超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
エピソード14 計画は隠密かつ迅速に進行中……?
プラネテューヌ資源採掘場――そこでは、B2AMに所属する作業用ロボット達が集まって式典の録画を眺めていた。友好条約が結ばれる日の映像は色褪せること無く彼らの信仰する女神の姿を映している。
《……はぁ……何回見ても麗しいよなぁ、パープルハート様……》
《だよな……一度でいいから話してみたいものだ》
軽量型のロボットと、重量型の二脚ロボットは揃って画面を食い入る様に見入っていた。
《何をしているんだ……?》
そこへ、漆黒の機体色のロボットが戻ってくる。背部にマウントしていた武装を解除してラックに立てかけているが、ちらつく画面を見て頷いた。
《また友好条約の宣誓シーンか。飽きないものだな》
《うるせいやい。こちとら来る日も来る日も資源採掘で疲れてるんだ》
《そうだそうだ!》
《だったらプラネテューヌに行けばよかったじゃないか》
《それは……そうだけどなぁ……》
残念ながら。シロトラの指示には逆らえない。最高責任者であるシロトラは寝る間も惜しんでB2AMに所属するロボット達をまとめ上げている。それだけでなく戦技教導までしているのだから多忙を極めているだろう。
三人の視線が集中するテレビの画面。
《って、結局オマエも見るのかよ!》
《観ないとは言っていないだろ!》
《でも》
ガン見する谷間――たわわなバストに三人は顔がぶつかっても気にした風もなく食い入る。
《……何してんだ》
《おお、ジーン! お前何処に行ってたんだ?》
《後片付けだけど?》
鋭角的なシルエットが特徴の中量二脚のロボットは呆れたようにピッケルや工具の詰まった箱をその場に下ろした。
《何年前の録画を観ているんだ》
《ニ年……くらいか?》
《そんなことはどうでもいい! パープルハート様メッチャ綺麗だろ!》
《レンダリング処理は任せろー!》
《……ハァ》
呆れ果てて何も言えない。早々に立ち去ろうとするジーンの肩を掴み、重量二脚のロボットは丸みを帯びた手で力士のような腕力に物を言わせて引っ張った。
《お前、何も思わないのか?》
《この録画は既に五十三回観た》
《俺まだ四回しか観てないんだけどな……》
《私は六回だ……》
《え、十五回観たんだが……》
若干引き気味のメンバーにちょっと自分が異常なのかな、と振り返りつつもジーンは手を振りほどく。
《しかし不思議だよな。プラネテューヌのシェアは四つの国の中で最下位なんだろう?》
《それはつまり、パープルハート様への信仰心が足りていない証拠だな》
《だが、不思議とプラネテューヌの国民は幸せそうだよなぁ……》
女神パープルハート、もといネプテューヌがシェアにこだわらないということもあるが彼らからすれば信仰する女神の為に何かできないだろうか、と思い悩ませている。
《……待てよ、閃いた。パープルハート様の魅力を他の国民達に見せつけてやればいんじゃないか?》
《そ れ だ》
《いや待て。それだじゃねえ。どうするつもりだ。メガホン片手に街中で叫ぶつもりか?》
《選挙カーばりに迷惑じゃないかそれ……》
カチャカチャとジーンは愛用の狙撃銃の手入れを始めていた。本日の通常業務は終了、後は自由時間である。
《じゃあどうすればいいんだ》
《うーむ。やはり私としては、女神パープルハート様のチートじみた圧倒的強さを国民に見せるべきだと思うんだがな……》
《だが普段は仕事しない方だからな……》
全員がうんうん、と頷いていた。
《だがそれがいい》
《その為にモンスターをおびき寄せる特殊なフェロモン剤を開発してるんだが、中々調整がうまく行かなくてな……》
《隠れて何をしてるかと思ったら、お前そんなことしてたのかセイン》
漆黒の機体――セインは索敵に特化したモノアイをキラリと光らせながら親指を立てる。
《雑魚モンスターとはいえ、無双するパープルハート様。良くないか》
《はげどう。だが、それだけではなぁ……》
あーだこーだ。あーでもないこーでもない。あれでもないこれでもない。三人が話し込んでいるのを余所にして、ジーンは狙撃銃の手入れを終えたのかスコープを覗く。高出力のエネルギーライフルである特性として距離による減衰が少ない。その為、スコープの倍率も高めに設定してある。二つ折りにして背部のバックパック右側に背負うと、今度は小さなコンテナを持ち出す。
ボタンを押して中から出てくるのは、サブマシンガンを搭載したセントリーガン。接続がうまくいっているかどうかの確認をしてから、給弾機構をチェックする。自動砲台の特性上、設置してからは破壊されるか残弾が尽きるまで確実に稼動しなくてはならない。
《おいジーン! お前も黙々と装備の点検してないでこっちに混ざれ!》
《バカ、やめろ。セントリーガンの手入れ中だ!》
キュイーン……。起動音に《あっ……》と四人の声が重なった。次の瞬間――マズルフラッシュが室内をしつこく照らした。照準を定めた機械はロックするなり射撃を始めている。
《あーばばばばばば!!!》
《このバカ! アホ! だから邪魔するなって言った!》
咄嗟にジーンは特殊兵装のシールド発生装置に手を伸ばして設置した。自分の射撃を自分で防ぐという間抜けっぷりに頭が痛くなってくる。光学障壁によって射撃は防がれているものの、身動きが取れない。
《任せろ! とりゃー!》
軽量型の機体が手にしたのは、大型のスタンガン。テーザー銃のようにも見えるそれに電流が充填され、セントリーガンに向けて放つと、光球が爆ぜて電子機器の機能を一時的にショートさせた。ジーンがその隙にスイッチを切る。
室内に充満する硝煙の香り。そして見るも無残に弾丸によって穿たれたテレビの画面。
《……これ、経費で落ちるか?》
《シロトラ教官の地獄メニュー付きでならな》
《セイン。これはお前持ちな》
《そんなー(´・ω・`)》
《溶鉱炉に出荷するぞ貴様!》
ジーンのキレ気味な電子音声にセインがしょんぼりと肩を落とした。
《まぁまぁ。やってしまったものは仕方ないじゃないか。な?》
《ディルは甘いな》
《それより。何かいい案はないか、ジーン》
《そうまで言うなら犬耳でも猫耳でも生やしてやればいいじゃないか》
半ば面倒そうに、投げやりに言ってからセントリーガンの動作確認を身を持ってチェックしたので左腕にマウントする。サイドアームに大口径のハンドガンを一挺。シールドの電源を切って、背部バックパックのエネルギータンクに接続して充電しておく。
《ジーン、お前……》
ワナワナと声を震わせて、ディルと呼ばれた重量型ロボットが肩を掴んだ。丸みを帯びたフォルムは傾斜装甲の特性を活かして高い防御力を誇るものの、その重量はどちらかと言えば中量型のジーンに近い。あまりに適当でぞんざいな答えに、頭に来たのかもしれない。謝ろうかと思った瞬間、バシバシと肩を叩かれてちょっと装甲が凹んだ。
《お前――天才かッ!!》
《……は?》
《そうだ、何故そんなシンプルで最強の答えに気づかなかったんだオレ達は!》
《まったくだ! 流石はジーン、俺達に気づかない答えを見つけるとは! やはりプラネテューヌ第三資源採掘場の参謀は違うぜ!》
親指を立てて褒め称える軽量型の機体――テーザー銃を背負いながら、シュラはいそいそと散らかった部品を掃除している。
《よし、そうと決まれば計画変更だ! シロトラ様も喜ぶだろう!》
《ああ任せろ! ちょうど難航していた気晴らしに作ってやろうじゃないか!》
《材料を集めるのに関してはギルドに発注しておけば親切な人がやってくれるだろうしな!》
ただし報酬は彼らの給料から差し引かれているのを知らない。
盛り上がる三人を遠巻きに眺めて、ジーンは転職を考えていた。
『○月×日 今日の天気 晴れ
今日もプラネテューヌ第三資源採掘場での仕事。いつも通りの仕事を終えてから、みんなと演習でもしようと思っていたら置いて行かれた。パープルハート様を信仰するのはいいけれど、後片付けをしないのはどうかと思う。せめてそれをしてくれたらもうちょっとこちらの態度も改めるのに。それと、何やら私の一言で余計なスイッチが入ってしまったのか彼らがめっちゃやる気出してる。それぐらい仕事にも励んでくれたら演習に時間が割けるのに。やっぱりみんなバカなんだと思いました』――ジーンの日記より