※この作品はR-18です。

超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽-   作:アメリカ兎

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エピソード36 ブリテンの王様候補が仲間になりました

 

 突然の乱入者に邪神も警戒したが、それを敵だと認識してからの動きは機敏だった。エヌラスを相手取りながら、アーサーの持つ魔法剣を防ぐ。

 

「お主、武器はないのか?」

 無手で戦い続けるエヌラスにアーサーが問う。口元を拭いながら、コートを脱ぎ捨てる。

 

「あの野郎相手に武器を出すとか、ただの自殺行為だと知ってるからな。ガチで殴り合ったほうがいい」

「むぅ……それではわたしの出番が……」

「魔法で援護でもしてくれりゃ御の字だ!」

 “電導(コイル)”を回して、エヌラスが帯電すると邪神と一進一退の攻防を繰り広げた。その横からアーサーがカードを取り出してエクスカリバーに纏わせる。

 

「離れよ、黒い――二人とも黒いな……」

 エヌラスは歯噛みしながら、邪神の攻撃をわざと受けて下がった。それにアーサーはエクスカリバーを振り下ろすと、閃光に呑まれて吹き飛んでいく。全身を覆う黒い霧が晴れてようやく全貌が明らかになるが、その異様さにアーサーが言葉を呑んだ。

 

「うぅむ。やはり名前がわからぬと不便だな」

「チッ……仕方ねぇ! 仕切り直しだ!」

 エヌラスが足に紫電を集中させて蹴り飛ばす。アクセル・ストライクから繋ぐのは、撃鉄のついた日本刀。更に“電導”を回して、鞘の先端で打ち上げる。

 

「“超電磁(レールガン)”抜刀術壱式――“迅雷・昇竜”!」

 天高く伸びる閃刃が邪神の姿をかき消した。全身を焼け焦がしながら邪神は滝に呑まれて落ちていく。これで水落ちは二度目だが、倒したとは思えない。エヌラスは日本刀を転送すると、深く息を吐いた。連続三時間戦闘――邪神と命の綱渡りをしてもいれば神経がすり減る。

 胸ポケットからタバコを取り出そうとして、自分が脱ぎ捨てたことを思い出すと少女がコートを差し出していた。

 

「ほれ、探し物はこれであろう?」

「……ありがとよ」

「しかし驚いた。お主、相当な腕を持っているようだな」

 エヌラスはドラッグシガーを取り出すと、その日二本目となる喫煙に火を点ける。本来ならこんな短期間で吸っていい品物でもない。だが、常時魔術を使用しながらの肉弾戦は想定以上に疲労が早かった。

 

「さて邪魔者もいなくなった。改めて――わたしの名前はミリオンアーサー。百万人のアーサーの頂点に立つ、アーサー王の候補だ」

「……エヌラスだ。こんなんでも一応は旧神だ」

「“えるだー・ごっど”? とは、なんだ?」

「人類の守護者とでも思ってくれれば、いい……」

「大丈夫か? 顔色が悪いぞ」

 頭がふらつく。かぶりを振って、エヌラスはモヤが掛かる視界を振り払おうとするが今度は足元がおぼつかなくなっていた。踏みとどまり、荒れる呼吸をなんとか整えようとするがふんだんに使用した黄金の蜂蜜酒を原料とするドラッグシガーのもたらす酩酊感にエヌラスがバランスを崩す。

 

「ふぐっ――」

 ぽよん。平均よりもややサイズの大きいミリオンアーサーの胸に、頭を預けてしまった。左手でタバコを持っているのでそちらの手を使うわけにもいかず、かといって右腕は連続した魔術の行使に神経接続が難航している。

 驚きに目を見開いて、顔を赤らめながら狼狽えるミリオンアーサーがどうするべきか迷っていた。

 

「わ、わ!? な、何をするかお主!? 見ず知らずの人の胸に頭を預けるとは」

「わるい……、すぐ、離れる……」

「いや、まぁ悪い気はしないが……王たるもの、そう簡単に肌を預けるわけにもいかんのだ。すまないが離れてくれるか?」

「そうしたい、が……」

 エヌラスが膝をつき、タバコを持ったままどうにか立ち上がろうとするが全身に力が入らない。それもそのはずだ。

 身体強化の補助に、再生も併行して、更には正面から邪神と殴りあうとは正気の沙汰ではない。酷使される全身の神経と魔術回路が肉体的な過労を訴えていてもそれは当然の見返りだ。

 

「――くそ……」

「あ、おい! しっかりせよ!」

「…………」

 タバコを持ったままエヌラスの体が横に倒れる。慌てて身体を起こそうとして、ミリオンアーサーは微かな寝息に手を止めた。

 

「……こいつ寝おった」

 戦うだけ戦って、終わったら寝る。まるで獣だ。だが、通常の獣であれば敵に隙をさらけ出すような睡眠はしない。ということは、エヌラスはミリオンアーサーに対して、寝込みを襲うような真似はしない程度の信頼を寄せていることになる。

 

「ふむ……」

 状況を確認して、アーサーはエヌラスをどうするべきか考えた。

 

「エヌラス!」

「む?」

 凛とした女性の声に、空を見上げると紫の美女が降りてくる。それこそプラネテューヌの守護女神、パープルハートその人だった。

 

「ひどい怪我……貴方は?」

「う、うむ。通りすがりのミリオンアーサーだ」

 事情を説明すると、納得してくれたのかサポート妖精のチーカマを連れて紹介する。

 

「あなたがプラネテューヌ領の女神、ネプテューヌね」

「うん、そうだよー! よろしくねチーカマちゃん、ミリオンアーサー……って、ちょっと呼びにくいからミリアサちゃんでいい?」

「うむ。わたしは一向に構わんぞ」

 木陰で休ませているエヌラスの状態はあまり良くない。今は眠っているが、うなされているようだ。額に手を当てると、その熱にネプテューヌが驚いていた。

 

「ひどい熱。とりあえず、一旦教会に戻らなきゃ。ミリアサちゃんもチーカマちゃんも来るよね?」

「うむ、勿論だ。国の守護女神が一緒とあっては心強い」

 

 

 

 ミリオンアーサーとチーカマの二人を連れて、高熱を出してうなされるエヌラスを担いで教会に戻ってくるとお茶を飲んでいたユウコとイストワールが慌てていた。隣町でカフェに寄っていたネプギアとアイエフも戻ってきたが、エヌラスの姿を見て持ち帰ってきたケーキを落としそうになる。

 

「あちゃー……こいつやっぱこうなってきやがったか……コイツの看病は私に任せて」

 そう言うと、ユウコはうなされるエヌラスを“ひょい”と背負うとベッドに寝かせた。それにアーサーとチーカマが目を丸くする。

 

「か、片手で持ち上げたぞあの女性……!?」

「すごい……」

「えっと、あの人はユウコさん。教会でハウスキーパーとして雇った人です」

「さて……では、ミリオンアーサーさん。貴方の見た、邪神についてお伺いしてもよろしいでしょうか」

「うむ。といっても、わたしが見たのも曖昧でな……」

 自分が見た騎士甲冑に全身を包んだ邪神。黒い霧のようなものに身体を覆われて不鮮明ではあったが、あの禍々しさは自分が見てきたいずれにも該当しない。ブリテンと呼ばれる地を攻める『外敵』にもあのような相手はいなかった。

 

「――というわけだ。エヌラスは「アレを相手に武器を出すのは自殺行為」と言っておったな」

「なるほど、わかりました」

「よいしょー。とりあえずあのバカ、応急手当してベッドに寝かしつけといたよ」

 テキパキと汚れた服を洗濯機にぶち込んで回し始める。

 

「ユウコ、エヌラスの容態はどうなの?」

「心配するだけ無駄無駄。熱にうなされてるけど、全身の補強した身体機能を元に戻してるだけだし。邪神と戦ってアレなら、まだ軽症だよ。まぁ風邪引いたもんだと思っておけばいいよ。怪我なんてほっときゃ治るし」

 付き合いが長いだけあって、流石手馴れていた。しかし、口をへの字に曲げて少し不満そうにしている。というのも、相変わらず怪我だらけな事が不服らしい。

 

「まったくよー、あの野郎は着替え用意するこっちの身にもなれってーの」

「でも、エヌラスひとりで倒せる相手なの?」

「倒せると思うよ。……ただ」

「ただ?」

 なんだ、その程度の相手か。胸を撫で下ろそうとするが、ユウコは言いにくそうにしていた。

 

「疑問なんだよね。変神して、シャイニング・インパクトを撃てば大概それで焼滅するのに、アイツなんでか知らないけど毎回あんな感じに怪我してるんだよ。周りの被害を抑えこもうとして、テメェで怪我してりゃ世話ないっての……まったく、変なところで気を遣うんだから」

 心当たりは沢山ある。周りの被害を鑑みなければ、エヌラスは即決するだろう。だが、アダルトゲイムギョウ界も、このゲイムギョウ界もエヌラスにとっては守らなければならない大切な場所だ。

 

「他の国にも、一応連絡は入れておきますね。もし、また邪神が出てきたその時は……ミリオンアーサーさん、力を貸していただけますか?」

「うむ。願ってもないことだ。わたしで良ければ力を貸そう。聞けば、このゲイムギョウ界も今は大変なようだからな」

「でもいいんですか? わたし達までお世話になって」

「わたし的には全然オッケーだよー、チーカマちゃん! 賑やかなのが一番だもん!」

「ネプテューヌさんもこう言っていますし、遠慮なさらないでください」

 その日は、ミリオンアーサーもチーカマも教会で世話になることにした。

 

 

 

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