoneだな」
「どうせまともな携帯じゃないんでしょうけど」
「当然。熱源感知すると自動でアプリケーション開いて防御してくれる――んだが、バッテリー食うから普段はただの電話だな」
なんで携帯に防御機能が付いているんだ。
「後は、こいつか」
炎が眼前に浮かび、その中に手を突っ込むと“鍛え上げた”偃月刀が出てくる。熱を持った刀身を軽く冷ましてからテーブルに立てかけた。
「なぁ、まだ必要か?」
「もういいわ……ごめんなさい、もういいわ。軽率なこと言ったわたしが悪かったからこれ以上はもう出さなくていいから!」
「おう……涙目になられても困る」
「あいちゃん、常識人だからこういうことされるとちょっと堪えそうだよね」
非常識極まりない武装の山にはベール達も興味津々と言った感じである。
「すごいわね……これ、全部使うの?」
「場合によるな」
「ですけど、これ全部しまうの大変そうですね」
「うんにゃ?」
エヌラスが指を鳴らすと、今まで取り出した武器の全てが淡い光の粒子となって魔力に還元された。
「とまぁ、こんな感じだ」
「ですけど、それでは魔力が足りなくなるのでは?」
「それについては問題ない。俺の方で無限の魔力貯蔵庫持ってるからな」
どこに? という問いを投げかける視線に、エヌラスは左胸を軽く叩く。
「俺は心臓が二つあってな。片方は生身の心臓、もう片方が魔力の心臓だ。最悪片方潰れても再生できるようにしてある」
「ほぼ不死身じゃない」
「ただし死ぬほどイテェぞ」
「――ですが、身体のどこにそのようなものが?」
「……まぁ、その、脱げば一目で分かるだろうが」
「是 非 お 願 い し ま す わ」
鋭く光る野獣の眼光。寒気さえ覚える視線にノワールとネプテューヌがドン引きだった。ただ、エヌラスは全員の顔を一度見渡す。
「わ、わたしは別にいいけど……」
「わたしもですぅ……」
「ベールさんが望むなら、構いませんけれど」
「……まぁ、見せてもらえるなら」
「どんなのかな……わくわく」
「たのしみー」
「ちょ、ちょっとだけならいいですよね?」
「なんだこの羞恥プレイ!?」
「さぁ。さぁ、早く! さぁ!!」
「ちょっと待てなんだこの女神! 眼の色変えて手を叩くな! ええい迫るな!」
エヌラスが押しのけようとするが、ベールはそれを防いだ。
「私の目ではなく胸を見て話してくださいませんこと?」
「何言ってんだこの女神様……!! 生憎こちとらでけぇ胸は見慣れてんだよ……!」
「でかいだけの胸など邪道ですわ! 形、ハリの良さ、それらを含めて私のより上ですの……!?」
「知・る・か・よ!」
「あのね――いいから乳繰り合ってねぇでとっとと脱げっつってんだよッ!! ぶっ潰すぞテメェ!!」
遂にはブランがブチ切れる。その手には戦鎚が握られて教会の床に穴でも開けんばかりの勢いで振り上げていた。素早くベールがエヌラスの背後に回り、羽交い締めにする。豊満なバストが当てられるも、エヌラスは鬱陶しそうに振りほどいてベールをネプギアに押しつけた。
「なんで俺、プラネテューヌの教会で脱がなきゃならないんだ……?」
助けを乞うような視線がネプテューヌに投げられる。お前が女神だろ何とかしろよ、というエヌラスの目には頬を赤らめて期待の眼差しが返ってきていた。
「お前もかネプテューヌ」
「えー、だってだって。エヌラスの身体、いい身体してるから久しぶりに見たいなぁなんて思ってたり……?」
「ほんとうに大丈夫かこの世界の女神! マジでこんなんばっかか!!」
「いい加減脱がねぇとテメェの脳髄が教会の染みになるぞ、いいのか」
「良くねぇよ!?」
ブランに脅されて、結局エヌラスは残っていた黒シャツを脱いだ。口をへの字に曲げて、見知らぬ女性の前で脱ぐのは気恥ずかしいのか少し頬が赤い。
「……ほれ、これでいいんだろ」
トントンと左胸の紋章を叩く。魔術で刻印されたその刺青には、確かに魔力が感じられた。それに食い入るように見入っていたロムラムとユニの女神候補生達は純粋に感心している。
「わぁ……」
「綺麗……ねぇねぇ、触ってみてもいい?」
「ん、まぁ少しくらいなら……」
「そういうことでしたら遠慮無く……」
「人の背後に回ってベタベタ触ってるベールを誰か引き剥がしてくれ!」
「ハイハイ、ちょっと暴走し過ぎなのよアナタ」
「あぁ~酷いですわノワール~……」
小さな手が無尽蔵の魔力貯蔵庫、“銀鍵守護器官”に触れた。
「お姉ちゃんも触ってみたら?」
「えっ……? えっと、わたしも……?」
「エヌラスさんもいいって言ってるんだし。ね?」
「減るもんじゃないしな、いいぞ」
「……ちょっとだけよ」
ブランがエヌラスの前に立って、手を伸ばす。男性の肌に触れるのに慣れていないせいか、慎重に手を伸ばしている背後にイタズラ好きなラムが立つと――。
「それー」
「きゃふっ――!」
その背中を押した。エヌラスの銀鍵守護器官を注視していただけに体勢が崩れて、胸の中に顔を埋める形となった。
「……――~~~~!! なにしやがんだ、ラム!」
「アハハー、お姉ちゃん顔真っ赤っかー!」
慌てて離れると、妹に向かって怒声を飛ばす。とはいえ、ブランも間近で見る男性の裸体に興味があったのか物珍しそうに少しずつ触れていた。
「…………」
「…………ブラン?」
「…………」
「あのー、ブランさーん。もしもーし」
「ちょっと静かにして……今いいところなの」
「やはりロリコンなのですか……?」
「俺をそんな哀れむような目で見んじゃねぇよベール!! もういいだろ」
ブランから逃げるようにエヌラスは黒いシャツを手にするが、ベールがひっつく。
「あら、まだ私が触ってないですわ?」
「大人の時間にはまだ早いからな!?」
女神と戯れる姿を遠巻きに見ていたアイエフが少し頬を赤くしながらコンパを盗み見ると、いつものようにあっけらかんとした表情をしていた。
「コンパは、その……平気なの? 男の人の裸とか」
「はいですぅ。お仕事で見慣れてますから」
「そういえばそうだったわね」
「あいちゃんはえぬえぬの裸に興味あるです?」
「ヘッ? わ、わたしはその、あんまり、かしら……?」
「そーなのですかぁ」
「……コンパがいるし」
「なにか言ったです?」
「な、なんでもないわ! あ、そうだ! イストワール様! せっかくですしエヌラスにもこの世界の現状を把握してもらう為にハァドラインの調査結果を報告させてもらってもいいでしょうか!」
「別に構いませんけれど……どうしたのですか、アイエフさん。そんなに慌てて?」
「ぷ、プラネテューヌ近辺で活動しているハァドライン、B2AMについても話しておきたいところですし、こういうのは早い方が良いと思って!」
「そうですね。ではみなさん、もうそのあたりで……」
イストワールがネプテューヌ達に視線を戻すと――何故かエヌラスとパープルハートが取っ組み合っている。ふたりの力は互角なのか、お互いに引かない。
『なんでーーーー!?』
「エヌラス……貴方には失望したわ。せっかくの再会だというのに私にはお触り厳禁だなんて……!」
「だからって女神化するほどかよお前はよぉ……!」
「ちょっとくらいいいじゃない……!!」
「その“ちょっと”が信用ならねぇんだよお前は……!」
「ちょっと、全身まさぐるくらいはいいじゃない!!」
「それはちょっとと言わないんだよこの野郎がぁぁぁぁっ!!」
この後、イストワールにメチャクチャ怒られた二人はアイエフの話が終わるまで正座待機という罰を受ける。