超次元ゲイムネプテューヌZ-血と硝煙と鋼と荒唐無稽- 作:アメリカ兎
「それじゃー! 邪神撃破を記念して――カンパーイ!」
『乾杯!』
チリン――。グラスを鳴らして、乾杯するとテーブルの上に山程並べられている料理が追加される。
「へぇーい、お待ちぃ! ユウコさん特製山盛り唐揚げだよー」
「あら、美味しそうですわね」
「注文あるなら受け付けるよ。和風洋風中華にスイーツ、なんでもござれ」
「そういうことでしたら遠慮なく頼ませて頂きますわ」
「お安いご用!」
「ユウコ! わたしプリンがいいな!」
「あいよー!」
それらを全て用意しているのがたった一人というのが驚かされるが、ユウコにしてみればこれくらいは朝飯前らしい。吸血鬼だからか、夜の方がテンションが高い。アイエフもコンパもパーティーに混じって飲み食いしていた。主催者であるアーサーも手伝おうとはしたのだが、チーカマに止められたのでネプテューヌ達同様に遠慮無く出された料理に手を伸ばしている。
「むぐむぐむぐ……うむ。実に美味だな! ユウコを私の専属コックに迎えたいくらいだ」
「でしょー? ユウコの作る料理って美味しいからいくらでも入っちゃうんだよね」
そのせいでユウコの料理は女性からは「食べると太る料理」とユノスダスでは言われていた。男性からは概ね好評である。
「いいの? アーサー。勝手にこんな企画しちゃって?」
「正直ダメ元で提案したのだが、思いの外ネプテューヌがノリ気でな。引くに引けなくなったのだ。とはいえ私も立役者、ということで無礼講だ」
「まぁ。ネプテューヌがいいって言うならいいんでしょうけども」
当のネプテューヌはノワール達と一緒にお酒を飲みながら料理を食べていた。お酒はエヌラスがプラネテューヌの店で適当に選んで買ってきたらしい。ちなみに代金は全員の財布から出ている。
「ん~、いい香りね。流石エヌラスだわ」
「ちょっとノワール。それを言うなら美味しいお酒を取り扱っているプラネテューヌを褒めてよ~」
「はいはいそうね。プラネテューヌには良い職人がいるのね」
「勿論、それを治めている女神様も!」
「いや無いわね」
「ガビーン!」
「当たり前でしょ? それとこれとは話が別なの」
オーバーリアクションでショックを受けるネプテューヌはソファーに腰掛けてくつろいでいたエヌラスの胸に飛び込んだ。
「うわぁ~、、エヌえもん。ノワールがいじめるぅ」
「俺もお前をいじめてやろうか?」
「無慈悲!」
「人をどこぞのネコ型ロボットと一緒にしてんじゃねーっての」
膝の上でくつろぎ始めるネプテューヌに呆れながらエヌラスは片手に持ったワイン瓶をそのまま飲み始める。背もたれに背中を預け、腕を広げて座る様はまるで犯罪組織の幹部の如く風格。その上で全身が黒一色ともなれば「どこのマフィアですか」と聞かれること総受けだ。
「……エヌラス」
「ん? なんだ、ベール」
名前を呼ぶなんて珍しいな、と思いながら視線を向けると――何故か鼻血が出ている。そこに、受け皿に料理を載せたネプギアがやってくると驚いていた。
「ど、どうしたんですかベールさん!?」
「そ、そんなアダルティなフインキを出されては困りますわ……」
「いやなんというか、それで鼻血を出されても俺はすごい困るぞ?」
「だ、だってその下着の上から覗く、鎖骨! それに、片手にお酒! 更にはその風貌! それでありながらネプテューヌに見せる優しさ!」
「……ギャップ萌え、って言いたいんだと思うわ」
「ありがとな、ブラン。正直俺はどうしてベールがこんなに興奮してるのかわからない」
「わたし達の中で年長者扱いされることが多いから、そういうオトナの刺激に飢えてるのよ……」
「そっか。すげぇはた迷惑」
しかも目線がものすごくイヤラシイ方向に全力で向けられている。ネプテューヌが首に手を回すと、それにノワールが小さく悲鳴を上げた。
「のわっ!? ちょっとネプテューヌ、なにしてんのよ!」
「なにって見てわかんなーい? イチャイチャしてるんだよー」
スリスリとエヌラスに頬ずりするネプテューヌを見ていたプルルートが少しだけ頬を膨らませる。
「あ、どうかした? ぷるるん」
「なぁんか~。ねぷちゃんがそうしてるの見てたら、あたしも胸のあたりがモワモワ~ってする~」
「じゃあぷるるんも一緒にしようよー」
「そうするねぇ~。すりすり~」
「すりすりすり~」
「助けろ! 誰か! へるぷ俺ミー!」
ネプテューヌとプルルートに頬ずりされて身動きできない姿を見て、アーサーがこれ以上ないほど悔しそうにしていた。
「ぐ、ぐぬぬぬぬぬぬ…………!! よもや、よもや私の前で少女二人を侍らせて頬ずりさせるとは……エヌラス、恐ろしい男!」
「俺の意思全く関係ないところで対抗心燃やすのやめろそこのアーサー!」
「別に悔しくなどないぞ! 本当だからな! なぜなら私には切り札がある。因子を集めてさえしまえば――」
「はーい、ちょっとそこのアーサー? お話しあるからコッチ来なさい」
チーカマに連れて行かれたアーサーの姿をその後、見たものはしばらくいなかったという。
皿を空にして、エヌラスは他の料理を取りに行こうとするがネプテューヌとプルルートの二人がくっついているので身動きが出来なかった。
「う~ん……」
「どうした、プルルート」
「え~っとぉ……なんでかわかんないけど、こうしてるとすっごく落ち着くの~。なんでだろう~?」
「なんでだろうな」
「――――」
「……?」
プルルートの大きな瞳に吸い込まれそうになる。唇を重ねたくなる衝動をぐっと堪えながら見つめ合うふたりの間に妙な緊張感が流れていた。
「ぷるるん? どうし――」
たの、とまでネプテューヌの言葉は続かない。なぜなら、その前にプルルートが近づけた唇がエヌラスと触れ合っていた。ノワールも、ブランも、ベールも、アイエフどころかその場にいた全員が固まる。
「はぁーい、ネプちゃんプリンお待た――」
キッチンから戻ってきたユウコですら満面の笑みで硬直した。
「――――っぷは」
「…………」
「えへへぇ~。エヌラスだ~」
「…………あの、プルルート?」
「ん~?」
「おもいだしてくれましたか」
「もちろんだよぉ~!」
「それは、嬉しいな。うん……ものすごく嬉しい」
嬉しいんだが――どうしてこう、ナチュラルに人を社会的に陥れるタイミングで思い出してくれるのだろうかこの女神様は。案の定、事情を知らないメンバーからの視線が不審者のソレである。ちがうんです国家権力、これには色々あるんです。上等だ喧嘩売ってんなら買うぞ国家権力チクショウ――エヌラスは半ばやけくそになっていた。
「ぷるるんもエヌラスのこと思い出したんだ!」
「うん~! えっとねぇ、こうして馬乗りになってたら懐かしくってぇ」
「そんな理由で思い出されてたまるかぁぁぁぁぁああああ!!」
絶叫もむなしく、プルルートは既に前世の記憶を思い出している。
「へぇーい、そこのエヌラス。エヌラスー? ちょぉっとコッチきて面貸せや、な? ネプちゃんはプリン食べておとなしく待っててね」
「あ、うん。おいしく食べてるね……ユウコが笑顔なのに寒気がする」
ネプテューヌにプリンを手渡すなり、エヌラスの首根っこを掴んで片手で持ち上げた。
「ユウコさんオーダーはちょっと休憩するねー。注文あったら適当な紙に書いてキッチンに置いといて」
笑顔で手を振るユウコだが、その後ろで形容しがたい怒りのオーラが滲み出ている。
誰からともなく、全員が黙祷を捧げていた。南無。