超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
《よーし。こっちは大体集まった……っすけど……》
レオルドが倒したスライヌから耳を採る。相手は既に死んでいるのでいいが――。
「ぬ、ぬらぁぁ……」
「へっへっへ……」
涙目で震えるスライヌは、壁際に追い込まれて逃げ場がない。その怯えきったスライヌを捕まえると、エヌラスは尻尾を鷲掴みにして力一杯引き千切った。
「ぬアッーーーー!!!!」
絶叫が響き渡り、捨てるように投げられたスライヌは泣きながら跳ねて逃げていく。
「ちょれぇ」
《ひでぇ……》
まさかの生け捕りだった。既にその手で犠牲となったスライヌが何匹か逃げ出している。
《これなら二手に分かれた方が早そうっすね。スライヌくらいでしたら自分でもどうにかなりますし》
「んじゃ、俺は向こうで集めてくる」
《了解っす》
二手に分かれて、レオルドは引き続きスライヌ達を狩り始めた。二挺のサブマシンガンを構えて、倒したスライヌから耳を剥ぐ。
《よいしょ、よいしょ》
外さない距離で狙う。エヌラスがそうしてたように、剣の間合いからやや離れた位置に相手を捕らえてから掃射。瞬く間に蜂の巣になった相手に手応えを感じながら頷く。
《俺の戦い方が今まで悪かったんすね……》
ただ撃って、ただ斬って。おそらくそれがダメだったんだろう。シロトラ教官との訓練では演習用ビットを大量に相手していただけに、そんな戦法が身についてしまっていた。
武器の効率的な使い方を学んだ気がして、レオルドはサブマシンガンの残弾が想定以上に少なくなっていることに気づくのに遅れる。残りのマガジンはひとつだ。背部に背負って、グレートソードを構える。
まず牽制。体勢を崩し、出鼻を挫いた相手に向けて一閃。分厚い大剣を力任せに叩きつけるだけでも相当な打撃力になる。
《ちょっとコツが分かった気がするっす》
これなら――とスライヌ達を狩りたて、他のモンスター達の相手もしつつ素材を集めていたレオルドだったが、スライヌ達が一斉に逃げ出すと後を追った。
《こらー、逃がさないっすよ!》
チャージングシステムを起動。即座に群れを一薙ぎで蹴散らすと、グレートソードを地面に突き立てて満足そうに頷く。
《よし!》
耳と尻尾を集めるレオルドが、背後からの気配に振り返る。
「ぬらぁ~」
《…………》
スライヌがいた。だが、その全長はレオルドが見上げるほどにでかい。
一方、エヌラスはと言うと。もう武器を使うのが面倒になってきたのか素手でスライヌを捕まえては耳を千切っては投げ、尻尾を掴んでは千切っては投げ。猟奇的な光景に他のモンスター達が恐れをなして逃げていく。だんだんそれを追い掛けるのも面倒になってきてレイジングブル・マキシカスタムで背中を撃つともんどり打って倒れる。このままではバーチャフォレストの生態系が崩れるんじゃないだろうかと危ぶまれるかに思われた。
その時、レオルドの悲鳴が聞こえてきた。
《ヒィィィィィィ!! たぁぁすけてぇぇぇぇぇ!!!》
「ん?」
振り向くと、ブースターに燃焼剤を追加投与して加速したレオルドが逃げてきている。その後ろを追いかけてくるのは、巨大なスライヌ。ビッグスライヌ――いや、キングスライヌだった。
《こんなん聞いてないっすよぉぉぉっ!!》
「どぉぉぉぉ!? お前、バカ! こっち来んなぁぁぁぁ!!」
「ぬらぁぁ~~!!」
どうやら仲間を大量にやられて親玉が出てきたらしい。流石に想定外の事態に、レオルドが慌てて逃げ出していたがそれにエヌラスまで巻き込まれた。全身に紫電を纏いながら並走しながらボスをどうするか相談する。
《ど、どどどうするっすか!?》
「仕方ねぇ、迎え撃つぞ!」
《足速いっすね!》
「今はそれどころじゃねぇ! 他になんか武器はねぇのか!」
《手榴弾あるっす! でもこれめっちゃ危ないっすよ!?》
「構わん、やれ! いいか、俺がどうにか足止めするからあいつの口にねじ込め!」
《あ!》
「なんだ!」
《燃焼剤切れたっす!》
「無計画にも程があるだろうが!!」
一気に減速したレオルドに、急制動を掛けたエヌラスはUターンしてキングスライヌに向かって斬馬偃月刀を投擲。回転する刃が顔に当たって足を止めた隙にレオルドが左前腕部に装着したグレネードポーチから手榴弾を取り出す。
眉をつり上げてキングスライヌが突進してくる。ぷよぷよと身体を震わせながら迫る姿には少し緊張感が欠けるものの、図体だけに迫力があった。それに、エヌラスは足に紫電を更に集中させて地面を蹴る。
「“電導”――アクセル・ストライィィクッ!」
魔術による電流を叩きこまれたキングスライヌだが、弾力性のある身体に弾かれてエヌラスの身体が宙に飛んだ。しかし、空中で身体を一回転させながら更にもう一撃――。
「――かーらーの、アクセル・インパクトォ!」
「ぬらぁっ!?」
眉間に叩きこまれた強烈な踵落としによってキングスライヌは大きく仰け反った。
その間にレオルドは既に手榴弾の起動スイッチを押している。できるだけ近づいて、投げようと振りかぶり――足元の注意が疎かになっていた。
《お、おぉわぁぁぁ!?》
「のぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
手元が狂い、手榴弾はエヌラスに向かって飛んでいく。咄嗟にキャッチしてキングスライヌの口に向かって全力で投げる。着地して、その場から遠ざかる。次の瞬間、キングスライヌが爆発四散した。
怒りで肩を揺らしながらエヌラスはレオルドを立ち上がらせる。
「おま、バッ、お前! お前ぇぇぇ!?」
《スマンっす! マジごめんなさい! だ、大丈夫っすか!?》
「死ぬかと思ったわ! 手榴弾顔面直撃とかいくらなんでもギャグ補正だろうが死ぬからな!? 致命傷だからな!?」
しかも一撃でキングスライヌが跡形もなく肉片(ゼリー片?)を撒き散らして死んでいるところを見るに、あの手榴弾は相当な火力があったらしい。それが直撃――考えたくもなかった。
「ちなみにあの手榴弾、威力で言うならどれぐらいなんだ」
《そうっすねぇ……これ一個で燃料たっぷりタンクローリーが一台分っすかね?》
「殺す気か! 死ぬわボケェ!」
そんなものが、あと二つほど手元に残っている。そんな報告は聴きたくなかった。一発限りであってくれと切に願う。
「はぁー……まぁいいや。とにかくスライヌの耳と尻尾も集まったし……次行こうぜ、次」
《そっすね。ヤンキーキャットの生息する洞窟までだったら案内するっす》
案の定、そこでも二人はグッダグダな戦いを繰り広げることになった。
プラネタワーではユウコが部屋の間取りやキッチンの使い勝手を調べて回っている。どうやらハウスキーパーとして雇われることに興味が尽きないようだ。
「うーん、よし。大体は把握できたかな。じゃー次は……プラネテューヌの案内かなぁ」
「あ、それでしたらわたしが案内してあげますよ。ちょうど買い出しも頼まれていましたし」
「ほんと? ありがとー、ギアちゃん」
「それで、プラネテューヌのどの辺りを案内すればいいんですか?」
「そうだねぇ。やっぱりスーパーとか、商店街? どういう品質でどれぐらいの値段でどんな風に陳列されてるとか、そこら辺かな!」
「や、やっぱり商売人として見る所なんですね……」
「そりゃー……ねぇ? わたし他の次元に来るなんて今日が初体験だもん」
ネプテューヌは寝っ転がってゲームに夢中になっている。
「よーし、ここでジャーンプッ! カンガルーのように! って、あー! 落ちたぁ、嘘だー! 今絶対わたしボタン押したよー! くっそー、もう一回!」
「……ネプちゃん、女神様だよね」
「はい……」
「いや、今朝の騒ぎもそうだけどさぁ。こんなんでいいの?」
「今朝の騒ぎ? なにかあったんですか?」
「あれ? あ、そっか。アイちゃんはすぐ仕事で行っちゃったから何も聞いてないのかー……いやね、なんかロボットがデッカイブースターでかっ飛んできて街中に着陸してたんだよね」
事の顛末を話すと、ネプギアがユウコに現在のゲイムギョウ界の近況を述べる。そこは商業国家国王、すんなりと理解した。
「にゃるほどね~。つまり、そのハァドラインって連中は厄介なんだ。じゃあ今朝やってきたあいつらはリーンボックス側のアームドソウルスか……ふんふん」
「B2AMは今国境警備隊などでプラネテューヌの治安維持活動に精力的に励んでるみたいですけど」
「うーん……」
「どうか、したんですか?」
それにユウコは顎に手を当てて考え込んでいる。
「いやさ。なーんか怪しいなぁって」
「え?」
「ほら、私って職業柄、こう言っちゃなんだけど結構他人を疑ってかかるんだよね。商売で裏をかかれたり不正な取引に巻き込まれても面倒だから。そういう連中は片っ端からムショ送りにしてるし」
さらりと怖いことを言っているが聞き流すことにした。
「だからさー、なんか気になるんだよね。そのB2AM?」
「どうしてですか?」
「んー、なんつーか……こう、仕事を建前に国内を歩いてるところとか。国境警備隊とか、後はそのー……資源採掘? プラネテューヌの肝心な肝を押さえてる感じがして。イーちゃん、国内の経済状態とか分かります?」
「い、イーちゃん……」
「それでしたらお調べできますよ? ただ、データをまとめるのにみっかかかりますけど」
「三日かー……」
それに「うーん」と唸る。ユウコにしてみれば、情報には鮮度がある。魚介類以上の新鮮さはすぐに劣化し、それは株と同じだ。一分一秒での計算速度がモノを言う商業国家、それをまとめ上げるユウコにとって三日待つというのは少々苦行だ。だが、無いものは無い。情報が無ければ算出もできない。
「お願いできます?」
「はい、いいですよ」
「あと出来れば、管理会社とかも一緒に」
「分かりました」
「よーし、後は自分の足で見てみようかな。じゃあギアちゃん、プラネテューヌの案内よっろしくぅ!」
「は、はい! じゃあお姉ちゃん、いーすんさん。行ってきますね」
「はい。気をつけて行ってきてください」
「いってらっしゃーい、ネプ――ぎゃあああああ!! こんなところでボスエンカウントとかセーブしてないよー!?」
ネプテューヌの悲鳴はさておき、二人は街へ繰り出した。