超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
アイエフの案内でプラネテューヌのギルドに来たエヌラスはクエストが張り付けられているボードを眺める。クエストランクによって割り振られているようだが、当然ながら初めて受ける人間がいきなり高難易度のクエストを受注できるわけもない。
「普段から邪神を相手にしているようなら、子供のお使いみたいなものだけど」
「んー、でも困ってるんだろ? ここにクエスト出す奴らは」
「そうね。といってもほんの些細なことだったりするわよ?」
「理由はどうでもいいさ。今の俺はパンすら買えないあまりゴミ捨て場で飢えを凌ぐレベルの財布だからな」
「いや、パンぐらい買ってあげるからもうちょっとこう、人間として振る舞ってもらえない?」
不憫過ぎて涙が出てくる。
「そうね。じゃあまずはこの辺でいいかしら」
「……スライヌ大量発生?」
「ええ。一匹二匹くらいなら別に怖くないんだけど、放置しておくとこんな風に大量発生するの。腐ってもモンスターってことね。これなら場所も近いし、いいんじゃないかしら?」
特に異論もない。エヌラスとアイエフはギルドを離れて目的地に向かう。
プラネテューヌの街並みを見ながら歩いていると既視感を覚え、それが自分の見知った国であることに納得した。
「どうしたのよ」
「いや。プラネテューヌが電脳国家インタースカイに似てると思ってな」
大きな違いは、こちらは街が賑やかであることだ。あちらは九割の無人化が成功している――国民を含めて。それにはアイエフも関心したのか「へぇ?」と一言短く相槌を打った。
「そう。ちょっと行ってみたいわね」
「あまりアダルトゲイムギョウ界に来るのはオススメできねぇけどな……」
「でもネプ子達は行ったんでしょ? アダルトゲイムギョウ界を救ったー、なんて言ってたけども一体いつ行ったのかしら……」
「それはちょっと説明し難いな。一番分かりやすく例えるなら“前世”の記憶ってことにしといてくれ」
「そういうことにしておくわ――それで、もう一つ聞きたいのだけれど」
「なんだ?」
「……ネプ子達と、どういう関係なわけ?」
「――――」
ダラダラと冷や汗が吹き出す。舌の根が乾き、口が引きつった。どういう、と言われると、それは……世界を共に救った仲間としか言えない。
「え、いや……その、なんだ」
「一緒に世界を救った、にしては随分懐っこいのよね。怪しいわ」
「どう怪しいんだ?」
「全体的によ」
ぐぅの音も出ない。
「まずベタベタくっつきすぎだし、次にやたら甘やかしてるし、あと。妙に猫なで声なのよ」
「そうか?」
「ええ、そうなのよ。他はどうだか知らないけど、諜報部員舐めないでほしいものね」
さすがというべきかなんというべきか。ただ関係性について明らかにしてしまえば軽蔑不可避なことになるのは目に見えている。アイエフ自身がそういったことに厳しそうな印象があるからだ。とはいえ誤魔化してしまうとそれはそれで機嫌を損ねてしまいそうではある。
「……まさか、とは思うけど。ネプ子に手を出したとかじゃないでしょうね?」
「か、仮にそうだとしたら……?」
「もっかい牢屋送りか裁判沙汰ね」
「ちなみに罪状は」
「不純異性交遊と異常性癖ってことでいいかしら」
「全く欠片もよろしくねぇんですアイエフ」
絶体絶命――エヌラス、プラネテューヌに来て早々に立場が危うい事になっていた。だがいずれ通らなきゃいけない道。なるべく平静に努めながらエヌラスは順序立てて道すがらに説明した。
「アダルトゲイムギョウ界では、シェアの獲得がちょっと特殊なんだ……」
「そう」
「特に、俺の場合は治めるべき国を持たないから尚更」
「それで?」
「“昔”のアダルトゲイムギョウ界じゃ、変神――トランジションできなきゃ話にならないレベルで戦いが起きてた」
「うんうん」
「そんな時に出会ったのがネプテューヌなわけだ」
この際他の二人は割愛しておく。
「ネプギアとノワール様もね」
うん、無理だった。
「で?」
「……その、来たばかりのネプテューヌ達も女神化できなくて困ってました」
「手を出したのね」
「はい……」
「合意の上で?」
「はい…………」
「……なるほどね」
今すぐ地面に穴を掘って誰かが埋葬してくれるんだったらどれほどありがたいことか。残念だがここはゲイムギョウ界。エヌラスの自棄糞に付き合ってくれる気のいいフレンドはいない。その優しさが死ぬほど痛い。
「……………………」
アイエフは無言で歩いていた。エヌラスもビクビクしながら付いて行く。
「変態」
「何も言い返せなくて死にたい」
「だってそうでしょ普通!? だってネプ子よ!? よりによって、ネプ子とネプギアでしょ!? ノワール様はともかくとして、あの二人……えぇ……? あの二人に……ちょっと信じられないんだけど……ほんとに?」
「俺はもう、ダメかもしれない……」
致死量レベルの睡眠薬をありったけ度数の高い薬物で胃袋に落とし込んで苦しみ悶えたい。
――と、まではいかなくとも同じような状況に陥っている女神が約二名ほど。候補生一名。
『どえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!???』
プラネタワー最上階でガラスを割らんばかりに響き渡る大絶叫。その原因は言わずもがな、ネプテューヌとノワール。そしてネプギアの三人がエヌラスとの関係を明らかにしてしまったからだ。
「ほ、ほんとにほんとにやばかったんだってばー! 不可抗力だよ!」
「そ、そうなのよ! 女神化できないままじゃ生き残れなかったんだし」
「それに、あくまでも“前世”のことであって、今は多分……その、無かったことにされてますし」
記憶だけがある。という状態なのかも分からないが、それを確かめる手段が日の高いうちから幼女に見せるわけにはいかない大人の時間なので確かめるべくもない。
「あ、あわわ……わたくしの……わたくしの、かわいい……ネプギアちゃんの純潔が……」
バタン。
「ベールが気絶したんだけど……」
「うるさいからほっときなさいよ、ブラン」
「そうね……というよりもネプテューヌがわたしより先に経験済みっていうのが気に食わねぇ!!」
「ねぷっ!? だ、大丈夫だよーブラン。エヌラスだったらブランでもちゃんと手を出すはずだから」
「それはそれでどうなんだ! 大体、女神がそんなんでいいのかよ! ノワールも!」
「仕方ないじゃない~! わたしだってあんなことになるなんて思わなかったんだものぉ!」
「そうまで言うならブランもアダルトゲイムギョウ界に一回行ってみればいいよ! 特に九龍アマルガムとか! 九龍アマルガムとか! 犯罪国家九龍アマルガムとかっ!!」
「誰が行くかそんな名前からして超危険な国!!」
うんうん、と頷く他一同。
「ネプギアがぁ~~……ネプギアが~……!」
「ゆ、ユニちゃんも落ち着いて……」
「落ち着いていられるわけないでしょ!? なんでよー! なんでいっつもいっつもネプギアばっかりなのよー、もうやだ信じられない!」
「あ、あう……ごめんなさい」
「謝られても困るのよー!! う、うぅ……うにゃあぁーん!!」
「う、ぅぅ……」
泣かれてもネプギアにはどうすることも出来ない。逆にこっちが泣きたいくらいだ。
「ねぷねぷ、えぬえぬとねぷねぷしてたですか!」
「わたしの名前をそんな隠語みたいに使わないで!?」
「でも、ねぷねぷってちょっとエッチな言葉に聞こえなくもないわ……つまりこれは、ネプテューヌがエッチな女神だったってことね」
「ちがうちがうちがーう! えろえろなのはむしろノワールの方だってばー!」
「のわっ!? わたしに振らないでよ!!」
「だってそうじゃーん! おっぱいであんなことやこんなこと……したんでしょ!」
「それを言ったらあなただって女神化しておっぱいおっぱいしてたじゃない!」
「おっぱいおっぱいうるせぇんだよテメェ等ぁぁぁぁぁぁぁっ!! 私への当て付けか!! それともなにか! 女神として一歩リードしたから調子乗ってんのか、アァン!?」
「ヒ、ヒィィ……ブランがいつにも増してブチギレだよぉ……」
「あ、あわわわわ……」
身を寄せあってガタガタブルブルと震える二人を容赦なく睨みつけるブランの手には戦鎚が握られている。今にでも二人を潰してシチューの具にでもしてしまいそうな勢いだ。
「お待ちなさい、ブラン!」
「うっせぇぞおっぱい代表女神!」
「それは紛うことなき真実ですわ。痛くも痒くもありませんが、そこで二人に矛先を向けるのは間違いではなくて?」
「……どういうことだ」
「確かに、見た目幼女のネプテューヌ。幅広い層に人気のスタイルを持つノワールの二人に先を越されたことは悔しいですけれど、その矛先を向ける相手はひとりですわ!」
「うわー……すっごく嫌な予感する……」