超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
テーブルの上に並べられる料理の山に、ネプテューヌ達が目を白黒させている。
「ふぅ……いやー、頑張っちゃったね!」
「頑張っちゃったですぅ」
『いえーい(ですぅ)』
山盛りサラダに、山盛りポテト。何からなにまで山積みにされていた。もはやバイキング料理の盛り合わせ状態に度が過ぎた量を見てアイエフが頭を痛めている。
「いやいやいや、いくらなんでも作り過ぎじゃないかしら? こんなに食いきれないわよ?」
「おい、タダ飯喰らいの大食らいの穀潰し。出番だ!」
「俺に全部食えってのかよ……」
「残飯処理はお前の仕事の一つだろ?」
「はいはいありがたく食べさせていただきます!」
『いただきまーす』
手を合わせて、全員が箸を手にして食べ始めると、すぐにいつもと違う味に驚いた。
「あら、美味しい……」
「ユウコさんのおかげで今日のお料理はすっごい量になっちゃったです。えぬえぬ、い~っぱい食べるですよ~」
「もぐもぐもぐ……おう」
「エヌラスさん、ポテトサラダ美味しいですか?」
「ユウコの作る料理は大抵美味い。まずいもん作ったの見たことも食ったこともないしな」
モグモグ。エヌラスはポテトサラダを頬張りながらご飯を合間に挟みつつ、空っぽの茶碗を差し出す。
「はいはい、おかわりなー」
「エヌラス食べるの早いね」
「もっと良く噛んで食べなさいよ。身体に悪いわよ?」
「分かっちゃいるが、俺は燃費悪いんだ」
銀鍵守護器官が無限の魔力を生み出すとはいえ、それとは別にエヌラスの身体を動かすための熱量――カロリーは別途必要となる。常に燃料を焚べている蒸気機関車のようなものだ。その上、今は箸を持って料理をつついている右腕の神経と魔術回路の同調にも常に使用されている。
「ほい」
ご飯を山盛りに盛ってエヌラスに茶碗を渡す。受け取るなり、他の料理と一緒に胃袋に収め始めた。その食いっぷりは淡々としているのに異様な速度でかきこまれていく。がっつくような浅ましい真似はしないが、その遠慮のない食事風景を見てユウコは笑っていた。
「お前、どんだけ腹減ってたんだよぅ」
「うるへ。美味いんだからしょうがねぇだろ。おかわり」
「あーはいはい。好きに食えよもう」
「あれ? ユウコは食べないの?」
「え? あー、私はいいかな。普通の食事じゃないし」
「お前吸血鬼だもんな」
「そうだったですか!? じゃあトマトジュース持ってくるです?」
「いやいや、気にしなくていいよーコンちゃん。見てるだけで楽しいし」
テーブルに頬杖をついてネプテューヌ達の食べる姿を見ているだけでお腹が満たされる。
「食べないのに、そんな胸……」
「ん?」
テーブルの上に乗っかっている大きな胸が二つ。
「ぐぬぬ……分かっているけど、なんか悔しいわ……」
もぐもぐ……。
「一体何を食べたらそんなに大きくなるです?」
「えー、コンちゃんも私に負けず劣らず大きいと思うけど」
「もぐもぐもぐもぐ……」
「……エヌラスさん、全然動じないでご飯食べてますね」
イストワールも自分用の小さな食器に載せられた料理を食べながらエヌラスの様子を見るが、全く動じる様子はなく、ただただご飯を食べる機械となっていた。
「ユウコの胸のでかさとか気にしてたら身が持たねぇからな」
「やっぱり触ったり揉んだり?」
「…………」
「そこは否定しろやオメー! おかわり? おかわりだよな! 茶碗寄越せよ!」
顔を真っ赤にしたユウコがキャンキャン騒ぎながらエヌラスの茶碗に山盛りのご飯を乗せて渡す。
「あ、あはは……何というかユウコさん、お母さんみたいですね」
「よく家庭的とか言われるけど、お母さんとまで言われるのは個人的にショックかも……」
結局大半をエヌラスが平らげて、綺麗に空となった食器をユウコとコンパが片付け始めた。
『ごちそうさまでした』
「はい、お粗末さまでした。んじゃーパパっと洗っちゃうか!」
「エヌラスー」
「ん? どした、ネプテューヌ」
「お風呂入ろ!」
「え、あー……」
言われてから、イストワールとアイエフの顔色を窺う。アイエフからは猜疑の視線、イストワールは我関せずといった様子だ。
「ふたりでか?」
「ネプギアも一緒がいい?」
「え、わたしも……? いいんですか」
「ひとりやふたりも変わんないって! ね、エヌラス」
「いやー、まぁ……そうかもしれんが」
「じゃあいいよね! オッケー! じゃあネプギア、着替えを持ってお風呂場にレッツゴーだよー!」
「人の話まったく聞きやがらねぇ……」
ただ、ここで断るとまた後でうるさい。エヌラスは仕方なくネプテューヌ達と一緒にお風呂に入ることにした。
教会のお風呂は確かに広い。シャワーで軽く汗を流していると、脱衣場で服を脱いだネプテューヌとネプギアが入ってくる。ちゃんと身体にタオルは巻いていた。
「なんかこうしてエヌラスと一緒にお風呂って久しぶりだよね」
「というか俺も人並な生活出来るようになったの、ほんっとうについ最近だしな」
教会で保護と言い出さなかったら今でも邪神を追って社会の最底辺をぶっちぎりで突っ走っていたに違いない。
「背中流してあげるね」
「お、おう……急にどうしたんだよ、ネプテューヌ」
「え? なにが?」
「いや、なんか唐突だと思ってな」
泡立てたスポンジでエヌラスの背中を洗い始めるネプテューヌに、エヌラスは眉を寄せていた。確かにいつも人を振り回す元気なネプテューヌだが、今日は普段に比べると強引な気がする。
「んもー、エヌラスは固いんだから。だってこっち来る前とか、来てからも結局わたしなんも出来てないんだよ? そろそろいい頃合じゃん!」
「なんのタイミング図ってんだよお前……」
「えー? そりゃ……もう、エヌラスはエッチなんだからぁ。わたしの口から言わせる気? そんなのネプテューヌ困っちゃーう」
「うわー、お前のそのノリ久々過ぎてついていけねー……俺も歳だなー……」
それとは別に、ネプギアはエヌラスの背中を流していた。
「でも、エヌラスさん。アダルトゲイムギョウ界で戦い続けて、こんなに身体傷だらけになってます」
「傷なんてほっときゃ治る。ツバでもつけときゃいいさ」
「なんか歴戦の勇士って感じだね。わたしの知ってるエヌラスの身体、もうちょっと綺麗だった気がするんだけどなぁ」
「見苦しくて悪かったな」
「あ、ううん。別に嫌とかじゃないんだ。……嫌じゃ、ないんだけどさ。エヌラスがこうして戦い続けてたのにゲイムギョウ界は平和続きでわたしはゲーム三昧してたとか思うとちょっと良心の呵責が~……」
「…………んなもん、お前が気にしてどうすんだバーカ」
「バ、バカ!? 女神に向かってバカ!? バカって言ったほうがバカなんだからねバカー!」
「はいはいそうですね、俺もバカだよ」
「開き直った! 大人ってずるい汚い!」
「俺が好きでやってんだ。気に病むことねぇよ」
だが、ネプギアとネプテューヌの手が止まる。
背中に刻まれている傷跡をエヌラスは自分の目で見たことがあるのだろうか。
「……気にするよ」
「そうですよ」
「元はと言えば、俺が始めた戦いだ。俺がすべての元凶だ。お前達のせいじゃない」
「でも、だって……こんな傷」
「考えてもみろよ。俺ひとりで、アルシュベイトとバルド・ギアとドラグレイスとムルフェスト、クロックサイコ。大魔導師に極めつけはアゴウの守護女神まで敵に回して戦ってんだぜ? こうもなるさ」
「……よく負けませんでしたね」
「何度も負けたさ。死ななきゃ安いもんだ」
簡単に言うが、相手をしたネプテューヌたちだからこそ笑えなかった。
「って、いつまで人の背中流してんだ。もういいだろ」
「あ、ごめん。やっぱり前も洗ってほしいよねぇ。もーエヌラスはエロエロで困っちゃうなぁ」
「お前の頭悪すぎて俺も困ってる。たすけてネプギア」
「……えーっと、ダメでしょうか」
「んん~? なんで頬を赤らめてちょっと上目遣いで頼んでんだぁ? おっかしぃなぁ俺が知ってるネプギアの反応とちょっとちげぇぞぉ?」
「だって、ほらー。エヌラス。そろそろ濡れ場は必要だよ? ゲームとかでも序盤に軽く……ね」
「ね、じゃなくて……ん、こら。触るな」
「大丈夫だって。ほら、身体洗ってるんだからしょうがないよ」
「そうですよ。身体洗っているんですからこうするのは仕方ないんです。そ、そういうことなので……ゴシゴシ」
「あのな、ネプギア。フリだけでも身体を洗ってくれるのは嬉しいんだがガン見するのやめろ?」