超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
プルルートが来る。ということで各国の女神達に連絡を入れると、ノワール達もプラネテューヌに集まった。ブランとベールもユウコとは初対面だったので互いに軽く自己紹介をする。
「……あなたが、ユウコさんですね」
「そうだよ?」
「なるほど。確かにわたくしの地位を脅かす胸囲に違いありませんわ」
「文字間違ってねぇか……」
ブランがどことなく不機嫌なのは、やはり揺れる二人の大きな胸が原因だろうことは容易に想像できた。それとは別に――。
「ちょっとエヌラス。あなた一体いつまでプラネテューヌにいるつもりなのよ。ラステイションにも来なさいってば」
「いや、そうしたかったんだが色々と混みいった事情があってな」
「どういう事情よ。言ってみなさい!」
「あー、邪神と遭遇したりハァドラインの連中と面倒事だったりだ」
「どーしてそうアナタはトラブル起こさないといられないの!? もうちょっとおとなしくしてなさいよ、ネプテューヌもネプテューヌなんだから! 女神のお仕事は自分でやりなさいよ!」
「もー! ノワールに言われたくないよ! それにエヌラスの稼ぎとわたしのお仕事は別会計なんだからいいじゃん!」
ネプテューヌとノワールの言い争いにエヌラスが捕まっていた。どうどう、となだめようとしても事の発端が当人である。
「邪神、ですの?」
「ああ……どうにも、向こうで撃退した奴が俺を追ってきたらしい。次に会ったら何が何でも消滅させるから心配すんな」
「むしろ心配なのはアナタがどれだけ周りに被害を与えるかなんだけど?」
「耳がいてぇ……」
そうしないための女神会議(プラスα)だ。
「はいはいはーい、そこまで! お茶とお菓子用意するからそれまでおとなしく待っててねみんな。ところでベール、さん?」
「はい?」
「呼び方は、ベールさんかベルちゃん。どっちがいい?」
「是非、ベルちゃんでお願いいたしますわ。ふふ、胸が大きくて包容力があって、それでいて気遣いも出来るユウコさんは良い人ですわね。敵視するだけ無駄だったみたい」
「ちっ……」
不機嫌のままなのが約一名。触らぬ話題に爆破なし。誰もブランの地雷を踏みに行こうとはしない。
ひとまず、エヌラスが現在確認できている邪神の簡単な説明を始める。
「武器を奪う、というのは厄介ですわね」
「それに対抗できる策が、素手での殴り合いというのもどうかと思うわ……魔法や遠距離攻撃じゃダメなの?」
「ブランの言う通りだがアイツは魔法や射撃を無効化する霧を纏ってる。そいつを引剥さないことには話が始まらないんだよ」
「じゃあ、霧を剥がさずにそのまま倒すっていうには素手で倒すしか無いって言うの? 武器を奪われないようにすればいいだけじゃない」
「俺の言い方がマズかったな。正確には“なんでも武器にしてしまう”ってことなんだ。そこらの棒きれだろうが空き缶だろうが、アイツが手にしたその瞬間から立派な凶器になるんだよ」
「それは非常に厄介ですわね……」
うーん、と唸っている女神たちの鼻をくすぐる焼きたての菓子独特な芳香な匂い。キッチンから出てきたユウコがお茶を並べていき、クッキーを焼き上げていると言って再びキッチンへ戻っていった。
「手馴れていますわね。……まぁ、良い香りの紅茶ですわ。きっと良い茶葉を使っているのですわね」
「……ん? これ、ユノスダスで売ってるやつじゃねぇか。アイツ勝手に持ってきやがったな?」
「飲んで分かるの?」
「そりゃあな。毎回出されてりゃ味も覚える。俺みたいな味覚音痴でもな」
当面の目的は邪神をどうするか、だ。
「というか、エヌラス。アナタがシャイニング・インパクトを撃てば死ぬんじゃないの?」
「そりゃそうだが」
“無限熱量”シャイニング・インパクト――エヌラスが持つ必殺にして必滅の昇華呪法。第二の心臓である銀鍵守護器官から生成される無限の魔力を魔術回路に直結して生成される結界に相手を封じ込める、という魔術ではあるがその威力と言えば放った跡に焼土が残るほど。それも大規模で。早々撃っていいものではない。
「どこで撃てと? プラネテューヌは論外。かといって人気のない場所でも環境破壊待ったなし、そうなるともう、海ぐらいしかないだろ」
「それでしたら。リーンボックスはいかがかしら」
「リーンボックスは……ベールの治めてる国か」
「ええ。四方が海に囲まれておりますし、もしその邪神が現れたとしてもすぐに対応できますもの」
「それはどうかしらね」
「あら? なにか不満がありますの、ノワール」
「地形を活かすなら確かに、一番適しているかもしれないけど。リーンボックスには武器がごまんとあるじゃない。それを利用されたらどうするのよ」
「あら。わたくしとしたことが、失念していましたわ……」
かといってラステイションでも以下同文。
ならば、魔法文化が発展しているルウィーならどうか?
「冗談じゃないわ。そんな危険な相手、どうしてルウィーに連れてこないといけないのよ」
小さい子だって沢山いる。論外だ。そうなるともう、消去法でプラネテューヌしか残されていない。
「ふっふーん。困った時のためのプラネテューヌだよ! なんてったって、わたしの国なんだから話の中心になるのは当然!」
「んじゃあ思いっきりぶっ壊すか」
「えっ!?」
「そうね。ネプテューヌなら何とかしてくれるみたいだし?」
「ねぷっ!?」
「後でイストワールにしこたま説教される姿が目に浮かぶわ……」
「ど、どういうことだってばよ……!」
「ではプラネテューヌで邪神を迎撃、という形でよろしい方は挙手をお願いしますわ」
『さんせーい』
「待ったー! 異議あり! 異議ありだよ! 確かにそう言ったけどプラネテューヌは極力壊さないでほしいなぁ!」
満場一致で丸く収まるかにみえた女神会議だったが、どうやらそうもいかないようだ。
エヌラスがふと、挙手していた右手に視線を落とすと、僅かにだが震えている。席を立ち、コートからドラッグシガーを取り出して口にくわえた。
「悪い、ちょっと吸ってくる」
「タバコは身体に悪いですわよ?」
「そんじょそこいらで売ってるタバコなんて、コイツに比べたら香水みたいなもんだ」
バルコニーへと向かうエヌラスは、右手ではなく左手でタバコを保持しながら横切る。
「……エヌラス、タバコ吸うようになったのね。ちょっと残念だわ」
「あら、そうかしら。わたくしは良いと思いますわよ。大人の男性、という感じがして良いではありませんか」
「そうじゃなくて。タバコの臭いが移ったら色々と困るのよ、変な噂がついて回るんじゃないかって」
「わたしはそういうの気にしてないけどなー。現にプラネテューヌのシェアは少しだけど上がってるし」
「それ、多分アナタがまじめに仕事してるからじゃないかしら……」
普段の行いから考えれば、当然とも言えた。
「ノワールは考えすぎですわ。古今東西、美しい者に惹かれて異性が集まるのは当然のこと。女神であるわたくし達が異性の一人や二人――」
「今まで、いたかしらね……」
「言われてみれば縁が無かったような……」
「うんうん。このシリーズ女の子がメインだし」
「……」
――そこで、四女神の間に緊張感が走る。そう。考えてもみれば女神生活の中で異性と遊ぶという経験があまりにも少なかった。役職上、国の統治に追われて恋にうつつを抜かしている暇すら無い。ましてや国民と関係を持てばそれはもうスキャンダル報道待ったなし、引いてはシェアの低下に繋がる為に恋愛禁止とまで暗黙の了承とさえされていた、かはともかくとして。
とにかく。絶望的なまでに男性とお近づきになれたことさえない。それに一番危機感を覚えたのがベールだった。次にノワール、ブランと続いて勝ち誇った顔のネプテューヌ。この時点では一番乗りで乗り越えたと言っても過言ではない勝者の余裕に、三人が悔しそうにしている。
「……これは、邪神以上に由々しき事態ですわね」
「考えてみれば、私もエヌラスとの関係はリセットされてるわけだし」
「よりによってネプテューヌがと考えるだけで悔しいわね」
「ふっふーん、どやぁ? どややぁ?」
「クソが……!」
しかし、忘れてはならない。彼女たちのライバルはその場にいる者だけではないことを――。
ずどーん。
突如、教会を揺らす衝撃にネプテューヌ達が何事かと立ち上がる。
「今の音はなに!?」
「バルコニーの方から聞こえてきましたわ!」
「確か、エヌラスがタバコを吸いに行ってなかったかしら? 急ぎましょ!」
四人が急いで駆けつけたそこには……。
「…………」
合掌。潰れたエヌラスがいた。
「あはは~。落ちちゃったぁ~、ピーシェちゃん。だいじょうぶ~?」
「うん! ぴぃ、大丈夫!」
「怪我しなくて本当によかったよぉ~」
「ぷるると! ピィもう一回とびたい!」
「危ないからだめぇ~」
足元で潰れている相手を無視してほんわかのんびりほわほわとした口調で座っている少女のお尻に潰されるようにして仰向けに倒れている。
「ぷるるん!?」
「あ~。ねぷちゃんだぁ~。やっほ~、久しぶりだねぇ」
「わーい、ねぷてぬだ!」
「ピィ子まで! 久しぶりー!」
「どーん!」
「ねっぷぁっ!?」
出会い頭に、カンガルーパンチがネプテューヌをノックアウトした。