超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
夜のプラネテューヌ第三資源採掘場では、セイン達がシロトラを前に整列していた。
B2AM総合特務班『トライアド』のメンバー構成、僅か四名。
シロトラの隣にはシャニも完全武装で並んでいる。腕を組んでセインを睨みつけていた。
《久しいな、“元”特務隊》
《うむ。元気そうだな、シャニ。相変わらずカリカリベーコンもビックリな苛立ちよう》
《お前のそういう所が俺は嫌いだ。その飄々としたバカな発言さえなければ、特務隊隊長も務められただろうに》
《片腹痛いわー、マジ片腹痛いわー。やめ、ちょ、脇腹痛い!》
《貴様の! そういう! ところだ!》
シャニがセインの脇を執拗に殴っていた。特務隊に所属していた頃のセインは成績優秀、単独行動でも連携行動においてもシャニを上回る戦績トップに輝いていた――のだが、その性格が災いしてか部隊内での衝突が絶えず、ついでに言えばそれに付き合う仲間が非常に限られている。そこでシロトラが取った措置が、特務隊より除隊。新たに設立した小規模の精鋭、総合特務班『トライアド』班長として任命することだった。だからこそシャニは嫌味と皮肉を込めてセインを“元”特務隊と蔑んでいる。
《それで報告にあった例の怪物とは?》
《はい。全身を黒い霧に覆われた人型です。交戦したものの》
《決定打にはならなかった、か。もう一人は》
《例の、教会近辺に甚大な被害をもたらした破壊神です。写真と一致しています》
シュラが渡すのは、映像記録と撮影データの入ったメモリ。それをシロトラが読み取る。
《……確認した》
《名前はエヌラス。成人男性。年齢不詳。左目に刀傷。黒服。主な使用武器は刀剣、それ以外にも大型自動二輪を自らの影へ収納。恐らくは魔術の類でしょう》
《他に情報は》
《ケモミミ好きです》
《なるほど。話が合いそうだ……》
シロトラが少し好意を含めて頷いた。
《それで、セイン。例の薬は出来たのか》
《あ、いえ。ジーンが素晴らしい提案をしたのでそちらを息抜きに製造していました》
《ほう……効果は》
《はい。ケモミミとしっぽが生える、素晴らしい薬です!》
シロトラが固まる。シャニが固まった。
《…………》
《これをパープルハート様に飲ませた日には突然生えたケモミミに慌てふためき、更にはモフモフな尻尾を揺らす姿にはこれはもうシェア爆増し間違いなしです!!》
《確かに素晴らしい提案だ》
《ご理解いただけますか、シロトラ教官!》
《……セイン》
《はい!》
静かに告げるシロトラの言葉は、どこか残念そうにしている。落胆の色と見て間違いはなさそうだ。
《……生えるのは耳と尻尾だけか?》
《……はい?》
《生えるのは、ケモミミと尻尾だけかと聞いている》
《あ、いや……はい。現時点ではそうです、ね》
どこか圧のある問いに、セインがしどろもどろに応える。
《それで……》
《セイン。確かにケモミミパープルハート様は私も見たい。大いに見たい。内臓はじけ飛ぶほど見たい――むしろ見れない生涯に意味など無い》
《教官!? 本気ですか!? このバカの、言うこと間に受けているんですか!? そんな薬作れるはずがないでしょう!?》
《俺は現に作ったぞ! まだ調合の配分とその他不安な点はあるが、形にはなっている!》
《で、その薬は?》
《割られた。例の怪物に》
その一言にシロトラが唸った。
《そいつは直々に私が手を下すとして――セイン。いいか、私が本当に見たいのはな》
《はい》
《ふたなりパープルハート様が一番見たい!》
《なんですってぇぇぇっ!?》
《見たくはないか。自分に本来無いものがあって戸惑う姿! そして触れてからその快楽の虜になるまでひたすらに射精管理してやりたい! 涙目で懇願してくるくらいにまで調教したい!》
《シロトラ総司令官……時々自分は貴方の考えていることが分かりません……》
どうやらこの場において唯一冷静なのはシャニとジーンだけのようだが――。
《す、素晴らしい。流石シロトラ教官! 俺達の性癖の一歩上を常に行く方だ!》
《一生ついていきます、シロトラ教官!》
《俺、B2AMで良かった……!》
《ふたなり女神のガチイキアクメか……ご飯十杯は固いな……》
《こぉの変態狂人集団共がぁぁぁぁぁぁっ!!! 帰りましょうシロトラ総司令官!》
《嫌いか、ふたなり》
《いえ、その……嫌いとかそういうのではなく……》
《嫌いか、シャニ》
《……いや、その……目的からあまり道を外れるのはどうかと……そもそも、セインが製造しているのはモンスターを誘引するフェロモン剤でしょう? それを他国に向けて発射、モンスター被害によって各国のシェアを低下させよう、という計画だったのでは……?》
その為に様々な薬の調合を任せているが、何分モンスターの体液などを使用したフェロモン剤は特定のモンスターだけでは意味が無い。その薬の調合にも金が必要になる。B2AMの経営難、というのも製薬に資金を割いているのが原因だった。
《そんなもの、ケモミミふたなりパープルハート様に比べればどうでもよくないか?》
《たまに思うのですが、シロトラ総司令官。貴方もしかして我々の中で一番頭がおかしいんじゃないかと思う時があります。時々ですが》
《まぁいい。報告、ご苦労だったトライアド。引き続き任務にあたれ》
《了解です!》
四人が敬礼をすると、シロトラが背を向けて走り去っていく。シャニは一度セインに向き直ると、深い溜息をこぼす。
《……こんな奴に俺は一時期連敗記録を更新していたかと思うと、反吐が出る》
《ポリ袋持ってくるか?》
《いらんわ!!》
《気難しいやつだなぁ、シャニは》
プラネテューヌの夜は長い――。
教会の床に突っ伏すミリオンアーサーと、どや顔で仁王立ちしているのは変身を解除したネプテューヌだった。既に十二連敗。操作に慣れてきたはいいが、それでもやはりコマンドの入力ミスなどで不慣れなアーサーはあと一歩のところで負けている。
「貧弱貧弱ぅ! ミリアサちゃん恐るるに足らずだよー!」
「うぅー、なぜ勝てんのだぁー! ネプテューヌよ、もう一回だ!」
「ふっふーん。何度やっても無駄無駄ぁ!」
二人が仲良くゲームをしているのをチーカマとエヌラスがソファーに座って眺めていた。その隣にネプギアが座る。
「まったく。アーサーもいい加減に諦めたらいいのに」
「つーかよく続くなあの二人……」
「お姉ちゃん、お風呂入らなくていいのかなぁ」
「そろそろ日付変わりそうなんだが……」
エヌラスがやれやれと重い腰を上げて、ネプテューヌの隣に座った。
「どうしたの、エヌラス?」
「んー? いや、別に」
ひょいと持ち上げて、自分の足の間にネプテューヌを下ろす。抱きかかえるようにして顎を乗せた。
「ねぷっ! う、うぅどうしたのさエヌラス」
「いやー、連勝してるからちょっとしたご褒美だ」
「むぅ。こう目の前でネプテューヌとイチャイチャされると、実に腹立たしいな! 次こそは負けん! 王の意地を見せてやる!」
「そうこなくちゃ!」
上機嫌なネプテューヌから見えない位置で、エヌラスはアーサーに向けてウインクしてみせる。それに何かの意図を含ませて、気づいた。
「そりゃそりゃー!」
「くっ、なにくそぉ! ここだ!」
「まだまだぁ! てりゃー!」
二人の熱い攻防が繰り広げられる画面。熱中しているネプテューヌに気づかれないようにエヌラスの手が僅かに魔力を帯びる。それが、ほんの少しではあるが太ももに当てられた。ゲームに意識を集中しているネプテューヌにすれば、それは完全に不意打ちだった。
「くっ、うぅん!」
「そこか! とやー!」
「ねぷっ!? ま、まだだ、まだ終わらんよ! 次の試合で持ち返せばいいもんね! ていうかエヌラス、今わたしの足触らなかった!?」
「触ってねぇよ。ほれ」
「あはははははは! 脇、脇はらめぇ!」
「先手必勝ー!!」
「あはは,あは、だめ! 負けちゃう!」
集中力を削がれたネプテューヌに、アーサーは容赦なく攻め立てる。
「エ、エヌラス……ダメ、わたしミリアサちゃんに負けるから、くすぐるのだめぇ」
「ほれ」
「ミリアサちゃんもこんなので勝っていいの!?」
「王たるもの、勝機は逃してはならんのでな! 如何なる状況だろうとも、我が勝利に繋がるのなら利用させてもらおう! これで決まりだ、ネプテューヌ!」
「あっ、あっ、あっーーーー!!! 負けたぁぁ! んもー、エヌラスのバカー! 負けちゃったじゃーん!」
「バカはどっちだ」
むにーっと頬を引っ張られながらも、エヌラスはネプテューヌを抱きかかえていた。
「もうとっくに日付変わりそうなのにいつまでゲームしてんだよ。風呂入って寝ろ」
「えー、あんな負け方納得いかないんだけどなぁ……」
「ネプギアだってずっとお前のこと待ってるんだぞ。ほら、わかったら行け」
「釈然としないけど、しょうがないなぁ。ネプギア、お風呂入ろ」
「うん!」
笑顔でネプテューヌと一緒に着替えを取りに行く二人を見送って、エヌラスはソファーに戻る。
「うむ、確かに勝利はしたが……やはり自分の実力で勝たないとイマイチだな。勝利の美酒というのは、こう、もっと達成感と共に飲むからこその味なのだが」
「そうは言っても、あぁでもしないと勝てなかっただろ。それに、いい加減ゲーム止めて寝ないとお互い明日に響く」
「……お主、もしかしてそれを見越していたのか?」
「どーせ勝つまでやるつもりだったんだろ。お前はともかく、ネプテューヌだったら夜通しやりかねん」
「そうね。アーサーもネプテューヌも、熱中して周りが見えなくなってたし」
「チーカマはやらんのか?」
「もう別にいいわよ。今は眠いし……」
「それはすまなかった。ではすまん、エヌラス。我々は先に寝るぞ」
「あいよ。おやすみ」
「ああ。おやすみ、エヌラス」
「おやすみなさい、覗きの変態さん」
アーサーとチーカマが別室に去って行き、エヌラスは天井を仰ぐ。さて、今夜はどこで寝ようかと考えていた。アイエフとコンパ、イストワールは先に就寝している。
ユウコはと言うと、吸血鬼らしく夜型の生活リズム。
「エヌラス。私、明日の朝早くに一回ユノスダスに戻るからよろしく」
「ん? ああ、分かった。んじゃ俺はお前を向こうに送ったらこっちにすぐ戻る。他の奴らによろしく言っといてくれ」
「はいはい。別に誰も心配してなかったけどね」
「だろうよ」