超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
「さーて、それじゃせっかくみんな集まったんだし――」
気を取り直してネプテューヌが元気に立ち上がった。エヌラスと違って足が痺れて動けないということはないらしい。
四女神が集まり、女神候補生達も集まっている。ゲイムギョウ界の平和を守る為の女神一同が集まっているということは女神会議とかでもするのだろうか? エヌラスはちょっと真面目なネプテューヌの姿を目で追うが、ゲーム機の電源を入れている。
…………ゲーム機?
「遊ぼっか!」
「ええ、いいわよ。今度は負けないんだから」
「ルウィーの女神の実力、見せてあげるわ」
「ふふ、わたくしのやりこみを甘くみてもらっては困りますわ」
「なにをー! わたしだってやり過ぎて式典の日に寝坊したんだから」
『それはダメでしょ』
総ツッコミに困ったような笑みを見せた。
――遊ぶのかよ!? エヌラスのツッコミに、アイエフは諦めたように首を振った。女神候補生達も持ち寄った携帯ゲーム機を取り出して通信プレイを始めている。
イストワール! イストワールなら! そう思い、視線を向けるも、教祖様ですら諦めがちにため息ひとつ。
「今日だけですからね」
「……」
おいぃそこは止めないのかよ教祖様。今日だけってそんな風に甘やかしたらまた明日からこうなるんじゃねぇのかこの女神。知ってるぞ俺は詳しいんだ。
「……頼むアイエフ、俺をこの空間からどうにか出してくれ」
「どうにかって……」
「俺の頭がどうにかなりそうだ……」
「ま、まぁこういう感じだからどうにか慣れなさい」
「平和過ぎて俺の脳みそがおかしくなる」
「……アンタ、本当に人並みの生活してないのね」
「起きる。戦う。飯。寝る。俺の生活なんてそれの繰り返しだ。失敗したらやり直す」
「失礼かもしれないけど、まるで戦う為に生きてるみたいね」
「そうする以外、何してりゃいいのか分からねぇからな」
「――――」
エヌラスとアイエフの話を聞いていたネプテューヌとノワールの手が思わず止まる。
「隙だらけよ、ノワール」
「あ、ちょっと!?」
「がら空きですわよ!」
「ねぷっ!?」
そこからどうにか持ち直し、バトル・ロワイアル方式の勝負は続いていた。
「そうね……じゃあ、わたしで良かったらプラネテューヌを案内してあげるけど」
「それはいい」
「決まりね。イストワール様」
「はい。お願いしますね、アイエフさん」
「なにかあったらすぐに連絡します。それじゃ、行きましょうか」
「ああ」
発売されたばかりのゲームを楽しそうにやっている四女神から目を背けて、エヌラスはアイエフに付いて行く。
プラネタワー。プラネテューヌの教会であり、周囲は公務の場として使われていた。本来であれば関係者以外の立ち入りは禁じられている。だが、アイエフと一緒となれば何かしらの関係者として見られるのか誰も引き止めようとはしなかった。
「ねぇ。アダルトゲイムギョウ界ってどういう場所なの? 話を聞いている限りではかなり物騒な所みたいだけど」
「……“昔”はな、そうだった。“今”はどうにかこうにかうまくやってる」
「へぇ、そうなの?」
「ああ。商業国家ユノスダスを中心に、電脳国家インタースカイ、軍事国家アゴウ。“地下帝国”九龍アマルガムの四つの国があってな。規模は大小様々だが、大きく分けてその国々で毎日適当に過ごしてる」
「でも、エヌラスは邪神を追っていたんでしょ?」
「そのせいで、今はどうなってるのか俺も分からん。下手すりゃ滅んでる可能性もあるしな」
万が一にでもそうなっていた場合は…………その時にでも考えよう。
「内乱で滅ぶか、邪神の手で滅ぶかのどちらかだろうが。今のあいつ等に限って内乱はほぼ無いだろうな……」
仮に邪神が来たとしても、相手が地獄を見るだけだ。
「そもそも、なんで邪神がそんなにいるのよ。おかしいじゃない」
「さっきも話したが、今のアダルトゲイムギョウ界を隔離してるのが大いなる“C”、まぁ次元神セロンって言えばいいか。ソイツなんだが、冗談半分で門を半開きにしたらそんな事になってな」
「冗談で世界一つ滅ぼせるとかキツイわね……」
「んで、それをどうにかしてたのが俺ってわけだ」
アイエフは横を歩くエヌラスの顔を盗み見る。その表情は、明らかに疲れていた。気の遠くなるような時間を戦い続けてきたのだろう。向こうの時間軸がどうなのかは分からない。しかし、それは一日二日というような時間ではなく、何日も何週間も、何年も戦ってきたような風だった。それが世界を滅ぼせる程の邪神が相手では、並大抵の精神力ではない。むしろ五日も寝ていたぐらいで大丈夫なのかと不安になる視線に気づいたのか、エヌラスがアイエフの顔を見る。
「なんだ? 心配してくれてんのか?」
「べ、別にそういうわけじゃないわよ。なんでそんなことしてるのか疑問に思っただけ」
「俺はハッピーエンド至上主義者でな。アダルトゲイムギョウ界が平和になるまで戦い続けるさ」
金も無ければ帰る家もない。身元を証明できる物も持っていない。職業神様とはいえど、そのあんまりな風体にはそれなりの理由がある。
「庶民派が聞いて呆れるわね。とっくにもうそんな次元超越してるじゃない」
お金が必要ない。帰る家がないのは戦い続けているから。身元を保証できるものは必要ない。何故なら誰も悲しまない。自分はただただ“人類の守護者”であり続ける為に。
「独りぼっちで寂しくないの?」
「寂しいさ。人肌恋しい時もある。だけどそんな弱音吐いたら最期、連中につけ込まれて死んじまう」
「そんな心配はいらないわよ。此処はゲイムギョウ界なんだから」
「……そうだな」
ネプテューヌも、ネプギアも、ノワールも。ちゃんと元の次元に帰って来て、元気にやっている。その姿を見れただけで満足だ。
「ま、でもそれを言ったら人並みの生活できるくらいになってもらわないとゲイムギョウ界でこの先生きのこれないわよ」
「最悪野良犬とドッグファイトしてでも生き残る」
「ヒエラルキーの比較対象が野良犬っていいのこの旧神!?」
飢えたあまりネズミをとっ捕まえて食べる前科持ちであることを知らないだけアイエフは幸せかもしれない。
プラネテューヌの主な施設を案内していると、B2AMの作業員達とすれ違う。そこにはレオルドの姿もあった。武装は外しているが、代わりに資材を背負っている。
「あら、レオルドじゃない」
《アイエフさん! どうも! 自分は現在プラネテューヌの修繕作業中であります! はい! ……そちらの方は?》
「プラネテューヌの会場近辺ぶっ壊した張本人よ。今は教会で身柄を拘束しているの」
《なるほど。そうなんですね。自分は国境警備隊のレオルドです》
「エヌラスだ。仕事増やして悪い……」
《いえいえそんなことは! むしろプラネテューヌを仕事の名目で歩けるので感謝です! 残業手当出ませんけど! はい!》
「それはちょっとどうなのかしら!?」
ちょっとそれに心苦しい思いが浮かぶが、エヌラスは言葉にしなかった。労働基準法を守ってるのかどうか怪しい国境警備隊の仕事にアイエフは立ち入り調査も必要かと考える。
《でもご安心ください! 自分、こういう作業の方が得意ですんでバリバリやってます!》
「後どれぐらいで終わりそうなんだ?」
《何事も無ければ二、三日くらいです!》
「何事も無ければ、ね……」
平和なプラネテューヌに限ってそうそう問題が起きるとは思えない。
「じゃあレオルド、残りの作業頑張ってね」
《了解!》
若干テンションが上がったレオルドが資材を担いで走っていく。腰のブースターは外しているようだ。安全第一のタスキを付けたロボット達はぞろぞろと続く。
「じゃあ、まずはギルドに案内してあげるわ」
「ギルド?」
「そう。クエストを受ける場所なの。まぁ仕事凱旋所だと思ってくれればいいわ。そっちには無いの?」
「トラウマならある」
「なんで!?」
「十時間ぶっ続けのタダ働きとかな……」
「か、神様って労基法で守れるかしら……」
金の為なら法律ですらガン無視どころか札束で殴りつけてくる商業国家ユノスダス。その国家運営方針は『働かざるもの食うべからず』であり、職にありつけなければ貧乏人は死ぬしかない。