超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
アイエフとエヌラスの二人は若干気まずい空気のままクエストの発注場所へ到着した。見渡す限りスライヌの山。ぬらぬら言いながら自由に跳ね回っている。
「ここみたいね」
「綺麗だな、ここ」
「サクラナミキはいつでもこんな感じよ」
「年中行楽シーズンだろうな」
「むしろ逆ね。来れば何時でも見られるから風情もなにもあったものじゃないわ」
「あー……確かに、飽きそうだ」
「それに、わたし達は遊びに来たんじゃなくてクエストをしに来たの。分かってる?」
「分かってる。デートじゃねぇんだから真面目にやるさ」
両手にカタールを装備するアイエフと、倭刀を装備するエヌラスは左手にレイジングブル・マキシカスタムを握るとスライヌに向けて発砲した。
「ぬらっ!」
「……アイエフ」
「なに?」
「なんか俺が想像していたスライムと違うんだが」
「どんなの想像してたのよ」
「俺の知っているスライムはこんな風に愛嬌があるやつじゃなくて、もっとこう。ゲル状の身体に無数の牙が生えてて地面を這いずりまわってるようなやつなんだがな」
「それこそわたしの知ってるスライムと違うんだけど!?」
「主食人間」
「こわっ!」
それに比べればスライヌなど国民的マスコットに等しい愛くるしさ。これを討伐……心が痛む――。
「まぁいいか。雑魚ばかりなら楽するに越したことねぇし。ヒャア我慢出来ねぇ!」
はずもなく嬉々としてスライヌの群れに飛び込む。
「えっ!? いくら雑魚モンスターと言っても群れの真ん中に飛び込むとか自殺行為よ!?」
「問題ねぇ!」
飛びかかるスライヌを両断するアイエフがエヌラスの援護に向かおうかと見やれば、そこでは爆発が起きていた。
「ぬらーっ!」
頭(体?)を掴み、地面へ力一杯叩きつけて蹴り飛ばす。弾丸のような速度で他のスライヌ達を巻き込みながら吹っ飛んで川に落ちた。エヌラスの足は紫電を纏っている。
「アクセル・ストライク!」
一匹を蹴り、反動で更に反対側の一匹を蹴る。踏み越えていきながらレイジングブルと倭刀で手短なスライヌ達を撃破していく。銀鍵守護器官から発電される魔力で身体機能を補助しながらエヌラスは驚異的な速度でスライヌの群れを討伐していた。
「アイエフー! 残り何匹だー!」
「クエストには、見える限りって書いてあるわ、よ!」
目の前の一匹と、振り返りざまに一匹を始末しながらアイエフがエヌラスと合流して背中を合わせる。
「見渡す限りってお前これ……絶対ランク詐欺だろ」
「討伐数が多いだけの雑魚中の雑魚なんだからこれぐらいが妥当なんじゃない?」
「それな」
一気に片付ける方法が無いわけではない。しかし、それをやれば環境破壊待ったなし。綺麗な桜が一瞬のうちに焼け野原になってしまう。
「…………」
「一気に片付けようとか考えてるでしょ」
「よく分かったな」
「言っておくけど、一応この辺の植物は文化財に登録されてるから下手に壊すと罪状が増えるわよ」
「善処する!」
面倒な場所で湧いたものだと思いながら、エヌラスはまだまだ増えるスライヌの群れに向けて発砲する。眉間を撃ちぬかれて一匹、また一匹と片付けていたが埒が明かない。
「クトゥ――」
深紅の自動式拳銃を喚び出そうとして、その破壊力の余波が周囲に悪影響を与えると容易に想像が出来て、躊躇した。
「ぬらーっ!!」
「おふっ!」
その隙を突いてスライヌの一匹がエヌラスの顔に体当たりする。ポヨンとした弾力があるものの顔に来れば衝撃でふらついた。
『ぬらぬらぬらー!』
「のぉぉぉぉぉぉっ!!?」
そこに殺到して飛びかかるスライヌに押し潰されたエヌラスを助けようとアイエフが目の前の一匹に背中を向ける。
「ぬらん」
「きゃっ」
足を取られて倒れるアイエフの周囲にはスライヌ。
「このっ」
「ぬらーっ!?」
地を這うような斬撃で目の前の一匹を片付けてから立ち上がり、エヌラスの上に山積みとなっているスライヌに向かって駆け出そうとして――突然、スライヌタワーが爆ぜた。
赤い戦斧――ハルバードの先端が突き出されている。
「ぬらぬらうっせぇんだよ犬耳生やしたスライム風情が!」
変神前であっても、キレる時はキレる。
「片っ端から地獄送りにしてやる! 貪り尽くせ、夜明けまでー! おるぁああああ!!!」
「ぬらぁぁぁぁっ!?」
回転させて周囲のスライヌ達を一掃する。それでも逃げ出そうとする背中に向けて、先端が鎖に繋がれて蛇のように追い掛けた。広範囲の攻撃に切り替えたエヌラスが地面に突き立てて、手短な一匹を捕まえるなり腕と足に紫電を纏わせる。
視線の先には怯えるスライヌの群れ。
「喰らいやがれ! プラネテューヌ限定、スライヌレールガンッ!!!」
「ぬらぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?」
電磁投射砲の弾丸よろしく、帯電(感電?)したスライヌが涙を流しながら蹴り飛ばされる。群れに合流した直後、放電した電流が四散して感電したスライヌが消滅して一気に数が減った。
「超、エキサイティンッ! 大丈夫か、アイエフ」
「言ってることはふざけてるのに、やってることは真面目ね。なんとか大丈夫よ、ちょっと膝をすりむいたくらいかしら?」
「それにしても、ほんとキリがねぇな。なにやってんだこの国の女神は」
「ゲームやってるわよ」
「そういやそうだった」
頭痛が痛くなってくる。とはいえ、二人で片付けられるような量のモンスターでもないことは確かだ。
「見つけましたわよ!」
「ん?」
上空から聞こえてくる声に視線を向けるより先に、突風と共に槍が降ってくる。その中心にいたスライヌ達が舞い上がった。その先では、大きく戦斧を担いだ小柄な体躯の女神が待機している。
「おらぁぁぁぁっ!!」
回転しながら振り回す戦斧によって無防備なスライヌ達が一掃され、着地地点の安全を確保した二人の女神が降り立つ。
緑の女神、グリーンハート。
白の女神、ホワイトハート。
「おふたりとも、どうしたんですか?」
「アイエフさん。下がっていてくださいませ」
「だな。巻き込まれても文句言えねーぞ」
どうも、手伝いに来てくれたような雰囲気ではないらしい。はて、何か恨まれるようなことでもしただろうか。心当たりと言えば、セレモニー開催の日に相手をしたくらいのものだが……。
「あー、ちょい待ち。なんだ。なんで二人共俺に向かってそんな殺気立ってるんだ?」
「おだまりなさいこの色情魔!」
「あっ……」
察した。もうその一言で何もかもまるっと察した。つまりは、そういうことだろう。
ネプテューヌ辺りが口を滑らせて関係をバラしたとかそんな感じ。
(あの野郎、後で覚えとけ……)
「ネプテューヌから聞いたぞ。お前死にたいんだってなぁ!」
「いや、待て。誤解だ。別に俺は死にたいわけじゃ」
「お黙りなさい! ネプテューヌとノワールだけに飽きたらず、わたくしの! かわいい! 妹である! ネプギアちゃんにまでッ!!! 万死に値しますわ!!」
「うーん、誤解じゃないし間違いでもないんだが……」
「エヌラス。悪いけどこればっかりはアンタに手を貸せそうにないわ……」
「うん、だろうな。下がっててくれ」
アイエフがとばっちり食らっても困る。エヌラスは下がらせた。だがそれを見て、ますます二人の眉がつり上がる。
「その三人に飽きたらずアイエフとまでよろしくしてるじゃねーか……」
「いや、あの、別にそういうわけじゃ」
「青姦! 青姦ですの!? 人気のないサクラナミキで白昼堂々と行為に及ぶつもりでしたのね! くっ、三次元の男は狼なのですね……」
「ハハッ、言われたい放題」
「あ、青姦とかそんなつもりで来たわけじゃなくてわたし達はクエストで――」
「問答無用! その命、女神に還しなさい! 特にネプギアちゃんの純潔を穢した罪!!」
「お前さっきからそればかりじゃねぇか……」
グリーンハートの嫉妬の炎に、隣に並び立つホワイトハートですら呆れ返っていた。